道場主今月の一言 |
銀座俳句道場 道場試合第35回決着!! 2月の兼題は 「 冴ゆ」 「鍋焼」 「日向ぼっこ」 でした。
もう3月も半ば。NHK俳壇、三年目も選者を仕ることになって、いささか追われています。
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【入 選】
行列のトップに並び冴えにけり 清七 |
睥睨の阿吽の天地冴えにけり 章司 |
鍋焼や夫と二人は尚さみし もとこ |
鍋焼きや隣の席も老二人 正巳 |
声冴ゆる大岩かげの女風呂 姥懐 |
【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)
冴ゆる月木々直立の影なりき だりあ
○受話器より街騒ながる冴ゆる星
ふるさとに竹座のありて日向ぼこ 京羅坊
港冴ゆ鮭と闘う漢かな
面白い一句ですが、いささか季語の重なり(「冴ゆ」「鮭」)が気になります。
「鮭と闘う漢」で、充分寒中のリアリティがあるので、あとは上五の推敲を。
ケアでなく我が家特製菜鍋焼き 清七
縁側の船漕ぐ妻や日向ぼこ
「縁側に」でしょう。
吊り橋に下駄音冴えて暗き川 正己
下五が駄目押しの感。吊り橋ですから「川」は必要なし。
「夜の吊り橋」で推敲を。
白猫の大欠伸して日向ぼこ
冴ゆる野の鴉の叫び澄み通る 吐詩朗
「冴ゆ」には「澄み通る」の感覚がすでに内包されています。
○鍋焼の半熟卵盛り上る
○二人居のことばの要らぬ日向ぼこ
○車椅子猫が座りて日向ぼこ 花子
車椅子俳句としては、面白い一句でした。
○風の子もぬくぬく山で日向ぼこ
「風の子の」と書いた方が、一句が活き活きとしましょう。
○明治人二人揃いて日向ぼこ
冴ゆる夜や踏切の音終電車 とみい
終電車なので、「夜」が消せましょう。?
○鍋焼や窓に結露の四畳半
目の手術受けてひとしお日向ぼこ
○冴ゆる夜や北斗の柄杓傾きぬ 洋光
鍋焼と告げて選びぬ酒の銘
○読み返す「北越雪譜」日向ぼっこ
やめちまへ日向ぼこ日本健男児 傘汀
「やめちま」ってなんでしょう?
○鍋焼やお国訛りも湯気の中
○冴ゆる闇二つに裂きて星礫
○金婚式あとの二人の日向ぼこ 意久子
まことにめでたき風景。
向き会いて鍋焼うどん箸一膳
下五で、いささか俗に堕ち過ぎました。
月冴えて浜辺に貝を拾ふ夢
この「月」が夢の中の月なのかどうか。一句を甘くし過ぎます。
○冴ゆる真夜ヘッドライトに鹿鹿鹿 陽湖
晩年の姑は鍋焼よろこんで
独り居の隣人見舞い日向ぼこ
いささか報告になってしまいました。
○冴ゆる灯の迎へを待ちし保育園 竜子
日向ぼこ猫の胴長伸びしまま
猫の胴伸びたるままや日向ぼこ
諍ふも鍋焼を吹く老ふたり
○スーパーの鍋焼うどん妻は旅 竹雄
○見る人も無き天辺の月冴えて
おままごと牛雲とおれ日向ぼこ
「おままごと」と「日向ぼこ」と、幼なと老でしょうか?
