影に追われる!
今回の夢は「追われる」夢です。仕事ではなく、何か分からない「大きな黒い影」に追いかけられます。これは、いったい何を意味しているのでしょうか?
夢相談の相手は東京・世田谷区のK・Nさん。20才、女子大生です。
- Nさん :『夢の中で私は、駅から家に帰る途中、誰かに追いかけられています。
夜で暗く、怖くて振り向けず、前を見て必死に小走りで家に向かって急いでいます。
家の前の私道に来て、「あと少しだ」と思った時、すぐ後ろに大きな黒い影のようなものを感じます。キャーッと叫びたいのですが、声も出ず、やっとの思いで玄関に飛び込んで、ソーッとすき間から、私を追いかけた者(物)を見ていました。しかし、そこにはスもなかったのです』
- 新山さん:『何かに追いかけられる夢を見る人は多いでしょう。
K・Nさんが夢の中で、追われていると感じているものは「黒い大きな影」です。これはそのまま彼女の心理的影=シャドウと、考えてよいでしょう。
シャドウというのは、日常ではあまり意識化されていない心理機能です。意識されていない理由はさまざまで、素質的に苦手であったり、遠い思い出になっている経験、モラル的にやりたくないことなど、ふだん使い慣れていないものだからです。その時点で、心理的バランスをとるため、意識が薄くなっている睡眠時に、内的世界から浮かび上がって夢を構成します。
この夢では、具体的人物や物ではなく、まさしく「影」としてストレートに表現されています。こういう夢を見た時、私は「次回、夢の中で追いかけられたら、勇気を出して振り向いてそれが何なのかしっかり見てごらんなさい」と提案します。夢にちょっと意識的に参加する訳です』
- Nさん :『夢に意識的に参加する?
最近、こういった何か分からない人や物に追いかけられる夢を何回も見ます。これは、どういう意味があるのでしょう』
- 新山さん:『影をきちっと見定める作業を促すと、現在の問題点が見え、さしあたって何をするのかが具体的になります。
「追いかけてくる」という現象は、「追いかけてくる」という現象は、「私を見て、これを使って」と内的なもう一人の自分が訴えていると見ます。
実際に自分の影がない人はいません。心理的にも、これが言えるのですが、現代は光だけを追い求め、影の存在に気が付かないことが多いようです。光と影のバランスが、その人を立体的で魅力のある雰囲気にします。
K・Nさんのように20才ぐらいだと、心理的変化が内面で着々と行われていますが、具体的にその変化を確立して大人に育ててくれる場面が、現代ではなかなかありません。
自分を見つめ、通過儀礼(イニシエーション)をどこかで意識的に起こしていかないと、心理的に大人になるチャンスを逃がしてしまいます。
K・Nさんは夢の終わりに、今の自分にとって最も安心で安全と思っている居心地のいい家に逃げ込んでいます。この夢は、ゆくゆくその家族的な心理から脱皮して、自分の影とすり合わせをしていく準備段階を知らせていると言えるでしょう』
★新山 恭子(にいやま・きょうこ)1948年(昭23)12月21日、東京都生まれ。東亜国内航空(現JAS)客室乗務員として勤務した後、秋山さと子氏に師事しユング心理学を研究。現在は産能大学経営開発本委嘱講師を務めるかたわら、ドリームコンサルタントとして講演、研修などで活躍。ラジオ日本「新山恭子のドリームトーク〜夢はあなたへのメッセージ〜」(日曜後5:35)のパーソナリティーとして出演。
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