道場主今月の一言

「大切なのは、問うことをやめないことです。
好奇心は、それ自体存在理由を持っているのです。」
(アルバート・アインシュタイン (物理学者))

銀座俳句道場 道場試合第49回決着!!  

月の兼題は 「菜の花」「柳」「春雷」 で でした。

                                     (谷子)

 地球のまわる音を「感じとる」作者。魚眼レンズで撮った映像のように、
  青空と菜の花が広がります。
 
 校長であった亡き父。その遺影を見上げている作者。何枚もの「校長」の写真の中でのその写真に、「父」としての懐かしさよりも、「校長」としての威容を感じているのであろうと思うのは、「春の雷」の働きです。は別れの時でもあります。そこはかとない新たな出会いも後ろにあるでしょう。「預かる」に思いが籠もります。
 おだやかな一句。特別印象的な言葉があるわけでもありませんが、瑞々しい空気と柳の青さが瑞々しく伝わります。「今」の働きです。
 

【入 選】

 春雷や水辺の魚籠に二三匹    正己
春雷に、魚籠の中の魚もふいに跳ねたりして。

 花菜もゆ捕鯨岬の沖見跡     あゆ
花菜の黄色の向こうに、青い海原が見えます。

切り柄杓置き春雷の二つほど   水の部屋
静かな刻が広がります。
寝たり足る母に菜の花明りかな    天花
〈寝足りたる〉と。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

菜の花や笑うと負けよあっぷっぷっ          京羅坊
 中七以降はまことに楽しい一句。ただ、上五はまだまだ
   変化可能ですね。
 春の雷轟く寝間の二階かな

 春雷や 別れの街に グッドバイ           花子
   誰かと別れた街にグッドバイを言う、という意味は解るのですが、
  「別れの街」「グッドバイ」はいささかしつこい。
   「○○の街」をストレートに「貴方の街に」とした方がすっきりするでしょう。

昨日より 今日の彩あり 青柳
 菜の花に まるき指寄す 背の赤子
   
潮騒のとぎれとぎれや花菜風              傘汀
 けぶらへる矢切の渡し糸柳
   一寸「心中物」みたいですね。
 真夜中の春雷過ぎて救急車

 菜の花忌ふりかえりみる坂の上             正己
 廃校の今尚もえぐ老柳
   「もえぐ」は「萌えつぐ」でしょうか?
   〈廃校の今尚萌えて老柳〉の方が素直に伝わりましょう。

 人生半半(みちなかば)菜の花の郷里と信州と      陽湖
    「郷里と」の「と」が、解りにくくしています。
あの雲で銀座柳通りまでふわり
    破調ですが、なかなか楽しい一句。
 春雷へ回天扉夫婦り行く


 菜の花や人待ち顔の駐在所       瞳夢 
どろどろと春雷利根を渡りけり
ビル風に哀れ銀座の柳かな

 菜の花になりし川辺に墨かかる            竹雄
   「墨かかる」とはどういう情景でしょう。
 ジーンズの後ろ姿や柳腰
春雷を機の下に見て別世界
    〈春雷を機の下に見し旅立ちや〉などと。

サイフオンの残り一滴春の雷               老松
 三百万本の菜の花の中
    〈三百万本の風の菜の花畑の中〉でも可、ですね。
青柳の姿のよさや風撫づる
       
春雷の兆せる旅のカフェテラス            章司
菜の花や分校いまは集会所
みすヾの詩誦みて菜の花月夜かな

菜の花の香効きそう不老不死             とみゐ
 人生訓風に柳としなやかに
    「柳に風と」でしょうか。
春雷や意外に効きし吾一言
     
柳絮とぶ川の真中に県境            あゆ   
 春雷のあとをひそやか夜の雨 

一抱へほどの菜の花黒い甕           洋光
若柳池を挟みて弁天堂
春雷をまたひとつ聞く城下町

 事故処理のう回標示の柳筋                    竜子  
   下五の季語を再考されてみてください。
春雷や仁王の眼大きかり
歩こう会Aコース行き菜の花畑
   〈菜の花畑歩こう会のAコース〉と

柳ゆれ風の先端見えにけり            もとこ
思案なし柳は枝を下げしまま
 菜の花の続けば続く休耕田
   
風なびく柳に透けし丹の鳥居      薫子
 菜畑の彩広がりし子らの影
   「広がりし」の「し」を再考。〈菜畑の彩の広がり〉と。
春雷のひと鳴り犬の吠えたてり

もてなしの菜の花浮かぶ潮汁     方江
転た寝の空に春雷響きけり
 しなやかに風受け流し柳の葉
   〈青柳のしなやかに風受け流す〉

菜の花やとぎれとぎれの波の音     有楽
 新しきビルも柳がなでており
春雷や断層眠る多摩の丘
    出来れば「眠る」をもう一歩推敲してください。
  
菜の花や礼拝堂に人の列         遥
 わだかまり残りしままの花菜漬
    「残りしままの」の「の」を「や」に。
春雷や錆たるままの父の鍬

菜の花の寿司届けらる誕生日     景子
銀座柳あくがれし日の若さかな
 春雷に今年の作柄天気など

菜の花やビルのあわひに浜離宮          紫微
 屋形船ただすべりゆく柳陰 
   〈青柳やすべるがごとく屋形船〉と。
 春雷の妻の寝息を乱しけり
   「の」と「を」の不具合。〈春の雷妻の寝息を乱しけり〉と。

