道場主今月の一言

(俳句)「何もかもが俳句になるものではない。何が俳句になるかを選ぶことが俳句」 (林火)

銀座俳句道場 道場試合第25回決着!!  

4月の兼題は 「春の夕焼」 「春泥」 「花衣」 で した。

 今回は選者吟の代わりに、「春泥」というとすぐ思い出す、私の好きな一句を揚げます。
今回は、句材はよいのですが、纏め方が今一歩の作が多かったようです。。    (谷子)

 

 二日酔いの悔恨と春の泥が絶妙です。
 美しい一句でした。谷崎の作品を思いました。
 しっかりと対象を観ています。

【入 選】

煙突のこはされてゆく春夕焼        だりあ

ひとり来てひとりの砂丘春夕焼       方 江

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

花衣となる普段着や茣蓙の席        吐詩朗
 野外劇武蔵小次郎春夕焼
 春泥を集ふ場とせる下校の児
   「春泥に遊びいたりし下校の児」

春夕焼エプロンのひも十文字        だりあ
 春夕焼菜っ葉へ水のたつぷりと
   「野菜へ水たっぷりとやる春夕焼」

駐車場測量終る春の夕焼         清七
   「駐車場の測量終る春夕焼」と
車椅子迂回の車輪春の泥
   「車椅子迂回の轍春の泥」と
  座す妻の着たり脱いだり花衣

花衣宮の階登り行く           正巳
 畦道の春泥跳ねて犬が行く
母が呼ぶ春の夕焼け暗い山
  不思議な魅力のある一句です。怖いような懐かしいような、何かしらマザーグースや民話が持つ残酷さのようなものが伺えました。
 
 春の泥顔に散らしてコンバイン        瞳夢
ペンシルの折れて仰ぐや春夕焼け
 花衣 は来ません 悪しからず
   ?

 春泥や 残すは轍 選挙カー        花子
   「選挙カーの轍残れる春の泥」
春泥を 蹴散らし遊ぶ 故郷かな
 春泥に ふと立ち止まる 墓参かな

 真新し制服似合ふ花衣           とみい
   制服と花衣と、被服を重ねないように。
 春夕焼また降りし雪消えないで

春泥の化粧坂に来てころぶ         中土手
次の間の障子明るく春夕焼
あざらしの出没黄金週間近し

 連れ立ちて夕日に吐息花衣         泥臥
 春泥や後ろから伸びる掌の大き
  「後ろから伸びる掌大き春夕焼」
 負うた荷に草ぼけ一輪春の夕焼け
                   
夕風の となりをあるく花衣        せいじ
 ご開帳 お上人の足袋春の泥    
  「お上人の足袋の春泥ご開帳」添削すると秀逸ですね
 里山の 春夕焼けの人恋し 

 花ごろも 逝きし遊行の 僧の影              河彦
花ごろも まといて二人 隅田川
 花ごろも 胸高き乙女 立ち尽くし 

ままごとの団子不揃ひ春の泥        もとこ
母の声春夕焼けに聞こえ来る

娘の丈に仕立て直せる花衣         洋光 
 春夕焼春は曙といいしかぞ
春泥に石ひとつ置き渡りけり

並びいてコーヒーココア春の宵       意久子
絵画展靴に春泥つきしまま
 「おはなみ」は問われて「NO」と年々応え
 2003年何が何でも櫻ゆく
   「櫻ゆく」って、どういうことでしょう?「桜見に行く」ということなら、 「櫻見に」で十分です。

和讃果て春夕焼の始まれり          倭文子
 身の近く着メロ聞こえ花衣
  下五は「花衣」よりも、「花曇り」の方が、一句が大きくなります。
 春の泥踏みて泣く子の逞しき

 春泥を来て短靴を悔いてをり       のぼる
春夕焼サトウハチロー記念館
   北上川の近くにある記念館、私も詩歌文学館訪問の後、一人でトコトコ参りました。
 花衣脱げば疲れのどっとあり

花衣たとうに残るははの文字        方江
   「はは」は「母」と
 春泥に足つっ込みし橋の上

 花衣風のいたずら裾の舞             さと子
 志賀島猩々笑ふ春茜
   「春茜猩々笑ふ滋賀島」
 杖おどり七転び八起き春の泥

 春夕焼け青みに暮るる膳所の湖           寒明
   「青み」は再考を。「蒼く暮れたる」と
春泥や道産子の足たくましき              
 風呂敷の色も合わせて花衣

 春の泥ずっしりとした登山靴        秀二
ふんわりと春夕焼けを見て帰る
花衣春日の山にあひしこと

ゑみすこし セピアの母や 花衣   姥懐
   「ゑみ少しセピアの母の花衣」
 春夕焼け 咄嗟に両手を 炙りけり
 春泥の 温みの向は 神の道

春夕焼け 大きく背負いて 父帰る         あきのり
  「父帰る春夕焼けを背に負うて」としてみましたが、原句の「大きく背負いて」の力が削がれてしまって、なにやら元気の無い父になってしまいますので、 「春夕焼け大きく背負い父帰る」と「て」を削りましょう。 
またたきて また星生まる 春夕焼け 
春泥や 子のせがむ声 筒抜けに

青空の色を纏はむ花衣           美沙
 放たれて雄鶏爪先立つ春泥
   「放たれし雄鶏の爪春の泥」あまり細々言わない方が、情景は広やかに伝わります。
目の癒えし母と立つ町春夕焼

 春泥がコートのお伴街歩き         さかもとひろし
 できたての春泥の中越境す
   「越境す」を生かすならば、「できたての」は削りましょう。
   「できたて」を生かすならば、「越境す」は削りましょう。
   「○○○今朝出来立ての春の泥」

 ジーンズが花衣に化けて他所行き顔

言いたきを呑み春泥の道を行く       高木みどり
   「春泥や言いたきことは口にせず」
包まれて春の夕焼子守唄
 離婚告ぐ花衣の友肩やせて

 春泥や喘いで登る急斜面           小島弘子
 春夕焼取り壊し待つ古館
無言館雨に濡ちし花衣
   「花衣雨に濡れきし無言館」

 怒涛の語と春の雪舞ひ白鳥還る        瑠璃
 春泥にあらず重油に足とられしか孤雁よ 
幾千キロ渡りの海の春の夕焼け
   「幾千里渡りの海の春夕焼」

母似嘆く吾娘との花衣           陽子
   「母似嘆く娘(こ)を伴いし花衣」
 春夕焼立ち去りかねて橋の上
春泥に藁敷かれ居り祠まで

 明け暮れの衣の今宵花の精           章司
 振り返る孤独を包む春茜
春泥の路地の人渦らあめん屋
   「らあめん屋の路地の行列春の泥」
 春泥や天秤棒の水運び


 花衣はらうもいとし田安門            古井一歩
 春泥に足乱れけり年重ね
薄桃の 春の夕焼け 母想う

春泥の干からびている膝小僧          よし子
花衣諍ひし事胸に秘め

 再会の思い包みて花衣             美原子
 春の泥曇る体は進めない
   「身の内のどこかが曇る春の泥」
焼きたてのパンの臭いや春夕焼

心地よき恋のしがらみ春の泥          悠々

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