道場主今月の一言

「俳諧は哥(うた)なり」 
(服部土芳(とほう) −芭蕉の高弟)

銀座俳句道場 道場試合第38回決着!!  

5月の兼題は  「 憲法記念日」 「五月(さつき)」 「雲海」 でした。

 九州は入梅後、雨が少なく晴れが続いています。
今年は「男梅雨」でしょうか。気温の変化激しい日々、ご自愛下さい。

   (谷子)

 

 結構です。子供の巣立ちの第一歩でしょう。よろよろと進む自転車の手を離れた時の感覚が、ありありと伝わります。
  空虚なペットボトル、論議される憲法改正。シビア且つ、現代性に満ちています。
 音二つ、人ふたり。どんなドラマを書きましょう。

【入 選】

鴉・鳩あふれ憲法記念の日     水の部屋

憲法の記念日という雨の午後    有楽

上がる気球の影を踏みおり五月の野  たづ

それぞれ味のある作品です。

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

五月川 女船頭屯(たむろ)する     美原子
 人の去(い)ぬ 蔵のギャラリー五月闇
  「人去にし蔵の…」と
蔵並ぶ小江戸の町の五月川
    川越ですね。

女学生の朝の挨拶五月来る       吐詩朗
    気持ちのよい一句です。
憲法記念日改訂論議より遵守
   「より」は「ますます」ですね。
富士浮ぶ帰途の機窓の雲の海
   畳み掛けが上手く働いています。

 五月来てレトロ駅前白虹句碑に佇つ   清七 
   「白虹句碑」で「くひ」と読ませるのでしょうか。
 雲海や博多湾口蔽いけり

憲法記念日年金未納ばかりかな            京羅坊
  首相は「人生いろいろ、会社もいろいろ」などと、何をお考えなのか。
ふるさとの谿へなだるる五月鯉
雲海や神話の国の山を見て
     神話の山々の間を埋め尽くす雲海。
   

デモの行く憲法記念日こともなし    瞳夢
 寅像のあらわる古墳や五月晴れ
雲海を抜けて澎湖水道かな
憲法記念日となりたる母の誕生日            洋光
  憲法記念日は昭和22年5月3日実施。勿論母上は、この憲法前のお生まれ。「なりたる」が結構です。
 八ヶ岳五月の空を切りとれる
 雲海を一跨ぎして槍穂高

 犀星の 詠みし「五月」を また読まん         花子
 毛先まで 精霊満つる 五月来る
    読者には、「精霊」が動き出してきません。
澄んだ目で いちばん好きと いう五月

 反戦の誓いも薄る憲法日                竹雄
五月雨や年金未納あとたたず
  「五月雨」が、ずるずると発覚する未納者を伝えます。
 雲海の上は快晴別世界

 憲法記念日生還のニュース               だりあ
図書館は休み憲法記念日
 フランス料理店へ憲法記念日
   
 ダイエット憲法記念日リバウンド           傘汀
口笛のスキップしている五月かな
 雲海のはてに夜明けの来りけり 

 憲法の記念日にしてじっと手を見る          正己
谷間を五月の雲の登りけり 
     「登りくる」と。 
雲海やお釜かすめて岩燕 
      噴火口を「お釜」と言いますが、主としてそこが湖になったものを
      指すようです。雲海の白とお釜の青と。この通りでしょうが、「雲海」も
      「岩燕」も季語ですね。


 憲法記念日改めん人護る人              とみい
 五月空木漏れ日揺れる並木道
機の窓の雲海夕日旅終る 
     「雲海の夕日機窓に旅終る」と。

箍はずれるは 怖ろしい 憲法記念日         泥臥
  「箍外れるは怖ろし憲法記念の日」と。
 雲海の上 この眩ゆさ 歩いてみたい
 山姥と共にさりゆく 五月風 


五月晴襞のスカートさはさはと          水の部屋
 雲海を大きな匙で掬ひたし
イルカショ−始まる風船飛ばしおり
 腓返りて春眠の中途かな
 仔猫生まる空家の雨戸開きおり
      「仔猫生(あ)る空家の雨戸開きいて」と。

 ああ五月 五月の風に 恋成就            もとこ
孫に就く 憲法記念日 日の暮るる
  「孫に付く憲法記念日暮れゆけり」と。
 晴れぬ空 不満の当て所 五月の日

