花ある風景(623)
並木 徹
暗殺・春一番・出来事
「人の世の争ひ今も実朝忌」井上行夫
2月18日(旧暦1月27日)は「実朝忌」である。承久元年(1219年)のこの日、右大臣源実朝は午後6時ごろ鎌倉鶴岡八幡宮で僧公暁(2代将軍頼家の二男とも三男ともいわれる)に殺された。実朝の父は頼朝、母は北条政子である。史実によれば、公暁は源実朝を「父の仇」として暗殺したという。自身も直後に討ち取られた。血で血を洗う鎌倉幕府の暗闘である。不朽の名作「金槐和歌集」を残して歌人・実朝は28歳の生涯を閉じた。墓は鎌倉の寿福寺にある。2月27日に法要が行われる。
実朝の歌一首「箱根路をわが越え来れば伊豆の海や沖の小島に波よる見ゆ」。
それから798年。独裁政治は血を呼ぶ。北朝鮮の独裁者金正恩の異母兄・金正男氏(45)がマーレシア・クアランプール空港で北朝鮮の女性工作員らに暗殺される(2月13日)。2月16日は金正日生誕75周年。なぜこの時期に暗殺かと疑問に思う。”将軍の座”を狙う兄と思い込んで抹殺したとみるのが一番わかりやすい。「兄弟序あり」。もっと上手な兄の処遇方法がなかったものか。金正男氏にも妻もおれば子供もいる。金正恩から見れば兄嫁であり、甥であり姪である。独裁者は恐怖にさいなまれていつまでも血と血を争うつもりなのか。
肉親ほど憎悪が深いというが”兄殺し”の罪は永遠に消えない。金正恩の行く末も見えてきた。
春一番吹く(2月17日)。「春一番女の声荒々し」川口正尾。強風だが暖かい・・・
だが万事はほどほどがいい。トランプさん。イスラエル政策は従来の「2国共存」が無難ですよ。ゆめゆめ米国大使館を聖地エルサレムに移すことのないように・・・。大使館を移転したら戦争だ。目に見えている。
トランプさんよ。中国には「中庸」という本がある。「偏らざるをこれ中と言い、易わらざるをこれ庸という。中は天下の正道にして、庸は天下の定理なり」と言っている。宇野哲人さんの訳によれば「いずれにも偏らぬことを中と言い、万世にわたってかゆるべからざるを庸という。中は天下の正しき道理で一切を統べ、庸は一定してかわらざる天下の条理で細目を尽くしたるものである」ということである。改革も良し。その前に考えることも大切なことである。日本の諺に「急いては事をし損ずる」というのがある。よくよく玩味すべし。
「山口の名産は『首相』」。さる日、自民党本部で開かれた山口県物産店での話だが、このような戯言は無害に見えるがその勢いが凋落を始めた傾向を示すもの。昔「望月のかけたることなし」と誇ったその権勢もとたんに滅んでしまった事例がある。驕る自民党久しからず・・・手綱を引き締めないと足元から崩れてゆく。「春一番周りの御世辞吹き飛ばす」詠み人知らず