 菜の花や青信号ゆくランドセル          意久子
春の雷喪服たたむ昼下がり
    「喪服をたたむ」と。
 待ち合はせ駅より柳どこまでも
    〈駅より続く柳並木や待ち合はす〉

菜の花の波の拡がる干拓地            吐詩朗
 嬰児の手柳にふれて微笑めり

古書街の柳古楽譜売る小店             美沙
    「古書街」「古楽譜」の、「古」の重なりを再考してください。
春雷や迷いにピリオド打つ日記?

柳ゆれモボ・モガ往きしかの銀座          満子   
 春雷やたちまちみどり滴りぬ
   「春雷」「みどり」「滴る」といささか重なり過ぎました。
花の雲すっぽり東京包みける?
   〈東京をすっぽり包み花の雲〉と。元気な一句です。

 春雷に 追われて京の 坂くだる          河彦
 菜の花を 還暦の年も ともに見て
   「ともに」が誰となのかが解るように書いてみてください。
柳青める 若き日の思い いまもなお?
   〈若き日の思い今なお青柳〉でしょうか。

はすかひに罅入る石碑花菜風            水の部屋
 縁側に日の行き渡る花菜道
   行きずりに見かけた農家の縁側でしょうが、「花菜風」とされると、縁側が存在感を増すでしょう。
              
菜の花や法事に集う兄姉妹           霞 倭文
 校庭は子等声戻り老い柳
   〈校庭に子等の声満つ柳風〉でしょうか。
 春の雷家路の街は茜色

 駆けっこの子ども菜の花蝶と化す         だりあ
菜の花へ入日悠然と消えり
 両岸の柳吹かるる丈のなし?
   今月の作品、少し理屈っぽくなっています。

下総の菜の花の黄に染まりけり          のぼる
 鐘の余韻に和すや糸柳
   〈晩鐘の余韻に和すや糸柳〉と。
メール打つ遠く春雷聴きながら

菜花咲く広場は臨時駐車場            天花
柳青し少年野球の始球式

菜の花や遠く会釈の郵便夫            萬坊
 あたたかくやさしい、いい句です。
くぐり出て柳をくぐる一輪車
 春雷の去るを確かめ浮子うごく

 春の雷こはきものなき齢と決め         あきのり 
    〈春の雷こはきものなき齢かな〉でしょうか。 
青みきて月を潤ます柳かな
 ねんねこののけぞり寝る子花菜風
     〈ねんねこにのけぞり寝る嬰花菜風〉

 億万の命うまれる春の雷              二穂 
 かしらかたこしあしゆらしいとやなぎ
    「頭、肩、腰、脚、揺らし糸柳」ですね。判読するのもなかなかタイヘン。
菜の花や明るい雨にとけけこんで
    〈菜の花や明るき雨に融けゆきて〉と。

菜の花と富士と真っ青な空ばかり       山野いぶき
    〈菜の花と富士と真青(まさお)な空ばかり〉と。
 若柳清流見つめていたりけり
 春の雷これから行こうか行くまいか
                      
菜の花や 沿線すべて 風の径           姥懐
 風もらひ ちんまり笑むや 柳の芽
 春雷や 「種播く人」の 甲斐の圃(その)

菜の花の黄の絵具とく朝七時                    みどり
 しかと見し不条理の死柳垂れ
 初めての談志聴く夜春の雷
    〈初めての談志聴く夜の春の雷〉と。

柳青し手術はうまくゆきしとや                    弘子
    〈春の雷手術はうまくゆきしとや〉と。
 菜の花の浸しが肴浦霞
   「浦霞」のCMにはぴったりかと。私も「浦霞」贔屓です。
 春雷や快気祝いの窓明り
   これは〈青柳快気祝いの窓明り〉の方がよろしいでしょう。
 川遊び菜の花伝わる子等の声                     さかもとひろし
   「川遊び」は夏の季語。「伝わる」ももう少し考えてください。
 初雷に抒情心猫の顔
   驚いた猫の顔なのでしょうか。
川柳水に映ずるわが昔

菜の花のとぎれるところまで歩く                    よしこ
 春の雷少ししかめて夫眠る
   「顔」を削ってしまうのはどうでしょうか。
足のべて柳の風に吹かれ居る

春の雷やはり神様は怒っている                     美原子
   〈春雷ややはり神様怒っている〉と。
 くされ縁断てぬ我なり春の雷
池超えて吹く風受ける糸柳

 おろかなる我いましむる春雷                       悠々  
   〈おろかなる吾(ア)をいましむる春の雷〉と。
   〈おろかなる吾をいましむや春の雷〉でも。

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