道場主今月の一言

(社会性)「俳句は人生をかかへた大きな遊び」 (森澄雄)

銀座俳句道場 道場試合第29回決着!!  

8月の兼題は 「 涼し」 「ビール」 「昼寝」 でした。

 今回の兼題の内の「涼し」は夏の季語で、朝涼、夕涼、晩涼、夜涼など。
 尚、「新涼」は、新たに涼しさを感じるということで、秋の季語であることに、
 注意して下さい。
 凄まじく仕事が重なり、選が遅れましたことお許しの程。    (谷子)

 

 よき風が吹いてきます。
 かっきりと美しい一句です。随分骨格が強くなりました。
 「メダル涼しき金の色」は、一気に読み上げてお上手です。

【入 選】

笑み堅き白鳳仏の涼しさよ     水の部屋

難聴のひとりは安し涼しけれ    もとこ

涼しさや梢を映すサキソフオン    瑠璃

枕辺に絵日記拡げ昼寝の子       吐詩朗
ばんざいの拳の未来昼寝の子    だりあ
五分刈りの子とすれ違う涼夜かな    晴子

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 涼しさや川音のなか禅世界        寒明
それぞれの好み墓前の缶ビール
   親や兄弟の墓前に供えられた缶ビール。生前の好みに合わせての
  銘柄が賑やかですね。

 昼寝からさめても痴呆真只中

亡き父を偲んで一人ビール飲む       正己
 縁側で虫の声聞き昼寝かな
 長き日を老二人して夕涼み
   二句共、季語が重なっています。再考を。

 のどゴクン深海水の冷へ涼し   清七
 新幹線フオームでそっと黒ビール
ケアの里ホットパックの昼寝覚

 泡の出る水が欲しいとビール買ふ       伊佐夫
  笑ってしまいました。なんだか飲酒運転で捕まったら、
  「泡の出る水を飲んだんです」と言いそうで。

 お隣の昼寝のいびき塀を越へ

 スゴイ鼾ですねー。
槍岳の穂先凉しや別天地 
   中七までは大変結構です。下五でまた同じことを重ねるのは避けましょう。
   

涼しさや朝採り野菜籠溢れ          瞳夢
 番犬の顔埋めいる昼寝時        
 可愛いいという思いが伝わります。
 ヨーデルにビールの腕を揺らしたり
    「ビールの腕」というのは省略しすぎです。
   〈ヨーデルやビールジョッキを掲げ和す〉

 夏涼し白き稲穂の風かさこそ         美沙 
 地ビールやボヘミヤの野をテーブルに
   いささか理詰めです。
地ビールやプラハは早きななかまど
 母の丸き背ある安堵や昼寝覚
   自分が先に起きたのかどうか、そこらが解りにくいです。
   〈うちまもる母のまろ寝や法師蝉  不器男〉と言う状況でしょうか?   


居酒屋の閑散として夜涼し          竹雄
 生ビールかに缶付きの贈り物
  やさしいプレゼントですね。
 息子来る企業戦士の昼寝かな 
   原句も捨てがたいのですが、〈戻りきし企業戦士の昼寝かな〉とも。

 缶ビール開けて気分を換へてみる           とみい
 昼寝しな電話の音の非情かな

 惜しむかな極楽浄土の昼寝覚め        花子
 里すべて音無くしたる昼寝どき
凡日の日課となりし昼寝かな
   なかなかに、たっぷりとした一句です。

 勇敢な若き御霊にビールを濯ぐ       さとこ
   もう少し具体性を。   
 思い出の銀河高原ビールを精霊に
  〈献杯は銀河高原ビールなり〉
 昼寝覚め日付変更線に半眼か  
   
 一日終へ酌みわけ夫と缶麦酒       意久子
  〈一日終へ夫と酌みわく缶麦酒〉
 昼寝昼ね寄りどころなきひるねかな
 学友(とも)と会いだらだら坂の暮涼し
  〈学び舎のだらだら坂の夜涼し〉
 球場のビヤ樽背負う娘(こ)大きな声
   女の子の方が元気!ですね。

星座さす指に涼しき風生まる        倭文子
   〈星座さす指に涼しき風生るる〉
 一杯の麦酒愛せずはぐれ鳥
 祖を辿るあみだの梯子大昼寝
   二句共、「はぐれ鳥」「あみだの梯子」の言葉にもたれかかっています。

 うたたねの足の裏涼詞雨あがり       方江
   どうも変換ミスかと。 
ほろ苦きビールによぎる遠き人
 昼寝の児しづかに笑みて重ねけり
   〈何夢むしづかに笑みて昼寝の子〉

