道場主今月の一言

芸術は悲しみと苦しみから生まれる」
( パブロ・ピカソ)

銀座俳句道場 道場試合第52回決着!!  

月の兼題は 「雲の峰」「薫風」「滝」 でした。

  暑中お見舞い申し上げます。
 凄まじい暑さですが、くれぐれお大切の上の
 御清吟を。(谷子)

 面白い取り合わせを成功させました。手元にある地球儀と、この地球の果てに立つ雲の峰と。
 
 「峙て」によって、一句がどれほど強くなっていることか。
 静かですが、力のある一句です。
 床机を拭くという一些事を言っていますが、この句が伝えるのは、滝しぶきの激しさ、滝の見事さなのです。
 

【入 選】

 雲の峰町営ゲートボール場   とみゐ
この町、多分青年の姿が少ない町でしょうか。雲の峰が何かしら暑さの中でからんとした町の広さを想像させます。

 「大漁」の鮒は三匹雲の峰   萬坊
「大漁」の「」は釣った人の言葉でしょう。魚籠かバケツかの中は鮒がたったの三匹。「雲の峰」で、一句が伸びやかになりました。  

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

雲の峰バンザイクリフを両陛下          京羅坊
   戦後60年。両陛下のお姿は、昭和を背負って、胸詰まりました。
 玉盌(たまもい)の縄文杉や魚津滝
   玉盌というのは玉で造った碗。これと縄文杉がどう繋がるのか?
 薫風の忍野八海水ぐるま

愛知博列の長久手雲の峰             竹雄  
   長久手を上手に使っています。
 旅の宿雨に間違う滝の音
 一陣の薫風肌をよぎりけり 

ご無沙汰の父母の墓石や雲の峰                 吐詩朗
歌碑句碑の並ぶ城址や風薫る
 悠久の響動む(とよむ)瀑布の深く瑠璃
    「動む瀑布の」に対して「深く瑠璃」が勢いを殺しています。

 大滝の瀑音のなかへと一歩             だりあ
 雲の峰受付の窓小さかり
   何の受付なのかを、もっと絞って下さい。
薫風やクレソン添へて肉料理
   美味しそうですね。食欲そそられる一句。
 
 ふるさとに まだ足りぬもの 雲の峰        花子
薫風や特定局の俳句展
   郵政法案も大詰め。ただ、「特定局」だけで特定郵便局とわるかどうか?
 薫風に乗りてホームの軍歌かな
   現在の景でしょうか?そこらが、今ひとつ伝わり難いです。

雲のみね野に軍用犬軍馬の碑             美沙
    「雲の峰」と。
 薫風や沖に漁火ともり初む
 大瀑布とどろくテラスの白ワイン

 夏の怪原爆雲に勝るなし               秋吉景子
 アカシアよ北一条の走り風
一条の滝に合掌熊野路

散華せし戦友の卒塔婆雲の峰             傘汀
 をちこちの花の香りのあり風薫る
 鳥肌の立ちて裏見のたきしぶき


 乙女滝マイナスイオン浴びて佇つ            瞳夢
ファインダーをはみ出し九十九里雲の峰
     「九十九里浜雲の峰」でしょう。なかなか勇壮です。上五再考がいささか大変ですが。
薫風や十国峠ひとり占め

風薫る八十路も末の夫婦かな              洋光
 ヨセミテや峪の左右の大瀑布

薫風や新線試走電車疾き                 とみゐ
    リズム感満点ですね。
 滝めぐりループ下りて海へ伊豆

雲の峰をみなに高き志                 あゆ
    今や…、ということでしょうか。 
 薫風の窓へ花屋のピアノ曲
つつましく那智の二の滝三の滝

 峰雲や膨らむ希望不安とも               もとこ
 オホーツクの海に落ちるや神の滝(知床岬カムイワッカの滝)
   カムイワッカの滝は、皆中七まで同じです。

 雲の峰もう直ぐ来るぞまくれ水             正己
   「まくれ水」ってなんでしょう?
伝説の砦の跡や風薫る
 瀧近し微動だにせぬ大山椒

暁の高千穂重なる雲の峰                さかもとひろし
    (霧島よりながむ)
    暁闇の中の雲の峰。白々と壮麗。  

 鬱の日にふと見上ぐれば雲の峰
 日没に決意うながす雲の峰 

コーヒーを小さき茶碗に風かおる             意久子
 手を引かれ流に添ひて瀧小さき
校庭に子等の歓声雲の峰

好きですと言うつもりです雲の峰             方江
    オオーッ!元気な一句。
 君を待つ窓辺の席に風薫る
秘め事の一つや二つ瀧しぶき
   方江さん、まことに元気。

