いまの時代は本音を吐け
牧念人 悠々

 写真週刊誌「フォーカス7/6」が神戸小6殺人事件の容疑者の少年の顔写真を載せたというので、バッシングにあっている。キオスク、コンビニ、大手書店などが販売中止したり、出版元の新潮社への広告を見合わせたりしている。

 評論家の中には「写真週刊誌になんの権利があって、少年法の適用を判断しょうというのか」といきまいている方もいる。翌週に載った同誌の編集長の言い分によると、少年のやったことは、少年法の枠を踏みこえている。伝えるなら、その少年の顔をキチンと伝えよう。我々は抽象論やタテマエで物を言うとは思わない。現実の、個々のケースに促して考え、何をすべきかを決めていかねばならないということのようである。

 私自身、顔写真掲載には反対だが、編集長の言い分はよくわかる。彼の言い分にももっと耳を傾けてよいのではないか。少年法違反(少年法61条 記事等の掲載の禁止)だからけしからんと断罪するには重大すぎる少年事件である。編集長も「少年法の枠を踏みこえている」と表現している。

 「なんの権利があって、少年法の適用を判断しょうというのか」というが、マスコミはニュースを扱う際少年法に限らず、憲法をふくめて法律について判断する。ことの真相を究明する過程では当然のことである。

 新聞、週刊誌でいえば、名誉毀損、わいせつ文書頒布などの罪が問題となる。特に名誉毀損を恐れていては事件の記事は書けないことがしばしばある。世紀末を迎え、混迷、不透明な現代、抽象論、タテマエで物を言っていては真相はわからない。

 今回の事件では再発防止の観点から事件の真相を伝えるべきである。加害者の人権をおもんばかる余り、マスコミが自己規制しては同じような事件が起こりかねない。加害者の人権より、再発防止という社会の公益性を優先すべきと考える。

 意見の違う者、意見を異にして行動する者に、もっと寛容になっていいのではないか。私が顔写真掲載に反対するのは、少年は明かに精神的に障害があると見受けられるからである。心理学者もそれを認めている。少年法の枠をこえた事件だとしても、別角度からの少年に対する配慮がいる。さまざまな教訓を残している神戸小6殺人事件である。


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