新山恭子の気軽に心理学(8)
ペルソナ

新山 恭子

 私達は、社会や家庭で、人と関わる時、全くの素でいる訳ではありません。裸で、人と会うのではなく、その場にふさわしい服装を選ぶ様に、心理的にも、その場に合った自分を演じています。ユングはこれを「ペルソナ」と、言っています。ペルソナは、ギリシャ劇で使われた仮面を意味します。つまり、心理的仮面を、つけ替えて、私達は、人々と関わっているのです。仮面を無意識で、つけたり、取ったりしていると、気付かない内に、本当の自分とかけ離れた自分を演じ続け、むなしく日常をこなしていく結果になります。今、仮面をつけているんだと自覚する必要があります。仮面の裏の本当の自分を、バランス良く仮面を通して出せる様、風通しを良くしておきましょう。会社人間で役職という仮面をかぶり続け、プライベートな自分を育てておかないと、仮面は、ぶ厚くなり、定年退職で、役職をはずれた時、いざ仮面を取ろうと思っても、はずれなかったり、はずれても、その下は空っぽという事になりかねません。

 主婦の場合、母親や妻という仮面に依存して生きていると、その人らしい人格、意見が育たず、役割が終了した時、何を生きがいにして良いか、わからないといった状態になります。仮面なくしては、社会で生きていけません。仮面をつけている自覚と、自分らしさを仮面を通して表現する方法が、健康的な仮面のつけ方です。先日、友人が、突然、食事しょうと電話をしてきました。彼女は、いつも明るく、人に元気を与える楽しい人で、仕事と家庭を上手に両立している人です。楽しい時間の中で、彼女は悩みを打ち開けてきました。常に明るくしている裏に、ストレスに押しつぶされそうな彼女がいました。「愚痴を言ってゴメンネ」と彼女は、何度も言います。一通り話した後、「すっきりした」と涙を浮かべてニッコリしました。一生懸命、妻と母親の役割を演じ、本当の自分を誰にも表現していなかったのでしょう。人間は、そんなに強くなく、完全ではありません。自分の思いや考えを何かにつけ、伝える習慣が、心のバランスを保ちます。捨てゼリフ、やめ息、舌打ちは、伝えたい事を、ひねくれた形にしてしまいます。シンプルにストレートに、思いを伝えて、仮面を脱げる人間関係を育てておきましょう。


 ★新山 恭子(にいやま・きょうこ)1948年(昭23)12月21日、東京都生まれ。東亜国内航空(現JAS)客室乗務員として勤務した後、秋山さと子氏に師事しユング心理学を研究。現在は産能大学経営開発本委嘱講師を務めるかたわら、ドリームコンサルタントとして講演、研修などで活躍。 

 

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