道場主今月の一言

「恋ひ恋ひて邂逅に逢ひて寝たる夜の夢は如何見る
 さしさしきしとたくとこそみれ 」
(梁塵秘抄 巻第二 二句神歌)

銀座俳句道場 道場試合第44回決着!!  

11月の兼題は 「冬晴」 「冬灯(ふゆのひ)」 「落葉」で した。

  事多い一年でした。一年を表す漢字一文字が「災」。
  「災い転じて福」の一年となりますように祈りつつ。

   (谷子)

 

 今年はない父の姿。哀切な一句です。
 銀座の朝の風景をきりりと切り取りました。
 「二人子」ならばこそのあたたかさ。

【入 選】

人の世の落葉のうへの落葉かな  傘汀
落葉のみを書きつつ、思い深い一句。

冬晴の巌流島に渡りけり     京羅坊
「冬晴」が巌流島を見事に活かしました。
 何も無い船形の島。武蔵と小次郎の死闘が
「渡りけり」で、伝わります。

冬うらら鸚鵡に応えられにけり  遥
類想の句は多いのですが(猫やら犬やら、鸚鵡は勿論)、
   「冬うらら」の明るさでモダンな感じになりました。
女狐の居りし山家の冬灯     吐詩朗
何やら妖しき幻の感。
電線の百羽の雀寒の晴      水の部屋
「デンセン」「ピャッパ」「カン」の重なりが、きりきりとした寒と、それに耐える強さを伝えます。
 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 冬灯やふとゆきずぬ窓のうち        傘汀
   「ゆきずりぬ」がいささかおかしいですね。
冬うららもの思う亀浮き出づる       傘汀
 
 赤き実の一つ残りて冬日和         正己
拍手の響く静寂に落葉かな
お地蔵の笑顔も濡れて冬灯り

 プッシュ勝ち自衛隊約束の春にも返えれず    清七
   アキレたのと、怒りとが伝わります。この怒りを作句の原動力に。
 関門のトンネル人道車道冬灯り
 
  〈関門トンネルの人道車道冬灯〉

金婚のリハビリ共に落葉道
   共に支えあっての50年。お大切の日々を。
  

冬灯関門橋を遠く見て             京羅坊 
落葉して乃木希典の生家かな
   下関での吟行句でしょうか。そろっていました。

 冬晴や新札の顔はずかしげ               有楽
寒燈も余震に揺れり仮宿舎

冬晴れを広げて飛機はどこへ行く                竹雄
   冬の青空が広がりますね。
 仕事終え家路遥かに冬灯
 外苑の並木も絵なり落葉踏む

 ジーンズの 巫女落葉掃く 金色堂            花子
長床の 落葉見ごろと メールあり
   花の見頃ならぬ「落葉の見頃」。見事な景色でしょう。

 底抜けし冬晴れの空甲斐の国                  洋光
冬燈岬に近きランプ宿
 落葉踏む妻の足音拾ひけり

 冬晴やどうせこの俺お天気屋                              とみゐ
 冬灯や学童保育暮にけり
    〈静かにも学童保育冬灯〉
はらはらと煩悩解脱落葉かな    

 残業や戻る裏木戸冬灯             瞳夢  
落ち葉踏む小犬のワルツつづきけり
    つい歩調も三拍子…。
冬晴れや烏の止まる藁ボッチ

 冬晴や果無し嶺々の彼方まで                   あゆ
    〈冬晴の〉です
武蔵野を長き電車の冬灯     
城跡の散り果つ桜落葉かな 
    城跡の裸木、散り敷いた紅の色。
 
 冬晴れや秋篠寺はしずもれる                   方江
    〈冬晴れや秋篠寺の〉と
○尼寺に般若の面冬灯
    何だか、女性の恐ろしさを思わせます。
 虫食いの跡も絵になる柿落葉

 町会長公園落葉征服す                     意久子
出払ひて独り佛間の冬日和

落葉や目抜通りに古書の市                    遥
 寒燈や日に日に増ゆる備忘録

 朝ぼらけ冬晴の山ゆるり顕つ                  吐詩朗
 鯉の背のやさしき日差し萩落葉

 冬晴の つかの間のびし 軋む箍            姥懐
 遠冬燈 歩調のわずか 速めけり
影ふたつ 神宮外苑 落葉踏む
  
池真中よくある名の島落葉かな                 もとこ
    「よくある名の島」は、面白い表現でした。「落葉かな」ではなくて
    「落葉雨」などになさると、作者の位置から池までの距離感が出ましょう。

 ひと夜して吹かれ平され落葉敷く
    〈落葉道一夜の風に均されて〉
冬灯し橋の向こふを暗くして
    何やら藤沢周平の一編の味わいですね
                           
 冬の灯の一つぽつんと駐在所                   竜子    
冬うららからくり時計窓を開け
 落ち葉踏む大音響してマラソン部
     「大音響」がいささかオーバーです。「轟く」などで。

冬うらら一期一会の茶を点つる                 紫微
    何かしら期すことの思い深い感。
 下山せしたどり着きたる冬灯
 落葉掃く集む先より逃げられて