 船影より身を剥がしたる昼寝覚       水の部屋
  〈船陰より身を剥がしたる昼寝覚〉
最後には本音ひきだすビアホール

風の道足場の上の昼寝かな         もとこ
 日曜も日暮れて日課缶ビール


添へくれし京の和菓子に涼もらふ      吐詩朗
旅先の地ビールラベル古ファイル

 大昼寝一富士二鷹三茄子           だりあ
空を飛ぶ汽車に乗りたる昼寝かな
   ステキな一句ですね。

 場所取りの亭主にぽいと缶ビール       中土手   
   ついつい笑いました。
 渋滞道昼寝の夢が正夢に

星涼し父似の爪を切ってをり        晴子         
昼寝にも七つ道具や風生れる

山小屋へ歩荷の下ろす缶ビール        洋光
乳ぜり泣く児に覚まされし昼寝かな

朝の市露採(ど)りのもの皆涼し    姥懐
痩身を晒し麦酒の 呷りけり
   〈痩身を曝し麦酒を呷りけり〉
 畳痕(あと) 頬にもらひて昼寝覚

 ビール注ぐ 三十年の 時を経て               河彦
 昼寝顔 藺草模様を 手で隠し
グレコの店の 女の背中 涼しげに 
   〈グレコの店の女の背中涼しかり〉とされると、「俳句」になります。

ビルの隙の通り抜け涼し今日一人       泥臥
 覚束な添いし昼寝の寝覚めかな
 木の葉髪尽きぬ語りや夜涼し
    「木の葉髪」も季語です。
      

 八月や 思ひ出は刷毛雲のごと            あきのり
  昼寝覚め どんな夢やらたたら踏み  
  日の匂ひ ともに合はせてビール飲む 
涼しさは 雲を見ゆるにありにけり
 
 すべもなく薄れゆく記憶塔すずし             瑠璃
   〈薄れゆく記憶すべなや塔涼し〉
 涼涼と石みごもりて川流れをり
    惚れ込んだ言葉にふりまわされないように。

川風の涼しさ添えて京料理                  龍子
ビール飲む息子二の腕頼もしく
俯せの足裏の白き昼寝の子
    しっかり書けています。この調子でどんどんと。

涼夜かな今日の火星の大接近         二穂
ビールあり歌ありライン河下り
保育園みなころころと昼寝かな
  気持ちのよい句がそろいました。 
                                                           

面影は父のもろ肌缶ビール          たづ
樫の木に雀静もる涼新た
 昼寝覚めさっきの句稿を考える

 缶ビールリュックに詰めて五千尺              のぼる
 昼寝して茜の宵を失へり
涼しさや火星明るき遠めがね

昼寝時眠れぬ園児ひとりおり      山野いぶき
 涼風を胸に吸い込む那須高原
ひとりいる北の異郷の涼しさよ
   「ひとり」で、涼しさに清しさが加わりました。

縺れたる紐みなとける涼夜かな     章司
 通過する特急電車風涼し
 果てしなき座禅談義やビール注ぐ
いとほしき昼寝の畳不器男の句

 友来る手造りビールの宴は更け      陽湖
夫昼寝シナモンケーキ焼いて待つ
高遠は二十三ケ寺月涼し
青年の襟足涼し娘の墓前
   哀しみを底に秘めて、ドラマを感じさせる一句です。

 手水鉢晩涼広し太平洋          さかもとひろし
  手水鉢と太平洋との関わりが、読者には突然過ぎます。「晩涼広し太平洋」を生かしてください。
 三尺寝夢はシベリアヨーロッパ
ドイツ語が酔い増す夕日のビアガーデン  

 井戸の中のぞいて涼の闇        美原子
  「中」「のぞく」は重なります。
  〈○○○のぞけば井戸の涼の闇〉

 バーベキュービールケースを椅子にして
 昼寝して飛びたつ思い迷いけり

 仄暗き川沿いの道蝶涼し         みどり
 ビール汲む話はつきぬ友と居て
一葉忌昼寝のあとに頭痛する
   「頭痛肩こり樋口一葉」という井上ひさしの戯曲がありますね。
   〈一葉忌昼寝のあとの頭痛かな〉と。

 浴して一人暮らしの縁涼し       弘子
ビール苦し四日目の雨降りやまず
 朝寝して昼寝して青畳
   「朝寝」は春の季語です。

 朝涼し俳句と遊ぶ夢の中        悠々                   
    おウラヤマシイ。寝る時間が少ないと、夢も見る間がないのに気付きました。                  
       少し仕事を減らさねば、と思いつつ。 

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。
www@hb-arts.co.jp