一寸わかりにくいです。
鍋焼やふつふつたぎる里心 美沙
劇場へくねる長蛇の日向ぼこ
○晩祷の鐘冴え獏の来る気配
「獏の来る気配」だけで充分一句が成りましょう。「晩祷の鐘」まで必要かどうか。
○星冴ゆるワイングラスに紅のあと 晴子
都会派俳句とでもいえましょう。
○日向ぼこ仮桟橋の釣り師かな
さえざえと人形まばたき繰り返す
鍋焼や話に尾鰭ついてをり 水の部屋
ちゃんと書けていますが、「季語」が動きます。
「日向ぼこ」でも一句になるということです。
○日向ぼこ私が先に逝くつもり
これも中七以降は類想多々ですが、すでに「日向ぼこ」を楽しむ二人の年齢が
伝わって面白くなりました。
○薬包の切り口探す冴ゆる夜
○鳶舞ふや白富士凛と冴ゆるなり のぼる
きちんと書けています。
鍋焼きや新婚のころ思ひをり
花粉症日向ぼっこも家の中
凍裂音冴えてきびしく息呑む数多 泥臥
「凍裂音」「冴え」は重なり過ぎました。更に「きびしく」は余分です。
「凍裂音続く」とか「また凍裂の音響く」とかで。
○これっきり母の焼麩のなべやきうどん
東から西日向のとうり犬家族
冴ゆる夜反戦となえひとりデモ みどり
気持ちは充分伝わりますが。
○鍋焼きに10円引きのうどん玉
「冴え返る十円引きのうどん玉」と。
○嵩高き資料そのまま日向ぼこ
○川面暗しキャチボールの声冴ゆる 弘子
出来れば「川面」は暗くない方がベター。「川向こう」などと。
鍋焼きを待つ間に交わす小盃
銀髪の赤いマニキュア日向ぼこ
「銀」「赤」と一句の中で重ねない方がよろしいです。
○冴ゆる夜のポットの花模様を愛しめり 方江
冴ゆる夜のポットの赤き花模様
鍋焼きを突っきゆるぎなきわが家
もう少し。「鍋焼きを吹きいてゆるぎなきわが家」
○なにもかも納得した顔日向ぼっこ
○猫と女 日向ぼっこも 身を寄せて 河彦
いささか寂しい風景ながら。
日向ぼっこの 女の素顔 上気して
童女あり 人待ち顔に 日向ぼっこ
○東京に冴ゆるべき夜々なかりけり 中土手
鍋焼や暖房つよきビルの店
がっくりと首切り落とし日向ぼこ
○朝刊を一面から読み冴返る
朝刊の一面にテロ冴え返る
○病む母のわがまま気まま日向ぼこ 水蓮
老い母のわがまま気まま日向ぼこ
息を呑む踊の切れや冴ゆる夜?
上五、再考を。
○日向ぼこ此岸彼岸のまん中に もとこ
○乞ひ願ふ来世は猫に日向ぼこ
つい笑いました。いつも我が家の猫四匹を見つつ申しておりますので。
○能楽堂いでて仰げば星冴ゆる 二穂
疎開っ子空き腹かかえ日向ぼこ
眼前に母の鍋焼饂飩かな
○鍋焼きの強く匂ふや妻帰る あきのり
ご主人が作って待っている?「夫帰る」方が一句にはなりましょう。
青空の屋根切取るごと冴ゆるかな
もう少し整理を。
吐く息に背中沈めて日向ぼこ
鍋焼の吹くリズムあり里暮らし 姥懐
博物館より出で娑婆の日向ぼこ
砂の星もし冴ゆるなら秘め事を さと子
秘め事のいくつか星の砂冴ゆる
アメフトで鍛えし腕に日向ぼこ
パパの腕ハンモックかと日向ぼこ
日向ぼこ織り都に滅ぶ機結び たづ
○汽笛冴ゆ子等見せ合うてみやげもの
鍋焼やうぬぼれ鏡おく湯治場
湯治場のうぬぼれ鏡冴ゆるかな
日向ぼこ秘めし追憶溶け出しぬ 瞳夢
○綿々と望郷のバラード獄に冴ゆ?
○鍋焼きの湯気に涙を見つけたり
○横丁の鍋焼うどん夜汽車待つ 章司
猫あやすつもりのしらべ日向ぼこ
頑な心も溶かす日向ぼこ 美原子
○鍋焼を喰うて怒りの少し癒え
○剪定の終りし林風冴えて
二句ともしっかりと書けています。
○稜線を風冴え走る能古島 さかもとひろし
○亀に遇う日向ぼこりのつづきかな
○鍋焼や眼鏡二つが並びをり よしこ
二つながら老眼鏡。
○小さい子のついと寄りきて日向ぼこ
○半歩づつ歩む老人(ひと)あり朝冴ゆる 悠々
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