道場主今月の一言

「芸術は理知を煎じつめたものではない。ここが科学と違うところだ。」 
(北大路魯山人)

銀座俳句道場 道場試合第37回決着!!  

4月の兼題は  「 春眠」 「風船」 「こねこ」 でした。

 今回の道場主の兼題、私の作品群をさがしたのですが、「風船」は
  風船持ちお子様ランチ食べている
「春眠」の作品無し。「子猫」はかろうじて
  蜜柑ほどと子猫の重さ比べ合う
がありましたが、他の
  生きる気の子猫耳立て鳳作忌
  片手に載る子猫の命萩ほろほろ
は、「鳳作忌」「萩」の方が主なる季語。「子猫」が生まれるのが、現実的には「春」から動いてきているということでしょうか。
 季語の変動、消え去る季語、ということを思いますが、一方、「歳時記・季語」によって、嘗ての日本の暮らしというもの、暮らしの原点というものが伝えられているという点も、改めて思います。

 よき黄金週間をおくられたことと存じます。当方、仕事漬けでした。その余波か、NHK収録前日より腹膜炎の前駆症状を呈し、よろよろ上京。昨日ようやく収録しましたが、鬼の霍乱と言われました。よほど丈夫だと思われているようです。今日は湯島教室。土曜日は東京での歳時記委員会最終日なので、ホテルで持ってきた仕事です。休息にはなりましょう。薬に安定剤らしきものが入っているようで、パソコンを開いては、そのまま轟沈二日でした。遅れた言い訳です。

   (谷子)

 

 何故あんなにも眠いのでしょう、里帰りすると。子育て最中の日々をありありと思い出しました。「母許」の言葉の深さ!
  子猫の命を慈しみながら、戦というものへ向かう。二つながら人間の心に住むものです。切ない一句です。
 今回のもとこさんの三部作、それぞれ結構でした。

【入 選】

風船のうさぎの耳の不揃ひや   だりあ

おもちゃ箱こねこ眠ってしまひけり   洋光

聞き流すことを覚えて子猫の尾    竜子

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

○リハビリや三っの訓練春眠す      清七  
    の三つの訓練春眠し
 ヘルパーの目明きのこねこ持ち帰る
  ヘルパーが目明きし子猫持ち帰る 
 七回にヒュルヒュル上がる勝風船
  この風船は、季語として働きません。

 春眠や洋上のアルプスの森              京羅坊
 春眠や母なる雨の癒す森
   少々教条的ですが、美しい句です。屋久島に立つと、こうしか詠めないでしょうね。
○春眠や縄文杉の神呼吸
   深呼吸

○風船や改札口をひょこひょこと             だりあ
 風船のやうな恋なと思ふたり
   どういう恋か、「シャボン玉」のような恋ならば分かりやすいですが。「やうな」「恋な」の「な」の重なりが、この句では少々邪魔です。

 春の夜の寝息聞きつつドラマ見る     竹雄
○薬屋のおまけ楽しみ紙風船
   富山の置き薬ですね。
 野良猫の躾しこねこ鳴きもせず
  こういうこともあるのでしょう。野良猫を飼って、その生んだ子猫を捨てたら、どこかの捨て子猫を咥えて来たので、あわれと思ってそのまま飼っている、というその子猫を貰って、現在我が家で飼っていますが、これがほとんど鳴きません。声を失っているのかと心配したら、蝉や雀を捕まえると獰猛なうなり声をあげますし、年に数回は声をだします。きっと環境が影響しているのでしょう。餌が欲しかったりすると、立ってるこちらの足の甲をひたひたと冷たい足の裏で踏んできます。

