銀座一丁目新聞

安全地帯(510)

信濃 太郎

動物写真家・平岩道夫さんを語る

動物写真家平岩道夫さんとの付き合いは私が昭和63年12月スポニチの社長になってからだ。その頃平岩さんはスポニチに趣味の「郵便切手」についてコラムを担当されていた。スポニチ主催のパーティーには常に出席され、挨拶を交わした。その後動物写真に熱意を示され盛んにアフリカへ行かれた。その成果が「わが心のサバンナ」の写真集となり、アフリカ動物写真常設の「平岩ポレポレギャラリー」となっている。私がスポニチをやめた後でも律儀にスポニチが主催するパーテ―には顔を見せられた。今でも印象に残るのは2012年9月24日に開かれたスポニチの「文化芸術大賞」(第20回)の贈賞式のことである。この賞はその後なくなったが、今なおよい賞だと思っている。誕生したのは平成5年4月。誕生のいきさつは当然、賞をいただくべき作品に賞が贈られないことが少なくない。世間が見落とした作品に賞を出そうと考えた「友情」の賞であった。選定される作品・団体は全て優れており、ユニークであり、意外性の持つものばかりであった。さらに審査員が賞に「品格」を与え、「感動」あるものにした。私は席上、挨拶した。『第19回はニュースを分かりやすく解説する、ジャーナリストの池上彰さんが「グランプリ」に選ばれた。『解説での正しい日本語の使い方』が決めてであった。大相撲夏場所千秋楽で白鵬と日馬富士の激闘を野田総理は「鳥肌が立った」と表現された。明らかに間違った使い方である。現代の若者は感動した場合このような表現を使っている。必ずしも間違いではないという人もいる。私は間違いだと思う。言葉の乱れは心の乱れ、野田さんの命運も長くなそうである。第20回の「グランプリ」は由紀さおりさんで「日本語の美しい響き」を世界中にしらしめましたことが評価された。日本語は大事にしなければならない。「心が形を生むにではなく、心が形をつくる」という。「言葉の乱れは国の形の乱れ」。スポニチ「文化芸術大賞」は一面、このようなメッセージを出している』

この時、平岩さんが飛んできて「私も同感です」と感想を述べられた。その後まもなく国会の党首討論で野田佳彦首相は衆議院の解散を明言、実行された(解散11月16日総選挙12月16日)。その結果、自民党は294議席(改選前119議席)民主党57議席(改選前230議席)となり野田首相率いる与党が大敗した。

私がのんびりと余生を過ごしている間、活動的な平岩さんは働き続ける。今年3月でケニア訪問が157回を数えた。1977年からスタートした「平岩アフリカツアー」でこれまでに4000人を超える日本人がケニアを訪問している。20年前にケニアに作った「平岩スクール」には70名の幼稚園児と300名の小学生がいる。これらの運営資金をすべて平岩さんが面倒を見ているというから敬服のほかない。平岩さんは現在81歳。いつも娘の雅代さんが支えているが一向に衰えを知らない。