道場主今月の一言

(とりはやし)
雅を言って俗のごとくし、 俗を言って雅のごとくする表現上の工夫」 (松尾芭蕉)

銀座俳句道場 道場試合第31回決着!!  

9月の兼題は「 晩秋」 「秋思」 「紅葉狩り」 でした。

 大変遅くなって申し訳ありません。
 月初めから、毎日睡眠三時間状態。気に掛かりながら、時間が取れずに、お待たせしました。
 しっかりとした作品が増えています。楽しみです。
 俳句らしい俳句から学んでいくか、思いを先ずぶっつけるか、それぞれの形で、楽しみながら進んでいただきたいと思います。    (谷子)

 

 元気な一句です。
  方江さんは、ずいぶんしっかりと書かれるようになりました。
  形と共に、自由に書けることが解ってこられたようです。
 美しく静かな愁思です。

【入 選】

水音のついてまわるや紅葉狩        睡夢

晩秋のひかりをこぼつ重機かな       章司

紅葉狩小さき祠に立ち寄りて        のぼる

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

  縦縞の朝顔の部屋にて歯を治す    清七
愁思なり武雄温泉妻行けぬ
憩いつ々嬉野の宿や紅葉狩り

 晩秋の空一面の鴉群                瞳夢
消息の絶えてつのりし秋思かな

晩秋の雨だんだんと雪色に             方江
抑えてもおくれげ吹かれ紅葉狩り

晩秋の絹雲北へ流れゆく             二穂
 紅葉狩りパステル用具たずさえて

 旧友の訃報届きて秋思う             正己
せせらぎの音に誘われ紅葉狩り
 晩秋や落ち来る水の色白き

 晩秋やバス降りし人急ぎ足          花子
晩秋や庭木の影が重なりて
結いの田を急ぎ了いて紅葉狩り

  「結いの田」懐かしき言葉でした。

 晩秋や食ひ物旨し酒さらに                    とみい
予報士の明日は雨告ぐ愁思かな
 中吊のいざなふ朝や紅葉狩り 

晩秋の信濃路に酌む地酒かな                   のぼる
高原の駅の木椅子の秋思かな
   なかなか質朴な愁思です。

山のもの増えし朝市秋深し            洋光
 この夕べ盃重ぬるも秋思なを
 紅葉狩日照雨に走る店の先

 秋思う時差を戻して旅終わる          竹雄
 晩秋の時差を戻して旅終わる
晩秋やオロロン街道一人旅 
 あの赤き光り求めて紅葉狩り

 晩秋の夕焼け燃ゆる里の山           せいじ
白樺の林に立ちて秋思かな    
 紅の山を写しゐる鏡池 
   紅の山写しゐる鏡池

 秋に思う病いの母の待ちわびて        河彦
   病む母に待たれてをりぬ愁思かな
 鐘鳴りぬ紅葉の寺も暮れかかり
   鐘鳴りて紅葉の寺の暮れかかる
 時去りて紅葉の橋を一人旅 

秋さびし魚の眼濡れてをり           水の部屋
 秋寂しさみしと魚の目の濡れて
一木に鳥の集まる末の秋
湖見えて鳥獣保護区の紅葉狩 

秋さびし亡父の好みのブランデー         晴子
 終バスに間に合わぬかも紅葉狩
 末の秋本音ぽろりと長電話

去り難き深紅の一樹紅葉狩り           吐詩朗
対岸の真夜の朗吟秋思かな
 法話背に黙の続ける紅葉狩り

九時開店ハタキの先の秋思かな          意久子
 朝の暦めくれば秋思厚みなく
   厚みなき朝の暦の愁思かな
晩秋の受話器の彼方軽井沢

 晩秋の星山間を埋めつくし            陽湖
 晩秋に行事集めて農の里
 黙黙と流木を焚く秋思尽きず
   流木を焚けど尽きざる愁思かな
両岸の猿には会えず紅葉舟

晩秋のひとつ点く灯の暗さかな          もとこ
 愁思めく余白を埋める世迷い言
 紅葉狩大吊り橋は人に揺る
   人に揺る大吊り橋や紅葉狩

職退きて空深閑と秋深む                      あきのり
 しなやかに生きられもせず秋思かな
紅葉狩濃く淡く日の撓みけり

由良の門の鉄橋長きを秋思とす          中土手
 地下鉄を乗り継ぎ都心の紅葉狩り

経机種のこぼれて秋思ふ                         竜子
 晩秋や女同志集ふカフェテラス
   晩秋の女ら集ふカフェテラス
案内図になき道分けて紅葉狩 

晩秋の日差しおだやか崖の家                      みどり
 音ひくく秋思のポーズ横臥する
紅葉狩天より風のあかく吹き

 晩秋やマラソン人と擦れ違ふ                       弘子
 わが秋思古き手鏡にぎりしむ
    手鏡の古きに映るわが愁思
薀蓄を聞き流しをり紅葉狩

紅葉狩る山貫きて高速路              章司
晩秋や街騒隣る妹背山
 雨の夜の秋思の酒のしむべかり

 晩秋や廊下に呱々のこゑ渡る      姥懐
診療を待つ長いすの秋思かな
紅葉狩り句帖に去年のしをりかな
                         
晩秋の街に繰り出す選挙カー         山野いぶき 
 晩秋や治療を終えて歩く街
乗客の外を見つめて秋思かな

 晩秋や良きことあらば係累に         たづ
謡本のかつて諳んじ紅葉狩
白寿翁シテ一差しの愁思かな
       
 晩秋のJFK空港に世界の国旗           さと子
   JFK空港に世界の国旗秋高し
 微笑んでターミナルへ消える秋思かな
 紙風船Naoちゃんの瞳に紅葉狩り

晩秋のマストゆるりと傾きぬ           だりあ
晩秋の木々は吹かれてゐるばかり
 晩秋や参道白く長かりき

 秋思の景九十九島の鳶の舞い     さかもとひろし
    愁思なる九十九島の鳶の舞
 佐賀平野秋思顔なるバルーン浮く
 鷺一羽広田に佇む秋思かな

 晩秋の髪何故に抜け急ぐ         寒明
突然のたより一日の秋思かな
紅葉狩りなんて口実露天風呂
                   
 いと深き女の業を思う秋            悠々

9月分追加
秋風や行くべきところある如く         もとこ
 秋風が無人の椅子を吹き通る
 濃紫 青 黄と数えむ秋の草

秋風やテレビ体操老い感じ           竹雄
 秋草の風情求め散歩かな
友が来て新酒の香りただよいぬ       

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