付録
APPLET is here!
12年ぶり日本一へ
97年シーズン・インとともに阪神タイガースはすべり出し順調で“台風の目”となっている。2年連続最下位でファンを泣かせた我が阪神タイガースは今年、吉田監督のもとで生まれ変わった。がっちりと守りを固め、1点でも多く取る粘りの野球を展開している。5年ぶりのAクラス浮上どころか、優勝の予感さえ十分。
85年の日本一から数えて12年。猛虎を操る吉田監督こと“ヨッさん”への期待は限りなく大きい。12年前の出来事とはいえ、吉田さんに、やはりどこか日本一監督の“ツキ”がある。キャンプ、オープン戦のわずか二か月で、阪神が見違えるほど変身した。
安芸キャンプでは、内外野のノックの時元気な声があふれ「ムードはいいなあ」の期待程度。しかし、開幕数試合で誰もが「ひょっとすると……」と思うようになってきた。
「今のうちのチーム構成は、さらに1点を取ろういうより、出来るだけ1点をやらないという方が大事なんですわ」
就任時から吉田監督が、ことあるごとに口にしていた信念。それは、対外的なPRだけで終わらなかった。キャンプでは、しつこいほどの守りの反復練習を重ね、オープン戦で一つ々々結果が出ると、選手の間に“その気”が広がっていた。
「今年のうちはいけるかもしれない。昨年までは、自分が点を取られるとプレッシャーみたいなものがあったけど、今年は“野手がなんとかしてくれるだるう”という気持ちになるんです。そう思うともう、それ以上点はやらなくなることが多い」とすでに勝星をあげた藪、湯舟と並んでエース争いをしている川尻。
もともと、ツブぞろいという面ではリーグ一、二の投手陣。堅実になって守りや、一つでも先の塁を取ろうとする攻撃陣の大きなバックアップは大きい。そのため、60点から70点程度だった投手力が、80点から90点の高い領域に達した。優勝した「ナゴヤドーム・トーナメント大会」では、同スコアでの“制度勝ち”があったように“最小点”で逃げ切るという必勝パターン確率された。
「これがいいんですわ。選手が自分たちの野球を目覚ましてくれるようになった。フランスでは、犠牲バンドの意味を分からせるまで何年もかかったですけどねえ……」
吉田監督は、掲げたチーム方針が短期間で浸透したことを喜んでいる。阪神が急速に変身した手応えを、今しっかりと感じている。
昨年までの阪神ナインと違って、今年は、食事などに群れをなして出掛ける姿が目立つ。そして、話題もガラリと変わって、プレーについて議論百出。「あれは、ピッチャーがカバーリングに走るべき」「いや、ピッチャーでは無理や」など、実のある“反省会”が続出している。それだけ燃えているのだ。
これまでは、首脳陣だけが張り切り「笛吹けど……」という時代が、本当に長かった。しかし、今年は吉田監督が前回から唱え続けてきた“全員野球”が実現しようしている。
もっとも85年当時と違うのは、打線に破壊力が不足している点だろう。バースも掛布も、岡田もいない。そして、グリーンウェルもいないが、それをカバーするのが97年型の必勝パターン“全員野球”なのだ。
吉田監督自身も、三度目の監督で年輪を加えている。63歳は12球団の監督の中で最年長だ。みかけによらずカーッとくるタイプだが、それも以前よりだいぶ根気強くなってきた。口では「そりゃあ、グリーンウェルが早く戻ってほしい」といってはいるが、桧山の成長、新庄の発奮などで、問題の打線にも好材料がそろっている。
吉田監督の“ニュー・阪神”がスタートした。虎ファンが興奮で眠れぬ熱い日が続いている。
