銀座一丁目新聞

花ある風景(620)

並木 徹

「トランプ・クレムリンゲート」騒ぎ

トランプ新大統領は嵐の中を船出する。吉と出るか凶と出るか。神のみぞ知る。

「栄冠の酒苦きかな春寒」悠々

そんな感を抱かせるようなニュースが飛び込んできた(1月14日朝)。メールを開くと毎日新聞社会部時代「ロッキー事件」をともに取材した中村恭一君からメールが送られてきた。彼は「ロッキード事件」の昔の取材仲間の記者たちにも送ったようである。次のようにあった。

「さてこの2、3日ニューヨーク並びにワシントンから酔いも吹っ飛ぶようなニュースが届いています。ウオーターゲート事件直後のロッキード事件で毎日息詰まるような日々を送られた先輩諸兄も久しぶりに大きな興奮を覚えておられるのではないかと思います。末席でうろうろしていた私も(注・中村君は当時英文毎日編集部から1年前に異動。英語が堪能)、堀さん(注・一郎・社会部の同僚)が丸紅から入手してきたチャーチ委員会の聴聞議事録の広聴会記録の全文翻訳に加わり、暗記するほど読み返していた日々を思い出します。下記は今話題の“トランプ・クレムリンゲート”の35ページにわたるdossier(調査書類)とされている全文です。Buzzfeed NewsがPDFのまま掲載したものです。当然、FBI、CIA、それを統括している国家情報局が、一つ一つ真否の裏付けをすることになり、それによって、例えば国家安全保障担当顧問のマイケル・フリンやその他のトランプ政権要職者の関与や犯罪行為、トランプの親ソ政策表明の理由が明らかにされることになれば、ウオーターゲート事件以上の大スキャンダルに発展する可能性があります。もっとも、トランプ大統領の下、さまざまな隠ぺい工作が功を奏して、アメリカのマスコミも決定的な追及ができないという悲劇も否定はできません。注目すべきは、情報機関関係者は、肯定はしていないが、完全否定するにはあまりにも情報の信ぴょう性が高い(自分たちはまだ裏付けをしていない)という判断の下に、オバマ、トランプや議会関係者にとりあえず報告したということではないでしょうか。それが、トランプの言うように“紙屑ネタ”ではないことを証明しています。つまりこのまま放置はできないという宣言です」。
新聞記者は馬のように驚いて牛のように粘れと教えられた。当時の中村恭一記者の働きぶりは『毎日新聞ロッキード取材全行動』(毎日新聞社会部編・講談社刊)に詳しい。メールはなおも続く。

「それではなぜ今なのか。それは選挙結果が確定(議会での承認は1月)するまでは、大統領候補あるいは予定者に有利、不利な行動を起こすことが出来ないという、情報機関の不文律の矜持のためと言えるかも知れません。FBI長官のコミーは、これを破ったために(投票日直前のクリントン・メール再調査公表)司法省特別査察も始まることが決まりました。これも次期大統領確定を待っていいたということでしょうか。
アメリカ大統領の失脚は①議会による弾劾②それを予期してニクソンのように辞任③死亡もしくは正真正銘の身体的不能(病気等)で副大統領に職務代行を委ねる - という方法しかありませんが、私は、史上初めて、「ケイン号の反乱」のような失脚法、つまり国家を救うために法にはかかれていない(違法ではある)が正気の大統領を狂人として追い込む史上初めての方法で失脚(あるいは幽閉)に追い込むことにも?などと、夢想をはじめています。添付は開きにくいかもしれませんが、試してみてください。もし開けなければ、BuzzFeed News.comから右上の言語選択の窓の中の米語を選び、関連記事をたどっていくと、見つかります。繰り返しが多く、決して整理された文書ではありませんが、時系列的に綴られているのをたどっていくと、かなりのことが読み取れます。英語も、短文(単文)で知りえたことを羅列した箇条書き的な文章なので、皆様にも十分ご理解いただけるのはないでしょうか。とても面白くて、まさにペーパーバックの宣伝の常套句“You-can’t-put-it-down” (カッパえびせんのように、「やめられない、止まらない」興奮を覚えます)」。

今後アメリカの政界・社会はどのような展開を見せるか、予断を許さない。
トランプの親露ぶりはこれまでも伝えられてきた。この文書ではロシアは少なくとも5年前からトランプに近づきになろうとして援助し,支持してきたという。これはプーチン大統領の是認したもので西側同盟の分裂を助長する目的があった。トランプグループは定期的に民主党や政敵について秘密情報を得ていた。またトランプはモスクワにおいて、仕掛けられたにせよ逸脱した性的行為をFSBによってモニターリングされているらしい。脅かされもしているようだ。トランプが断っているが不動産取引きの話も持ちかけられている。この文書を読んでふと情報機関が外交官から重要情報を取るために仕掛ける「ハニートラップ」(HONEY TRAP=密の罠)を思い出した。トランプが民間人かだからその恐れはないにしても、彼を大統領にさせるために仕掛けられた遠大な「ハニートラップ」とするのは考え過ぎというものであろうか。今後どうなるか米国マスコミの腕の見せ所だ。

「モスクワに浮名流せし寒椿」悠々

「都娘の色香に迷うスキャンダル否定すれども謎深まりぬ」詠み人知らず

Trump-Intelligence-Allegations.pdf
https://assets.documentcloud.org/documents/3259984/Trump-Intelligence-Allegations.pdf

注・バズフィード(英: BuzzFeed)とは
アメリカ合衆国ニューヨークに本社を置く(日本支社あり)、同名のウェブサイトを運営している企業である。2006年にジョナ・ペレッティにより設立され、今では、政治・DIY・動物・ビジネスなど幅広いトピックを網羅するグローバルな[1]メディア企業に成長している。 2011年には、 Politicoに勤務していたベン・スミスを編集長として採用し、もともと提供していたエンターテイメントコンテンツに加えて、よりシリアスなジャーナリズムやルポルタージュへと幅を広げていった。

FSBとは
〖ロシア Federalnaja Sluschba Bezopasnosti〗 (Федеральная служба безопасности РФ(ФСБ)
ロシアの連邦保安局。KGB 解体後の後身の一部である連邦防諜局を 1995 年改組改称。