追悼録(620)
渡辺和子さんを偲ぶ
ノートルダム清心学園の理事長・渡辺和子さんがなくなった(昨年12月30)。享年89歳。ベストセラー「置かれた場所で咲きなさい」の著者。
渡部和子さんは、2・26事件の凶弾に倒れた渡辺錠太郎教育総監の二女である。この父にしてこの子あり。渡辺大将は近衛歩兵3連隊に衛生兵として入隊、刻苦勉励して陸軍士官学校に入学する(陸士8期・明治28年302名。明治29年11月卒業)。明治36年陸大を首席で卒業(17期)、日露戦争には歩兵36連隊の第1中隊長として出征。旅順攻略戦に参加、第1回の総攻撃において竜眼北方保塁突撃で負傷する。山県元帥副官、明治40年ドイツに駐在、帰国後副官に戻る。大正6年オランダ大使館付武官、ここで第一次世界大戦を肌で感じる。ベルサイユ条約締結後の欧州も見た。平素、給料の半分以上を洋書購入に充てるなど「学者的武人」と言われ,皇道派でも統制派でもなかった。2・26事件で犠牲者となったのは言われなき中傷に基づく。和子さんは渡辺大将が旭川の師団長の54歳の時生まれた。夫人は産むのを躊躇されたという。2012年に出された著書『置かれた場所で咲きなさい』を読み感動したのを思い出す。その中に「毎日を“私の一番若い日”として輝いて生きよう」と言う言葉があった。今日より若くなる日はない。確かに明日には365分の一日年をとる。今日が私の一番若い日だ。昔教わった『少年老い易く学成り難し』と同じである。老人向きの表現である。何か新しいことにチャレンジしていつも輝いていようということである。無為に過ごすことの多い昨今、大いに反省をした。私には書くほか能がない。「生涯ジャーナリスト」として新しい視点からものを書くよう心掛けようと覚悟を新たにした。
(柳 路夫)