道場主今月の一言

「本来忠節も存ぜざる者は遂に逆意これなく候」 (「葉隠」)

銀座俳句道場 道場試合第36回決着!!  

3月の兼題は  「 彼岸」 「春の星」 「白酒」 でした。

 長い長い今年の桜でした。こんなにもあちこちに桜が…という発見をした二週間でした。皆様も、楽しまれたことと存じます。
 二日程前から選に取り掛かっていたのですが、その中で、イラクでの邦人三名の誘拐事件が伝えられました。「国」というものは、「人」の集合の上にあるもの。その「国」という形の見えないものが行う「戦争」というもの。「国」というものの力。今回誘拐されたのは、「人」の力を信じていた三人です。どうすれば「国」と「人」とが幸せな関係を持てるのか。「民主主義」を標榜する「国」の行う「戦争」。なにやら呆然とします。
 「日本」が世界で笑いものになる、という言葉も繰り返されました。胸中、「笑ってもらおうじゃないの!」と啖呵を切りつつ、夕飯の支度をしている現状。笑われ、落ちた評価はいつか回復出来ましょうが、「命」は失われたら戻らない。ニュースを聞き終えてチャンネルを回すと、「美味しい店」とか、お笑いタレントの番組。これこそが「平和」の情況と言えるのか、とも思いながら、残る時間を数えています。無事であるようと願いつつ。
 四月十八日BSの列島縦断で、大阪会場の選者として出ます。お時間の許す方はご覧下さい。

   (谷子)

 

 宵の明星の美しい景。労働したればこその賜りとも言えましょう。
  今も尚残る思い、です。
 切なくもあまやかな一句。

【入 選】

手作りのワインラベルや春の星     晴子
栓を抜く日が楽しみな、お洒落な一句です。

白酒や八十余齢の母のこと      京羅坊
「八十余歳」でしょう。老い母の華やぎが伝わります。

波音のなかの駅舎や春の星       美沙
春の夜の美しい旋律を聴く思い。

白酒や壁に鳥獣戯画の布       水の部屋
少し年嵩の女性たちの雛の宴風景を思いました。

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 今度こそ霊園ゆくぞという彼岸かな     清七
春の星銀俳道場三年経ち
   もう三年ですね。幼稚園卒業、次なるステップに。
白酒をすこし興じてケアの膳

 玄海といへば谷子や春の星                京羅坊      
  ありがたいご挨拶、痛み入ります。京羅坊さん、NHK全国大会ご出席でしたか?
  ついつい口がすべります。中身は「春の星」ナノデス!

 ふるさとの菩提寺遠し彼岸かな

別盃に白酒酌みしこともあり               傘汀
父母遥か戦友(とも)なほ遥か彼岸かな

白酒のほのかな想い紺もんぺ                 有楽
凍土より還らぬ兵の彼岸墓
   墓も六十年近くの年を重ねています。切ない句です。
わたしよと告げしひとの春の星
   「わたし」と名乗るのは特別の仲です。「告げたるひとの」でしょうか。

彼岸西風特攻少年鎮魂碑            吐詩朗
 怪訝げに子等の覗きしお白酒

七戸にて 彼岸の準備 畑の墓地               花子
   農村では、畑や田の真ん中に墓地があります。あの風景は日本人の原点と言えましょうか。
 叱られし ころ懐かしや 彼岸来る
春彼岸 母の遺せし 種を蒔く
    「春彼岸」と「種を蒔く」共に季語ですが、この句では「母の遺せし種」ということと、
    母上 への思いの深さ、「彼岸には蒔くのだよ」という声が聞こえるようなので、
    このままにしておきましょう。

春の星九九が上手に言へますやう      だりあ
  可愛いですねー。
お白酒をのこのやうな女の子      
  祖母母と女系家族のお白酒

 彼岸会や木の芽膨らむ石畳                 正己
   「彼岸会」「木の芽」共に季語です。
 黒々と阿蘇の眺望大熊座
   「黒々と阿蘇の眺望春北斗」   
 祖母の手がそっと持ち上ぐお白酒

 彼岸回向経のをはりを唱和する                意久子
   「彼岸回向経のをはりを唱和せり」
 遠き日の白酒注がれ嫁御寮
彼岸桜さげ一人ゆく叔母の墓

