安倍首相の真珠湾慰霊に感あり
牧念人 悠々
安倍晋三首相は26、27日米ハワイを訪問、真珠湾で戦没者を慰霊する。戦後71年、首相としては初めて。米国の戦没者は2400名を数える。安倍首相は「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。未来に向けた決意を示したい」と語った。このニュースを聞いて私は徳岡孝夫著「真珠湾メモリアル」(中央公論刊1982年8月30日発行)に書いてある一節を思い出した。原爆資料館の出口に置いてあるノートに書かれてあった見学した米国人の感想である。ノートには大部分が原爆被災者への同情の声、再び核戦争を許してはならないという良心的な誓い等々で埋められている。が、中には「YOU DESERVED IT」(当然の報い)。3ヶ所に「リメンバー・パールハーバー」とあり、その一つに「私の叔父は真珠湾で死んだ」と書添えがあったという。
大東亜戦争の初戦での奇襲攻撃と戦争終結時の原爆投下。その善悪、憎悪、国際法の合非、いまだに両国民の間に根強い。さらに同書に紹介されている米海軍のウィリアム・R・マキニー提督(故人)の夫人ボビーの言葉が印象に残る。提督は真珠湾奇襲された当時23歳で、戦艦オクラホマの乗組員であったが攻撃を受けた時にはたまたま家に居て難を逃れた。海軍に34年間勤務、提督に昇進したのち退役した。徳岡記者の質問に夫人が答える。
原爆投下について。「悲しかった。犠牲になった人々との事を思って。残酷な爆弾ですものね。ああいうふうにしてか、戦争は終わらなかったんじゃないかしら。若し戦争が続いていたらもっと多くの日本人が殺されていたわ。でも・・・ああ、ああ、なんてひどい爆弾でしょう
戦争で一番よく覚えている日は、いつですか。「終わった日よ。なんと素晴らしい安堵の日だったでしょう。アメリカ人だけでなく世界の人々が安堵のためいきをついたのです」。
廣島の原爆の碑には「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから(広島大学教授雑賀忠義撰)とある。碑文に苦情が出たが主語が「人類」であればと苦情は今はなくなった。8月6日の「広島原爆忌」8月9日の「長崎原爆忌」。世界でただ一つの被爆国。日本人は忘れえない。
今日でも真珠湾に入港する米艦艇はアリゾナ・メモリアルを通過するとき。総員甲板に出て帽を取るという。米軍の損害は、沈没戦艦オクラホマ、ドウアリゾナ,同カリフォルニア。同ウェストバージニア、敷設艦オグララ、標的艦ユタ、損傷は戦艦4隻、軽巡洋艦3隻、駆逐艦3隻、水上機母艦,工作艦各1.飛行機188機、戦死・行方不明海軍2004名、海兵隊108名、陸軍222人。日本側損害は特殊潜航艇5隻、飛行機29機、戦死100名。
第2次大戦が終わり、国際連合が出来たのに、米国は朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、9・11事件、イラク戦争、ISとの戦いと戦いが続く。人間は愚かな動物なのか。自分の痛みだけを声高に訴える間は動物と変わらないであろう。自分の犯した非を率直に認め、他人の痛みもわかれば新しい地平が見えて来るであろう。
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