愛知県瀬戸市の、猿投山麓にある 海上(かいしょ)の森は、名古屋市近郊にある最後の広大な里山です。 ここは東海地方にしか生息していないシデコブシをはじめとした貴重な生物が 見られ、野鳥の種類も多い豊かな自然の宝庫です。現在、21世紀万国博覧会 の開催予定地とされ、跡地利用としての都市化計画とともに、この場所の自然 環境に影響を与えようとしている問題が起きています。ではどんな所なのか、 トピックスなど踏まえてお届けします。
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自然通信(5)
真冬の海上の森・2

牧野 紀子(愛知県)

 1月24日、久々に強い風が吹き、寒い一日となりました。強風のためか、その日はあまり鳥を見ることができませんでした。それでも大正池(海上の堰堤のある池ですが、立ち枯れた木々が池の中に林立しており、その風景があの上高地の大正池によく似ているのでこの名があります。)でも、篠田池でも氷が張っているのを私は今シーズンは見ていません。篠田池では、タカの仲間のノスリが上空を飛び、大正池では目の前でルリビタキ雌タイプが、彼、もしくは彼女から見れば大きなアオツズラの実を丸呑みしていました。

 海上の森で年一番に咲く花、それは[まず咲く」から名が付いたと言われるマンサク・・・ではなく地表すれすれに目立たなく咲くスズカカンアオイなのです。この日あちこちの株でラフレシアのミニチュア版のような花を見付けました。この植物は春の妖精と呼ばれるあのギフチョウの食草でもあります。適度に日光が届き、笹が少ない場所に多く見られます。

ツグミ
スズカカンアオイ

 2月21日の午後より森を訪れたとき、もう真冬、ではなく春の気配が一足早くやって来ていました!今年は既に1月より開花があったというマンサクが見頃になっていました。2つの花が丁度背中合わせになった形で咲きます。常緑のツツジの仲間、アセビも日当たりの良いところは開花しています。そしてウグイスの囀りを聞きました。ヤマガラもシジュウカラも「ツーピー」と春の歌に変わっています。やっとこの冬ここではとんと見掛けなかったツグミが、四つ沢へ降りる途中の樹上で20数羽もの群れで止まっているのを見ました。普段なら田畑や草地に1羽で降りて歩いているのが普通ですが今年は平地に降りた今でも上空や樹の上にいることが多いようです。(余談:1月2日に、標高1,100mほどの奥三河の段戸裏谷へ出掛けたらこの鳥がいたので驚きました。海上や豊橋の平地では見られなかった時期です。)

マンサク(上)とアセビ(下)
ウスタビガのまゆ

 前月でも取り上げたように温暖化の影響が気になり素直には喜べないのですが、 それでも春の訪れは嬉しいものです。また一日たっぷり森を散策し、鳥や虫や花た ちに出会い、語り掛けたいと思います。

トピックス

最近の動き

 「2005年の国際博覧会に係る環境影響評価手法検討委員会作業経過報告書」が通産より発表され、それに対する意見書が各NGO、個人などから1出されました。また、2月27日には海上の森での万博後に予定される新住宅市街地開発事業を含む瀬戸市の都市計画審議会が行われ、それに対しても意見書が市民より出されました。万博に対する環境影響評価(アセスメント)では、97年6月に制定され、適用には1、2年先になるアセスメント新法の精神を取り入れているそうです。これに対し新7住宅市街地開発事業と名古屋瀬戸道路は従来のアセスメントで行われ、万博アセスとは「準備書を合わせる」ことで連携させるとしています。万博は本来アセス新法での対象には挙げられていませんがあえて行われています。所が地域整備事業とよばれる新住事業、道路はこのアセス法では第一種事業(事業の規模に関わらず必ずアセスの対象になる事業)に挙げられているのです。予定地が同じ、というより万博と一帯であるこの事業のアセスも、同じアセス法の精神で行うべきなのです。

 万博アセスへの意見書では、新住と道路、万博とのアセスを一体化すべきこと、代替案の検討を入れること、現地調査が不十分なので更に現地での調査を行うこと、特殊な生物種のみに注目するのではなく、里山のニ次林の総合的に豊かな生態系について注目すること、などが述べられました。瀬戸市の都市計画審議会に対する意見書ではやはり万博のアセスと一体化してアセスを行うこと、情報の公開を瀬戸市の限られた機関だけでなく、広く県民に向け行うこと、活断層が走る予定地域内での計画に対する疑問、などが述べられたそうです。新住については27日の審議会で強行採決されてしまいました。道路については3月6日に再度審議の予定です。

イベント2題

(1)海上の森春祭り
日時:98年4月26日(日)
場所:海上の森、海上の里一帯(総合受付・ 四つ沢 案内所・山口駅)
時間:午前10時から午後1時まで(小雨決行)
スタンプラリー、コンサート、バザールなど色々企画中とのことです。
主催:海上の森イベントクラブ tel(052)803-1174(北山)

(2)このままの森が好きです
「海上の森写真展」
期間:98年5月6日(水)から5月30日(土)まで。[日曜日・月曜日休み]
会場:地球環境パートナーシッププラザ(東京・青山通り国連大学1F右)
主催:日本野鳥の会ボランティア・東京イベント実行グループ
共催:(財)日本野鳥の会
   日本野鳥の会愛知県支部
協力:海上の森自然観察会

署名活動にご協力下さい!

 地元の自然保護団体が、「21世紀地球地球EXPO『愛知万博』の開催地変更を要望する署名(海上の森以外に変更を!)」の活動を来年の春までをめどに全国に向け行っています。自然環境を破壊しない代替地(瀬戸市の陶土採掘跡地や青少年公園など)で万博を行って欲しいという内容です。連絡先は下記の通りです。ご協力よろしくお願い致します。

連絡先
万博オンブズマン 愛知県名古屋市西区江向町1ー60
          TEL 052-524-1586(昼)
海上の森自然観察会 愛知県瀬戸市柳ケ坪町98ー5
          TEL 0561-84-2953(夜)

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