灯(ひとも)して来し方のことお白酒         美沙
 ぼた餅を配るおつかひ夢彼岸

  一盃の 白酒に染まる 古内裏            泥臥
  「白酒の一盃に染む古内裏」
 吸殻は 片ずけ残し 春の星

 御下がりの煎餅の折彼岸明け             とみい
未だ裸銀杏の梢春の星
呼ばれたる白酒の呼び水となり
   楽しい一句。なまじな一盃は…ですね。  

携帯の届かぬ虚しさ彼岸道              さとこ
 まだまだと心の遊び春の星
 白酒の甘き余韻にメールかな 
   少し甘いメールでしょう。

はんなりと媼の白酒華やぎぬ                        瞳夢
 彼岸会の真西におわす阿弥陀様
探査機の水やうつつや春の星
    
 正座して少年白酒當をり                           竜子
   「當」一文字でどう読ませるのでしょうか?
  彼岸会に母許のだんご振舞り
林立のマストに春星瞬けり
    「林立のマスト春星瞬けり」

亡き夫の手なれし筆や春彼岸                       方江
 起された気がして見ゆる春の星
    「起こされた気がして見たる春の星」でしょうか。
白酒や内緒話に耳を貸す

兄弟(はらから)の集ふ慣ひや彼岸入り         洋光
春の星なにかいいことありそうな
 白酒に昔語りの母なりし

  お彼岸にボタ雪供えて善光寺              せいじ
    「彼岸会やボタ雪供ふ善光寺」
なんとなくむねわくわくや春の星   
    「なんとなく胸わくわくす春の星」
 ロケ隊のキヤンパス占むる彼岸過ぎ            水の部屋
  雅楽果つ春星仰ぐ余韻かな 

  時明かり読経きれぎれ彼岸寺               もと子
春の星白寿の人の星かとも


  雨ばかり腐れ彼岸と祖父の言               竹雄
    「腐れ彼岸」、種蒔きとの関わりから生まれた言葉でしょう。
  見上げても薄れておりぬ春の星
  三姉妹生家に集い白酒を 
   「三姉妹生家に集いお白酒」

 春北斗写経の母の手小さくて               晴子
春の星糠床ゆるみをりしかな
   日常実感がよく伝わる一句。
     
 入り彼岸煩悩纏わり付きしまま              陽湖
高遠の賑わい間近春の星
 白酒やあと幾度を末の娘と
   「末」がよく働きました。
久々の映画帰りの春の星            山野いぶき
   「久々の映画帰りや春の星」
 春の星帰りの遅い夫なれど
 人生に区切りつけたし入り彼岸

  想い出は 語り尽くせず 初彼岸         河彦
遠く見ゆ 母の病院 初彼岸
   切ない思いが伝わります。
 初彼岸 早や五ヶ月の 時は過ぎ

 白酒や後片づけは夫がして         たづ
新調のスーツ姿や春の星
発掘の中止となりて彼岸西風
 彼岸過ぎ五時のメロディ空し        みどり
春の星涙目のごと母恋し
 白酒に憂きことほぐれ溶けゆく
   「憂きことのほぐれゆくなりお白酒」

 彼岸入り終日揺るる防風林          弘子
音のみの機影の行方春の星
 白酒にかしづくごとしをのこどち

 彼岸まで続きし命雲崩る          さかもとひろし
 昨年今年彼岸太郎の誇大風邪
   もう少し言葉を選んでみましょう。
 禅寺の彼岸修業空澄んで

変わりなきこと喜びて春彼岸         美原子
春の星古墳の森を点したり
 白酒のワイングラスで供えけり

  白酒や猫またたびと戯れて          章司
  別れ道西と東に春の星
ふるまはるあまざけ雨の彼岸寺
  読みさして目を瞑りをり彼岸墓地
    「読みさして」がどういう状況か?

 両国を彼岸に渡る花曇             中土手
豊島屋で白酒求む男どち    
春星やマンションの灯等間隔 

学僧の 寺継ぐ決意 彼岸経       姥懐
   「青僧」の凛々しさ。
春北斗 瞬きすれば またたきぬ
 初節句 眼のきろきろと 雛の酒

 彼岸過ぎ身軽になりて街をゆく           二穂
浴窓に見え隠れして春の星
 白酒に声弾ませて女どち

 白酒や小さき手にも艶ありし                    あきのり
 土匂ひ光放てる春の星
たはんたはん銅鑼のゆるびし彼岸の会
   「たはんたはん」がよく働いています。
   「たはんたはん銅鑼のゆるびし彼岸寺」と。


 無事祈るサモワの町や春の星        悠々

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