銀座一丁目新聞

花ある風景(621)

並木 徹

益友とは

1月は2度、靖国神社に参拝した(1月6日、26日)。2度目の時、御籤をひいた。「21番・吉」と出た。橋本景岳の「益友」の一文があった。
「さて、益友と申すは、とかく気遣ひなものにて、をりをり面白からざることこれ有候。それを篤と料簡いたすべし。益友の吾が身に補ひあるは、全くその気遣ひなる処にて候」
拝殿の1月の御製は明治天皇がお読みになったものであった(新年祝・明治45年)。

「新年をいはふあしたはちはやふる
神代にかへるこちこそすれ」

しばし瞑目すれば神々しい気持ちになる。「もう少し精一杯頑張る」と誓う。
万葉歌人柿本人麻呂は春に歌う。

「ひさかたのあまのかぐやまこのゆふべ霞たなびく春立つらしも」(巻10-1812)

「巻向の檜原に立てる春かすみおほにし思はばなづみ来めやも」(巻10-1813)

景岳は橋本 左内の号である。橋本は幕末の志士、越前国福井藩藩士、安政の大獄で犠牲となる。西郷隆盛は藤田東湖を通じて橋本左内と知り合ったが橋本には一目置いていたという。明治の初めに出された「五箇条の御誓文」は、左内の考え方が反映されているとも言われている。その橋本が説く友人に関する話である。「いわゆる肝胆相照らす仲と言っても。いつも意見が一致するわけではない。ただどんなに激しい議論も率直な忠告も、お互いに私利私欲がないならば、むしろそれによってともに前進し、心は深く結ばれる」と教える。
なるほど私利私欲が全てをむしばんでしまうようである。心にとめておこう。同期生の絆が固いのはこのためであろう。仲間の会・「五輪の会」は3月22日に。「長寿を祝い会」は5月15日にそれぞれ開かれる。今から楽しみだ。