銀座一丁目新聞

追悼録(673)

柳 路夫

岸井成格さんを偲ぶ

毎日新聞元主筆岸井成格さんがなくなった時(5月6日・享年73歳)、何人かの同期生から「あの人がなくなりましたね」と惜しむ声を聞いた。

平成23年10月20日東京市ヶ谷のホテル「アルカディア市ヶ谷」で開かれた陸士59期生の全国大会(同期生245名出席・参加人員300名)で岸井主筆に「現政局について」記念講演していただいたからである。実に分りやすく的確な政局分析であった。好評であった。

この年、私は59期生の代表幹事であった。2年に一度開く全国大会の目玉になるのは「記念講演」だと思っていた。全国から集まる同期生に「大会に来てよかった」と思わせるお土産が欲しかった。思いついたのが当時毎日新聞の主筆の岸井さんの講演であった。ロッキード事件の際、私は社会部長として指揮を執った。この時政治部に応援取材班が出来た。岩見隆夫さんをキャップとして河内孝さん。岸井さんの3記者で編成された。疑獄事件では政治部の協力は欠かせない。岩見さんとは大阪社会部で一緒の仕事をしたこともあって気心はよく知っていた。その成果が出て当時「毎日新聞を読めばロッキード事件のことがよくわかる」と言われたものである。

代表幹事挨拶の中で私この事に触れ、「ロッキード事件から35年。事件をともに取材した戦友が毎日新聞の主筆として講演していただくのは望外の喜びである」と紹介した。

岸井さんは始めに「本日ここに参りましたのは当時の社会部長の言うことは社長以上に聞かねばなりませんからです」とみんなを笑わせて話を始めた。その後TBSの「NEWS23」のアンカーとして、是々非々主義でニュースを分析解説、名を挙げた。ご冥府をお祈りする。