追悼録(602)
バングラテロによる日本人7人の死を悼む
バングラデッシュの首都ダッカでテロの犠牲となった日本人7名の遺体が7月5日、日本に帰国した。海外で働きたいと言う志を持ちながら志半ばで倒れた7名に心から哀悼の意をささげたい。7人とも国際協力機構の円借款事業で現地に派遣されていた建設コンサルタント会社の関係者。二人の女性は27歳と42歳であった。最年長は80歳であった。国際協力の仕事の一環としてバングラデッシュで活躍中であった。いわば殉職といっていい。昔歌った歌を思い出した。「無名戦士の歌」。
「艱難。汝を玉となす
その言の葉を一筋に
臥薪嘗胆十余年
今待望の時至る」
その夢を膨らませながらバングラデシュのインフラ関係の事業ために働く日本人をなぜ殺害しなければいけないのか、まったく理解に苦しむ。「神は偉大なり」と唱えるテログループよ。「神は無辜の民を殺せ」と教えたのか。テログループの存在誇示か。愚かなことだ。昨今テロが頻発に起きている。イラクの首都バクダットでは7月3日、ISの爆弾テロにより死者213人を出した。この死者は一度の爆弾テロとしては最大である。6月28日にもトルコのイスタンブルーの国際空港で3人のテログループの銃撃と自爆テロによって42名が殺害された。
6月20日号の茶説で次のように書く。「ISを主軸にした過激派組織は今後どう出るのか。中東問題に詳しい池内恵氏が雑誌「外交」(23号・2014年6月刊)でアル=カーイダの理論家と指導者たちの2020年までの行動計画のビジョンを紹介している。これはヨルダン人ジャーナリスト・ファード・フセインの調査報道をもとにしている。行動計画は第1段階(2000年から2003年まで。「目覚め」の時期とされる)から第7段階(2020年・勝利の年)まである。第5段階は2013年から2016年までで、「国家の宣言」の時期である(その宣言通り「イスラム国」を作った)。第6段階が2016年から2020年で「全面対決」の段階である。「世界の信仰者」と「世界の不信仰者の諸勢力」がそれぞれの陣営に集まって真っ向から争うことになるという。カリフ制国家樹立に向かってジハード(聖戦)が繰り返されることになる」。テログループは明らかに「全面対決」に出てきたといえよう。テロ続発の恐れがある。
「身を殺して仁をなす
神州男児の心意気
いざみせばやとただ一騎
向こうは万里、雲の外」
歌の文句「神州男児」に現代では「神州女子」も加わえねばならない。テロに屈してはならない。倒れた日本人のために委縮することなくその志を継ぐべきだと思う。それが「テロに屈しない」最大の証である。
(柳 路夫)