えん罪で独房に閉じ込められる!
 | 新山 恭子 |
今回の夢は「独房」に閉じ込められる夢です。それも、身に覚えもない冤(えん)罪で30年の懲役を言い渡されます。苦しみ、絶望、あがき...まるで映画のワンシーンのようです。この夢にはいったいどんなメッセージが込められているのでしょうか?
夢の相談の相手は、東京・品川区のM・Nさん、女性。25歳、会社員です。
- M・Nさん 「私が殺人の冤罪で裁判を受けるのですが、無罪を証明できず、懲役30年の実刑判決を受けました。しかも、凶悪犯として畳一枚分の広さで、窓のない独房に入れられることになったのです。その独房の風景は鮮明に覚えています。映画の「ショーシャンクの空に」のワンシーンのように薄暗く、赤黒いレンガの壁面に水滴がしたたり落ちている部屋でした。私は泣き叫んで抵抗するにですが、恋人や友人、同僚らに「毎日会いに行くし、無実を証明してあげる」と説得され、身の回りの物を持って刑務所に入りました。」
- 新山さん 「"夢は雄弁である"と言われるように、M・Nさんの場合、冤罪にかけられた状態を使って現在の心理を実にうまく表現しています。よく考えつくなとつい思ってしまいますが、頭で考えているわけでなく、夢は意識下の魂からわき上がるため、舞台設定、登場人物が絶妙のドラマを繰り広げてくれます。殺人の冤罪で30年の実刑判決を受けて独房に入るところは、まるで現実のことのように、彼女の切なさが伝わってきます。しかも彼女は映画「ショーシャンクの空に」の中の独房のようだと感じています。私も、この映画を見たことがあり、大変心を動かされました。やはり、冤罪で独房に入れられた主人公の思いや絶望感がイメージとしてとらえられます。M・Nさんが、その映画を見たから、この夢を見たと単純にとらえてしまいがちです。しかし、それだけではなく、映画の持ったテーマや背景にそのときの彼女の内面が強く響いて、夢に現われたものと思います。彼女は現在の環境の中で心理的に無実の罪をかけられているような、不当な扱いを感じているのかもしれません。」
- M・Nさん 「思い当たるふしがあります。夢って不思議ですね。刑務所に入るとき、視力の悪い私は、コンタクトレンズはしてきたものの、メガネを忘れたことに気付き、不安感に襲われ、メガネを届けてもらうための電話をかけさせてほしい、と看守に懇願しています。ここで目が覚めたのですが、ものすごい絶望感が残っていました。」
- 新山さん 「メガネを忘れて慌てていますね。これは、自分の視点、価値観の一つは離さずにいるが、もう一つの大事なものをなくしていると伝えています。それを取り戻すため、コミュニケーションを取る手段(電話をかける)を必死に探しています。その手段の選択の幅も切羽詰まった雰囲気があります。自分で気付かずに、環境に合わせすぎで、「過剰適応」に陥っているかもしれません。現在のM・Nさんのストレスを「心のワクが広さ一畳分」「メガネがなく先を見通せない」「30年という途方もない重圧」などで、夢は伝えています。環境を変えるのは大変難しいのですが、自分の環境へのかかわり方を変えていくことは、案外ささいなことから可能にしていけます。「周囲に合わせすぎない」「完全を狙わない」「いい子になりすぎない」などを意識していくと、バランスが取れてきます。嫌いなことをしなければならないときは、せめて「自分はイヤでやっている」という自覚だけは持つ必要があります。それを無理やり前向きにすると、自分の好き嫌いさえ分からなくなります。なにげない日常の中で自分の感情と付き合いつつ、自分を探していきましょう。」
★新山 恭子(にいやま・きょうこ)1948年(昭23)12月21日、東京都生まれ。東亜国内航空(現JAS)客室乗務員として勤務した後、秋山さと子氏に師事しユング心理学を研究。現在は産能大学経営開発本委嘱講師を務めるかたわら、ドリームコンサルタントとして講演、研修などで活躍。ラジオ日本「新山恭子のドリームトーク〜夢はあなたへのメッセージ〜」(日曜後5:35)のパーソナリティーとして出演。
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