落葉降るまっすぐ歩くアリダバリ               水の部屋
  「アリダ・バリ」きっとルキノ・ヴィスコンティ監督作品『夏の嵐』の一シーンのアリダ・バリの姿で
  しょう 。1954年製作、私十歳。「まっすぐ歩く」が凛とした美女の姿を今も。

 冬ともし仏像の影動き出す

冬晴るる熊野古道の一里塚                   天花
村落葉訛やはらかホテルマン
    村で一軒のホテルか。あたたかくもてなされそう。
 冬の灯や語り部の声裏返る
    どのような「語り部」なのか。「裏返る」のが何故なのかは、そこら   
    が解る方が。

冬晴れや 一周忌の墓に カメラ向け              河彦
    まるで故人を撮る思い。
  妻病みし 友の歌聴く 冬の灯に
    病妻を抱えた友。その歌う思いは…。
落葉踏む 我が旧宅は 跡もなく

冬晴を満喫できた布団たち                   陽湖
   いささか子供っぽいですが、楽しい一句。ふくふくに膨らんだ布団。
会いたし亡娘まし拉致の子冬灯
    「まして拉致の子」でしょうか?
  片手だけポケット借りて落葉踏む

背泳ぎや冬晴の青かきわけて                  中土手
   寒中水泳?いやいや贅沢な室内プールでしょうか。
冬灯マンションに人吸い込まれ   
山鳩の落葉踏む音途切れけり 
   イイですね。静かな静かな山のひと時。

駅を出てそれぞれの音落葉踏む                 だりあ
生きとほすことの大切落葉踏む
夭折の画家の自画像落葉降る 
   三句ともしっかりと揃っています。         

闇千尋湾のかたちに冬灯                    美沙  
冬晴れや軌道忘れるブーメラン
 柿落葉添えて故郷の柿届く 
    きちんと書かれていますが、よくある句です。
 
冬うらら海にわが声放ちけり               みどり
 冬灯小刻みに足踏む女店員
両手上げ駆けおりる子に落葉舞う

冬晴や迎賓館の門開く                  弘子
最初はグーじゃん拳ポンの落葉経
    「じゃんけんぽん」「径」
認定は否とや介護冬灯
    「介護認定」なんだか、威圧感というか、どこでどう判断するのか。

 遠山の白の輝き冬晴れて                 景子
   〈遠山の白の輝き冬晴るる〉
 まばたきて冬灯となる展望台
   〈またたきて展望台の冬灯〉
 焚くこともならず落葉の積み重ね
   「落葉焚」もままならぬ世ですね。

 落葉中いえなきひとの眠りけり              瑠璃
   〈落葉中家無き人の眠りけり〉
ひそやかに別れの予感落葉踏む

日の重み受けて落葉の朴大樹                       あきのり
 おお山といふ声ほどの冬晴かな
   〈おお山といふ声ほどの冬の晴〉 
風の鳴く峡の一戸の冬灯
   寒々とした景がきちんと切り取られています。

冬晴れのような諏訪内晶子の目              二穂
   ほんとに美しい目です。「冬晴れのような」は秀逸です。
  高速の車窓流るる冬灯
  万両の実生落葉の下に生う

 冬の燈や家路を急ぐサラリーマン         山野いぶき 
冬日和欠礼はがき出しにけり
    喪中のはがきを出す思い。「冬日和」がよく働いています。
 落葉雨工場町に色を添ふ
    「色を添ふ」まで言わないところから、俳句を書きましょう。
  雲ひとつ無き冬晴や紀宮                 のぼる
   紀宮様へのよき祝句となりました。
塾帰る子らに冬の灯二つ三つ
  朴落葉踏む音軽し神の庭

けふからは矩形の更地柿落葉                       章司
    あっと言う間に更地になって…、その上の鮮やかな柿落葉。
 茜雲落葉の下の白き虫
落葉焚く僧が解錠の秘仏かな
    小さなお寺。湖北の寺を思いました。

冬晴や大笊の尻ポンと打ち               萬坊 
    このような些事でも見事に俳句になります。
 寒灯の硯の海に煌めきて 
かさこそと落葉の波に孫浮いて
     「かさこそ」をもう少し考えると、もっとお孫さんの生き生き  
      した感じが強くなるでしょう。
              

  青島に 落ち葉一枚 太平洋              さかもとひろし
  落ち葉掃き 仙涯和尚 章魚を画く
     「掃き」「画く」が気になります。上五の方を考えましょう。
柿落葉 金らんどんすの 茶入れ解く

酔うことを 教えてもらい 冬の灯            美原子
     なかなか意味深長な一句。ドラマ性がありますね。
  スケッチする パレットの上に 落葉散り
    一寸色を付けたりする小さなパレットでしょうか。
 冬晴や 家族連れ添い 競馬場


 落葉掃き観音様がおわします                悠々
    小さなお堂でしょうか。朝の作務でしょうか、それともご奉仕か。静かな佇まいの一句です。

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