道場主今月の一言

(社会性)「俳句は人生をかかへた大きな遊び」 (森澄雄)

銀座俳句道場 道場試合第30回決着!!  

9月の兼題は「秋風」 「秋草」 「新酒」 でした。

 このところ、選評が遅れて申し訳ないことです。10、11月は土日無しの状況。今日11日、現代俳句協会新人賞選考委員会で、東京トンボ返りの新幹線車中を書斎に、ゆっくりと皆様の作品と対話しました。火曜には又上京です。
天候不順の夏、秋でした。くれぐれもお大切のご清吟を。    (谷子)

 

 原句は「秋紅葉」ですが、ここは「草」なり、「冬」なりにしなければなりません。「墓に浴びせし」に、痛切な思いが籠もります。
 「秋分の夜」「雲白し」が、「加齢」の思いに、しっかりと働いています。
 静かに強い一句です。

【入 選】

秋風や肩を離れし大きな手        花子

朱の色は鬼の吐息か秋の草    あきのり
面白い発想です。

新酒汲む宿の衣になき身八つ口      水の部屋

秋風や九百歳の御神木          山野いぶき
大きな一句になりました。

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

  久留里城登りて秋の風となる         瞳夢
秋草や ひそとしずみて流人塚
新酒さげ「勝って来るぞと」父帰る
   つい笑いました。懐かしき「家庭」の風景

 秋風や起きてすぐうつメールかな  清七
 新走りケアの里人と酌み交わす

 足の指間吹き抜け秋の風      とみい
   〈足指の間を拭き抜けて秋の風〉
 お点前の袖を彩る秋の草
    「彩る」を再考 
 新走老ひから逃るジョキングや
      「老い」は、旧仮名遣いで「老ひ」とは言いません。
      よく間違えるのでご注意を!

 
 秋風や思索の泉波打てり           花子
    いささか大仰です。
 秋風や安眠誘ふ蜜の風
            
 高原の草の葉揺れる秋の風          正己
バスツアー途中に寄りて新酒かな

国分かつ峠の社秋の風            洋光
群れ離れ秋草を食む牛一頭
浅間なる銘「六紋銭」てふ今年酒
    「なる」「てふ」、更には「銘」を一句の中に同時に
   使わない方がよろしいでしょう。
    〈「六紋(文?)銭」てふ浅間野の今年酒〉


SLの煙伸びゆく秋草野           章司
   「秋草野」というのは、少々くどいですね。
 水庭に秋の風生る白き花
   「水庭」?
一鉢のにほひざくらや新走り

秋風や汽笛まつすぐとどきたり       だりあ
秋風や竹刀かつぎて少年ら
 新酒酌むおもむろにぶつ国家論
   「酌む」「ぶつ」二つは必要なし。更に、「おもむろ」は「論ずる」でしょう。
   〈新酒酌む各々ありし国家論〉でしょうか

                        
 廃線は風の遊び場千草咲く         晴子
   この発想、先行があります。
秋風さやぐ雑巾の固絞り
今年酒心の傷のまだ取れず

秋風は川面を越えて土手越えて       中土手
   なんだか数え歌のようで、可愛く、哀しいですね。
新酒召せ湖北観音ほの紅し   

秋風の山裾曲る路線バス          陽湖
 秋草も灯篭も濡れ山家昏る
 蔵ごとに新酒開く会旧街道
   〈蔵ごとに新酒開けり旧街道〉

 秋草に埋もれて咲きぬ草の花        方江
   「秋草」「草の花」共に秋の季語です。
秋風やたっぷり使う化粧水
   皆、同じように思うのか、類想多々。
新酒酌む空気のような老夫婦

乗る脚立松くぐりくる秋の風        吐詩朗
   〈脚立に載る松くぐりくる秋の風〉ではないのでしょうか?
すれ違ふ一輌電車秋の風
   これも類想、先行句多々。
こだはりて新種の米の今年酒
    
 秋風は吹けど通い路閉じかねて    河彦
    新古今の世界ですね。
 主(あるじ)いずこ独り留守居の新酒かな
ぬるき湯を楽しみて後秋の酒

 東京湾一景の中に 秋の風                あきのり
    〈東京湾一景にして秋の風
貧しさも豊かさもなし 新酒かな

秋草や午後の紅茶を濃く入れて        水の部屋
牛の背に番号阿蘇の秋の風
   
秋風や紙ひこうきの滑り来し。                  龍子
地震あとの打ち捨て庭の秋の草。
師を迎へ友と集ひし今年酒。

古希ながら未だ実のない秋の風       せいじ
秋草の褥でみあげる花火かな     
  「秋の花火」として書いた方が面白いかもしれません。
不作年新酒の味が気にかかり

秋風や火星大きく瞬きぬ          二穂
秋草は小さき花の愛おしき

にごり酒自慢顔にて振舞えり

 秋草を横目に急ぐ通勤路       山野いぶき
秋風や病む祖母しばしまどろめり
     
浅間嶺に横雲のびて草の花         たづ
 花嫁のエスコート役新酒汲む
スニーカーの紐締め直す風は秋

秋風や右かまくらとしるべ石                のぼる
 秋草や礎石埋もれし番所址
古希祝ふ四万十川の新酒かな
   おめでとうございます。

 秋草の宅急便乗せしエレベーター       美沙
秋風の巡礼入日へ一列(インド)
 
秋風に贈るマロンパイ密やかに        さと子
肩幅の路地から飛び出す秋の風    
  「飛び出す」を考えて見ましょう。  
根子岳と空と秋草そんな友
   根子岳はナカナカ厳しい山。厳しくも優しい友でしょう。

秋の風読経のつづく大伽藍      意久子
利き酒会賞をそうなめ下戸の父
店先の枯葉をよせる秋の風
  
秋草や赤子の母の千草てふ        姥懐
  もう一寸で、作者が言いたかった所へ手が届きましょう。
風鈴の仕舞ひそびれぬ秋の風
憧れの彼の地のあかし新酒買ふ
   「あかし」は少々言葉が強いです。
   〈憧れの彼の地の新酒なりて買ふ〉  
               

酒蔵の太き錠前秋の草         倭文子
引き潮の攫って行くや秋の風
今年酒幣を飾りし大柱

旧庭の秋草伸びてひと恋し       みどり
新内閣秋風の吹き決算期
悲しくて父母に供えし新酒のむ

昼飯はおおきなおにぎり秋草路      弘子
秋風や演歌の口説こそばし
歌舞伎町に座頭市気取り新酒酌む

鮮やかな書斎で書いている秋の草     さかもとひろし
しのぶ人増えるばかりの秋の風
秋の草相舞慰している丘の上

秋風や水色で描く蜘蛛の糸         瑠璃
秋風や下町の空広かりし
秋風や我を恋せし人死すとふ

先人の書を味わいし秋の風         美原子
神楽坂路地の奥まで秋の風
それぞれに居場所が有りし秋の草

人問わば我は旅人秋の風          悠々

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