五月には五月の銀座ありにけり            有楽
 雲海に突出する峰もこちら見る

 熟年のハーレー軍団憲法記念日            陽湖
神の木の里曳きに燃え諏訪五月

ひざまづき孫捕らへたり五月かな         萬坊
雲海の水脈(みお)せめぎ合ひ緩び合ひ       
      白のグラデーションが美しい一句です。
 字余りの憲法記念日かしましく

 五月来ぬ老いも若きも野に出る          幼月
雲海を突き抜けたるや槍ヶ岳
憲法の九条重き記念の日 
      誠に、と思います。

雨空の日の丸憲法記念の日            あゆ
 雲海に下界しづめる行者径 

 ファスナーの壊れて憲法記念の日         天花
サンドイッチの大葉はみ出す五月かな
     大葉=青紫蘇なので、季語重なりますが、このままで。
 聖五月献血ルームの重いドア

軍艦の模型や憲法記念の日            のぼる
 五月晴伊豆七島を遠く見て
 雲海に甲斐駒ケ岳静座せる
風船の乗りきて車内明らみぬ
図書館に仔猫の声の何処より
     この二句結構です。二句共に、ふっと空気の動きが伝わります。
 春眠や恋人に逢ふ夢見たし

 十二歳の 心新たに 憲法記念日         河彦
 雲海を かき分けて行く 阿蘇の旅  
いま五月 散歩の足も 軽々と

 オシャレして赤信号のほほに風          意久子
 憲法記念日帳簿の文字(文字)丁寧に
雲海をさまよいあるくらちのこと
        「拉致」は漢字で。

水平線押し潰しゐる大雲海             竜子  
雲海の端より崩れ茅渟海
        二句共に大きな句でした。
 先遣隊嬰の出迎へ聖五月  
       「先遣隊を嬰の出迎う聖五月」と。よかったですね。

 雲海の上空の雲千切れ飛ぶ             中土手
 五月三日火を噴くアメリカ朝鮮朝顔     
 ああ五月袖ひつるまで岸壁の母 
         「袖干るまで」でしょうか。

空五月白鳩胸の中に飛ぶ           美沙
  清々とした一句です。
 雲海の航国境のあらざりし
雲海のはて茜さす神の嶺
大山の窓に迫りて五月来る 

 声高に開襟シャツの憲法記念日             あきのり
 雲海に安房一国現はるる
五月闇万霊の声海よりす
      思い深いものがあります。

 雲海の果てに見ゆるはビル群か      山野いぶき
夫も来て故郷華やぐ五月の夜
五月風まだひいやりの常陸かな
     「ひいやり」が常陸の国の感覚を伝えます。

 地玉子で朝餉や憲法記念の日          たづ
雲海の重なる色あり富士に立つ

 半世紀憲法記念日祝いきしが          二穂
  「憲法記念日祝い来たりし半世紀」と。

 蒸し暑き日の巡りきて五月かな
雲海の雪崩るる先は日本海
 東西に雲海分かつ尾根を踏む 

 嬰児の 乳房まさぐる 聖五月     姥懐
記念日の 憲法前文 諳んずる
 雲海の 界(さかい)の下は 哭き嗤ひ

北帰行雲海上を一直線       さかもとひろし
午後八時雲海突き抜くあかね色
 雲海の下はシベリア欧州行

雲海やしんと眺めてゐるばかり      よし子
    いいですね。ただただ眺めている、と書くことで、見事な雲海が現れます。
 五月かな笙の音が舞う乙女舞う
 雲海やそっと足をばおろしたき

憲法記念日とて何することもなし     方江
     確かにその通り。でもやはり「憲法記念日」なのですね。
 児がないて蛙もないてさつき雨
   「児が哭いて蛙も鳴いてさつき雨」でしょうが、季語二つ。もう少し考えましょう。
 ホノルル便雲海ごしのサンゴ礁

 大いなる憲法記念日祝い酒         みどり
聖五月光は音をつれてくる
ひとり発ち雲海の上明日はパリ

飼い犬のひたすらに肥え憲法記念日     弘子
    つい笑いました。この関係の無さに味を感じるかどうかが、問題でしょう。
 開け放ち五月の風を招じ入る
    「開け放ち招き入れたる五月の風」と。
 雲海や静けさを聞く尾根づたい

雲海の果つるところや芙蓉峰        悠々

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