銀座一丁目新聞

追悼録(648)

一票国のまほろば護るらむ驕れる人を懲らしめてこそ

倭(やまと)建命は歌う。
「倭は国のまほろばたたなずく青垣山隠れる倭しうるはし」(古事記)
古代の人々は日本をこのように詠んだ。国への限りない憧れと賛美をあらわした歌である。この国が自分の自由になると思うのは驕りの何物でもない。

与謝野晶子(昭和17年=1942年=5月29日死去・享年63歳)は歌った。
「ああをとうとよ、君を泣く、 君死にたまふことなかれ、 末に生れし君なれば 親のなさけはまさりしも、 親は刃をにぎらせて 人を殺せとをしへしや、 人を殺して死ねよとて 二十四までをそだてしや」
安倍晋三首相は9月28日、国会冒頭で衆院を解散した。大義なき解散であった。国民の6割以上がこの解散を評価しなかった。

防人・物部乎刀良は歌う(万葉集・巻20-4356)
「わが母の袖持ちなでてわが故(から)に泣さし心を忘らえぬかも」
北朝鮮の重なる暴挙に「国難解散」という言葉も使われた。差し迫った事態であればむしろ解散はすべきではなかったはずである。有事の場合に備え国民は覚悟を決めておかなければいけないのは確かである。

作家渡辺淳一さん(平成26年=2014年=4月30日死去・享年80歳)が好きな歌があった。
「山の彼方の空遠く
幸い住むと人のいう。
ああ、われひとと尋めゆきて、
涙さしぐみかえりきぬ。
山のあなたになお遠く
幸い住むとひとの言う」 (カール・ブッセ作 上田 敏訳)
希望の党が選挙直前に誕生した。党首は小池百合子。崖から飛び降りるのが好きなのが玉に傷であった。総選挙では立ち遅れた。

石川啄木(明治45年=1912年3月7日死去。享年26歳)は歌う。吾が心に響く。
「はたらけど
はたらけど猶わが生活らくにならざり
じっと手を見る」
「生活保護を受けている世帯」164万1087世帯(平成29年7月)。受給者数212万7205人(同じ)。
企業の内部留保360兆円。

「一票 国のまほろば 護るらむ 驕れる人を 懲らしめてこそ」悠々

(柳路夫)