銀座一丁目新聞

花ある風景(638)

並木 徹

新聞を隅から隅まで読むべし

時の人・藤井聡太4段(14)は毎日、新聞を一面から熟読するそうである。新記録の公式戦の29連勝が納得できる。新聞記者の私は「新聞は教科書である」と教わった。新聞文章は「短く」「わかりやすく」「意味が通ずる」ように書く。そのために新聞を読めというわけである。今は朝、ブログを書くので新聞をよく読むがコラムを必ず目を通す。新聞は意外と勉強になるし、もの知りになる。時代が変化してゆくのもわかる。「悪いニュースには変化の芽がある」。伝えられるニュースは人間の喜怒哀楽の結果であり喜劇も悲劇もある。昨今は想定外のこともよく起きる。大型バスの運転の未熟な者に運転させ大事故を越したり、寄贈された貴重な図書を図書館が廃棄したりすることが日常茶飯事に行われる。事件・問題・紛争の解決の仕方人間の知恵を示すものである。とりわけ最近の世界情勢は興味深い。トランプ米国大統領の言動、英国のEU離脱、北朝鮮の弾道ミサイル開発、中国の覇権主義的行動ETC…

昭和の初め一人の海軍士官が歌を書いた。「ああ、人栄え国ほろぶ 盲たる民、世に踊る 治乱興亡、夢に似て 世は一局の碁なりけり」

世はまさに一局の棋譜である。それが千変万変に変化する。これを読み取るのは至難の業である。人間の英知と理解力が求められる。それが難しくとも新聞をよく読まなければ養われない。人間は新聞をよく読むことによって無意識のうちに英知と理解力がつく。

新聞記事は5W+1Hで構成される。WHAT(何を)、WHY(なぜ)、WHEN(いつ)、WHERE(どこで)、WHO(だれ)、HOW(どうして)である。事実を確認するためである。現実に起きたことの確認である。だがニユースの中から変化を人間は知ることができる。コンピューターは直ちには出来ない。だからコンピューターソフトの活用には限界がある。現実では棋士とコンピューターソフトとの対戦ではコンピューターソフトが勝利しているが終局的には棋士が勝つであろう。コンピューターばかりに頼っていては上達を望めないと思う。

扇谷正造さんは「5W+1Hは物事を行うに当たっての確認の手続きである」といった。この確認の手続きの上に奇手・妙手が連発できる。世の中の動きには勝負事と同じような激しいやり取りが繰り広げられている。盤上で得られぬ勝負の綾を新聞から汲み取ることができる。どの世界でも新聞を読んだ者のと読まない者の実力の違いがはっきり出ている。私は5W+1HにLOVEのLを加えた新聞記事を作るよう提案している。藤井4段が新聞からLを感じとってくれたら大きく飛躍するだろうと期待している。