花ある風景(630)
相模 太郎
「日本現代工芸美術展」見ざるの記
90歳を過ぎて失敗を繰り返す。「日常生活の中に悟りあり」というがこのままでは悟らずに反省で終わってしまう。染色家・牧内彰子さん(名古屋在住)から今年の「日本現代工芸美術展」(4月19日から4月24日まで・東京都美術館)の案内をいただいた。4月20日・21日は恒例の権現山の碑前祭があったので24日に行くことに決めた。当日になって気が付いた。24日は月曜日である。殆どの美術館は休館日である。そこで入場券を見ると「4月19日(水)―4月24日(月)|9:30~17:30」とあったので昼ご飯を食べて府中から電車で上野に出かけた。午後2時10分ごろ東京都美術館に着いた。ところが日本現代工芸美術展会場入り口に受付もなく人影もない。案内嬢に聞くと「日本現代工芸美術展は午後1時半に終わりました」というではないか、「入場券には午後5時30分とありますが…」と言うと、「最終日は13:30閉会と書いてあります」と答える。よく見るとその通りである。こちらの明らかなミス。点検と確認を怠った。それにしても昨今はこれに似た失敗が多すぎる。仕方なく30分ほど上野公園を散歩する。10羽程の鳩と戯れる母子連れ、大道芸人もいて賑やかであった。この日一つだけささやかな良いことをした。上野行きの山手線の電車の中で80歳過ぎの男性が後ろの席が空いたのに気が付かずつり革を手に立っているので「後ろの席が空きましたよ」と声を掛けたら「ありがとうございます」と喜んで座った。降りる際も会釈して下車した。
出来るだけミスを少なくするためと無為徒食を防ぐために毎日日課表を書いている。
1. ブログを書く
2. 読書をする
3. 体繰(この日歩いた歩数は5766歩)をする
4. 整頓をする
5. メール・手紙に返事を書く
6. その他(上野へ行く)。
4月24日のブログは毎日新聞に国際俳句交流協会会長有馬朗人さんのインタビュー記事が掲載されていたので“俳句”を取り上げた。詳しくは4月24日の「銀座展望台」を見てほしいが、昨今はブログが簡単に書けない。頭の回転が鈍くなってきた。俳句は得意の分野なので、こんな話を知っていた。其角が芭蕉に「赤トンボ ハネをむしれば 唐辛子」と詠んだところ、芭蕉が顔を横にふった。そこで其角が「唐辛子 ハネをつければ 赤トンボ」と直したら、芭蕉はニッコリうなずいたという。問題はいかに多くの引き出しを持っているかにつきる。その意味では本を読み、映画・お芝居・美術展などをこまめに見る努力をせねばならないのだが億劫になった。
読んでいる本は利島雄之助著『音読 孫子』(弘文堂出版)、加藤周一『自選集 6』(岩波書店)、土橋寛著『万葉開眼』下(NHKブックス)など。左目がほとんど見えないので読書は遅々として進まない。本は生きる糧だからこれからも読むほかあるまい。
元旦に「初日の出6時51分五七五」悠々とブログに書いた。日の出は今や4時58分(4月24日)である。2時間近く早く太陽は顔を出すようになっている。自然は規則正しく動いている。迂闊な失敗はしない…。
「書くことは生きること日の出4時58分」悠々