湯布院の尾根の連なり風薫る                老松
 すさまじき瀑布にかかる四色かな
少年の決意固まる雲の峰(甲子園出場校)

  薫風や少年剣士の通い路                  よしこ
阿蘇を行く蒸気機関車雲の峰
 瀧落ちる木々も水面もま青なり

雲の峰大興安の彼方より(ハルピンにて)           有楽
 金鯱が睨みつけてる雲の峰(名古屋)
   目下、万博会場駐在中でしょうか。
神代より落ちくる瀧にひれ伏せリ(那智)

薫風や山頂目指す爺婆に                   霞倭文
   決して爺とも婆とも思ってない一団です。
戻れぬと橋渡るたび雲の峰
 尾根道に濡れて咲く花雲の峰

 雲の峰子等真っ黒になりにけり                満子
薫風に亀が顔出す池の面
最上川雨に煙りて滝一条
   最上川のあちこちに流れ込む滝。先だって雪の中の滝を見ました。

風薫る 「核の世紀」の 大著を祝う             河彦
   〈「核の世紀」のかくも大著や風薫る〉
 風薫る 小さな店に 鬼平が
   池波正太郎ひいきの店でしょうか。
 想い出を 一つ作って 雲の峰

 薫る風声生き返る峠かな                  あきのり
 滝の上力もりあげ落ちるなり
    なかなかよい一句ですが、
   〈滝の上に水現れて落ちにけり  後藤 夜半〉
   という先行の名句がありますので。  
静脈の透く母の腕雲の峰
   暑さの中、細る母。自然の厳しさの中での人間の存在。

峰雲や亀がつついて水位計                  水の部屋
   〈水位計亀がつついて雲の峰〉でしょうか。
 水が水押してうねりて瀑布かな
ことづてのやうな薫風馬場の跡

雲の峰補習授業は真っ盛り              山野いぶき
 薫風に乗って行きたし授業中
 滝の音遠い記憶の甦り

 けんけんの包帯の足風薫る            萬坊
 滝遊び御居処で流れ変わりけり
   (御居処=おいど)

 峰雲や二合半の米を研ぐ                 天花
   この句の場合、米の分量をもう少し考えてみましょう。大量ならば、もっと元気が出ましょう。
 風薫る道路工事の手信号
薫風や二人乗りのベビーカー

 たましひの揉みださるるか滝の裏              章司
「おぢいちやんの木」といふ碑文風薫る
   どんな碑か、見てみたい思いを誘います。
学園のタワーをちこち雲の峰

雲の峰弾痕とどむ大聖堂                  紫微
 薫風やよちよちの子の背(せな)をそと
    「そと」は「そっと」吹く、の意でしょうか。
滝音に語らふ声のいや高く

原宿は原色の街雲の峰                  のぼる
木曽谷の木造駅舎風香る
知床の滝のしぶきに憩ひけり
    三句共しっかりと書けています。

南部路を羽後路へ向ふ 雲の峰              姥懐
薫風や 少年の汗 鎮めをり
 猿之助 千秋楽の 作り瀧 

滝しぶき白装束の子らまぶし               としこ
    〈白装束の子等をまぶしむ滝しぶき〉 
 雲の峰ついそこまでに幼き日
    「ついそこまでに」の「に」が一句を解りにくくしています。

病む母の咀嚼の音や風薫る                   龍子
 胸騒ぎ払拭されし滝しぶき

 光り合い神馬の馳せる雲の峰                  みどり
薫風に今朝の紅茶は濃くいれて
滝蒼然心の揺れを引きしぼり

薫風や身を甘やかし小半時                  弘子
    中七、上手い一句です。
 雲の峰自分史を劃く一頁
 滝壺や海へとつづく一里塚

 行き止まり道なき先に滝流れ                  美原子
 風薫る史跡の道は幅広く
とうふ屋のラッパ追いかけ雲の峰

 音に聞く神を夢見る鼓が瀧                   悠々

 【追加】
輪をえがく 鳶のむこう 雲の峰                陽湖
薫風や 農高生の 通学路
  いいですね!。
 鯉跳ねて 雨が来るよと 滝の庭
 

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。
www@hb-arts.co.jp