○ゴム風船奇声をあげてしぼみけり         瞳夢
 春眠し列車は既に知らぬ海
    春眠し

○鐘聴きし後の春眠深かりし                有楽
 風船も持つ子も知らず講和の日
       
 拾いきし子猫いつしか家の主

 春眠の醒めて知足を覚えたり              傘汀
○恋人の息吹き合ひて紙風船
○人の子と思ひ居るらし子猫かな

 春眠や覚めて眩しき陽射しかな             正己
○風船や空に延び行く飛行雲
 引越しか猫のファミリー塀を行く

○春眠の深みに山鳩(はと)のくくむ声      あゆ
○風船をまっすぐ空へ肩車      
 その出自光る眼に子猫かな

○春眠に女王様の心地する               花子
 春眠の底であの日がよみがえり
○膨らます 頬の朱きや 紙風船

○春眠や 昨夜の名画 五度目なる           とみい
 赤玉と 祖母の面影 紙風船
 「赤玉」?ポートワイン?
○捨て子猫 見ない振りして 駆け出しぬ

 廃屋にこねこ外来かへり道             意久子
 青空を風船を背に児ら駆ける
   青空や風船を手に
 春眠やしづむ湯のなか肩のこり

○吾子のきてその児も遊ぶ紙風船            方江
 猫の子に遊ばれをり日曜日
       遊ばれてをり
○うららかや孫より大きく風船ガム

○旅にゐて春眠浅き海の宿               洋光
 薬売り紙風船も置きゆけり

○雨だれに春眠さらに深みけり            吐詩朗
○竣工を祝ふ風船ひた昇る
 捨て仔猫や似てきし人の世と憂ふ

○風船の逃げて早や手庇の中                        竜子
 猫の子と朝餉分け合うホームレス
 職退きて朝寝の贅沢許されし

○春眠し生命線ある石仏                天花
 猫の子は内股歩き青い空
 嫁した子の机のシール紙風船

 春眠の目覚めつつ光被りいし           陽湖
○舞いたかろ露店の風船花の上を
 見染められ子猫は都会(まち)へお嫁入り

○風船の赤子あやしてゆれており                 あきのり
 猫の子が目を光らしておらが土地
 春眠の森の奥より白馬かな

○春眠や教壇に立つ我さえも          山野いぶき
  きっと、生徒に優しい、よき教師であられることと…。
○玄関の子猫きょとんと我を見る
○紙風船アフリカの子のお土産に
○赤い風船かざして父の肩車               美沙
 風船とまどろむ子乗せて午後のバス
○ビル街の気球(バルーン)日和や週明ける
○風船をかざす青空をかざす

○軒に国旗仔猫すばやく家の中             たづ
 歓迎の白と緑のゴム風船


 濡れ子猫二匹連れだつ河川敷            さかもとひろし
 紙風船落ちてきかたもアナーキー
     「かも」では一句が弱くなります。
○越し方や琵琶湖に一つ赤風船

 風船をとばす父子の影ながし              よしこ
○空はまた三日月を生みこねこ生み
 こねこ鳴く声を遠くにセレナーデ

○画集みる少女こねこひざに乗せ             みどり
      「こねこを」
○春眠の夢にあなたがまた眠る
 午後ひとり紙風船つく音やさし
 
○雨上がりの土の匂いよ仔猫生る             弘子
 春眠や二度寝の夢も浮かびこず
 からまれて梢に風船身もだえる
 
○親の尾にまとはり付いてこねこたち           二穂
 風船の手品鮮やかピエロの手
 春眠のおぼつかなくて夜半に覚め

 掌のぬくみ 小猫の温み 一巡す             姥懐
       下五再考を
 放たれて 往きかた惑う ゴム風船
○春眠の ロダンの潜む 珈琲舗

○春眠や 打つ雨音も 友として              河彦
 子猫一匹 しばし花びらと 戯れて
    可愛い一句ですが、花びらは春の季語、「子猫」に春の季感が薄れたとしても、春の季語とは一緒に遣わぬようにしましょう。
○子猫鳴く 足音を待つ 気配あり

○逃げたがる風船に結ふ鬱心       もとこ
○思い切り風船を捩じる湧く自信 

 春眠や抱かれたる子は指しゃぶり         美原子
○風船放ち頼りなき糸未練かな
  放ちたる風船の糸未練かな
 子猫戯(じゃ)れ方程式に四苦八苦

 早すぎる新聞配達春眠し     中土手
○風船は呉れぬ駅前商店街
 公園のこねこまたぎていそぎけり

○風船の天へ上がれと願うなり               悠々

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