銀座一丁目新聞

安全地帯(507)

相模 太郎

「青梅の梅郷」の梅に伝染したウイルスについて

7月10日号「茶説」で江成常夫さんの写真集『多摩川1970-74』(平凡社刊)を取り上げ次のように書いた。『28ページ「青梅市梅郷 1972」には大写しの梅の花にほっとする。だがこの梅は今やない。パソコンで調べると、2009年4月に、「プラムポックスウイルス」の感染が梅の木としては世界で初めて確認されたという。これは家庭排水で汚染された多摩川と関係ないのかと疑問がわいた。梅郷は多摩川の畔にある。風に舞いあがった泡が川よりの梅の木に取りつく。1972年から37年経て梅の木に取りつた妖魔が次第に大きくなり病害になったとは言えまいか・・・・。世界には「ウイルス」と「ファイトプラズマ」が今の農薬では絶対に防げない病原体である。この二つの培養に成功すれば防除薬剤の開発も出来る。まだその培養に成功していない。やむを得ず、2014年5月30日までの間に園内の梅1,266本が全て伐採された。今後、3年間に付近で新たな感染がなければ梅を植樹できるという』

この疑問について原稿を書き終えた段階で『日本植物病害大辞典』の編者であり、日本の植物病理学の一人者でもある友人の岸国平さん(川崎在住)に問い合わせた。岸さんは多摩川の現場まで足を運び写真(10枚)まで送ってくれた。その上で「科学的にありえないことだ」と懇切丁寧な手紙をくれた(7月11日着)。私の考えが非科学的だったと訂正しておく。

彼の手紙によれば、「プラムポックスウイルスはウメ・スモモなどの核果類に特異的に発生するものであり、まだ世界的にも初発見が1999年、アメリカのペンシルベニア州、その後ヨーロッパ各国に広がり日本では数年前に東京都下青梅市一帯の梅に大発生した。私が編者になって出版した『日本植物病害大辞典』の頃はまだ日本では未発生・未発見のウイルスで1万2000種類ほど収録した病気の中には未記録のものであった。このウイルスはアブラムシ伝染性のウイルスであることが世界的にも証明されているので洗剤が泡となって風に舞いその時に伝染するという新説は科学的にもあり得ないものと言わざるを得ません」という。

別に新説を立てたわけではないがそう疑問を抱かせるほど酷い多摩川の汚染であったと強調したかったに過ぎない。対策としては病樹を発見次第、伐採し焼却する事と発生期のアブラムシ防除を徹底する事と言う紋切り型ことしかないという。岸国平さんにはご教授、心から感謝申し上げる。