銀座一丁目新聞

花ある風景(614)

並木 徹

「股のぞき」東山篤規さんの話

木枯らし一番が吹いた寒い一日、今年の「イグノーベル賞」を受賞した立命館大学の東山篤規教授の話を聞く(11月9日・東京内幸町日本記者クラブ)。「股のぞき」の研究で「イグノーベル賞」をいただいたというのでどのようなお顔をしているのか好奇心に駆られての出席であった。

登壇された先生は人品骨柄卑しからず、話し上手な方であった。東山先生の受賞の言葉がよい。「こういう浮世離れの感がする研究を真剣に取り上げ、評価してくれたことをうれしく思います」。

「冬一番無駄の効用股のぞき」悠々

先生のレジメによれば「股のぞきの世界の特徴」1、股のぞきすると、体の上下が逆転して頭が胸の下に位置する。2、網膜にうつる外界の像は上下だけでなく左右も反転する―視野の180度回転に相当。3、網膜にあたえられる波長やその強度は正立視の時と変わらない。4、網膜像の部分間の関係は変わらないが、像全体が逆転している。

ともかく違った世界が見られる。股のぞきすることによって大きさや奥行が正しくとらえられなくなる。距離の判断が難しく、ものは近くに見えるようになるという。

日本記者クラブにゲストスピーカーとして招聘された先生方は備え付けのノートに記帳する。東山教授は「よく遊びよく学べ」と書かれたという。『よく遊び』とは先生らしい。いまどきこんなことを言う先生は少ない。「よく学びよくよく学べ」という先生が多い。正常な脳細胞は体全体を動かさないと活発な働きをしない。運動しないと逆に委縮してしまう。ときには「股のぞき」がいい。

激変する現代も「股のぞき」してみるとよくわかるのではないか。世界のグローバル化は極端な「格差社会」を生み地域紛争・テロの続発は大量の難民を現出させ、その受け入れを巡って差別、雇用不安を引き起こした。それをトランプ氏は過激な発言・暴言で表現したに過ぎない。何も番狂わせではない。

「股のぞき世界も変わる米選挙」悠々