花ある風景(601)
並木 徹
三井物産写真部展を見る
三井物産写真部展「光と影の行方PART2」を見る(7月2日・東京四谷・日本写真会館5階「ポートレートギャラリー」)。展示作品46点、女性3人を含め現役・OB18人(顧問含む)の参加作品。目指すは友人霜田昭治君の写真。芝中の同級生4人も姿をみせる。そのうちの一人有賀写真館の2代目有賀乕彦さんが説明役を買ってくれる。感心した言葉は「写真にはストーリーがある」と「美しい花を写真に撮るのは難しい」の二つであった。私なりに解釈すれば「写真に膨らみを持たせよ」と「逆も真なり。美しい花はきたなく撮れ」と言う事であろう。有賀さんとは5年前、蜷川実花写真展をご一緒した(平成23年6月14日・東京品川・キャノンギャラリーS)。その時、ほろりとした話をしてくれたのを思い出す。「両足のない少女がいつも母親に連れられて写真を折に触れて撮りに来た。大学にも進学、よい成績であった。卒業して役所に勤めた。そのうち結婚した。男性は宗教家のようであった」という。私はその時、人生を自分なりに頑張り幸せをつかんだ一人の女性の姿を思い浮かべた。有賀さんが言う「写真にはストーリーがある」である。
霜田君の作品は「メルヘンの小経」(長野県阿智村)「秋彩」(皇居乾通り)「しだれ桜と菜の花」(長瀞 法善寺)の3葉。「メルヘンの小経」は写真展案内のはがきの表紙にもなった。「満開の桜と椿の木の先にある風景に見せられて、地面に這いつくばって撮影しました」と説明にある。この日来た荒木盛雄君が「幽邃の小径に著き花明り」 と詠んだ。「秋彩」。彼の話では昨年秋に公開された皇居乾通りでのスナップ。当時の彼からのメールには「皇居内の『乾通り』が12月5日~9日一般公開された。8日午後、大手町に所用で出掛けたところ、偶々一般公開の日だと知り、参観しました。 今朝の新聞によると5日間で計20万3000人が訪れ、この日は最高の4万8000人だったそうです。来年は春の桜の季節に公開されるとのこと」とあった。私は万葉の世界を感じた。
「紅葉葉の 光に映えて 人集う 御代の賑わい 留めおかまし」悠々
霜田昭治君はかって「写真は五感で撮るものだ」といっていた。視覚、聴覚,臭覚、味覚、触覚である。蜷川実花は「撮りたいと思った瞬間、撮るだけです」と挨拶の中で書いていた。すでに60冊の写真集を出している実花にしてみれば「山があるから山に登る」と山男が言うのと似ている。私は取材でいつも写真部のカメラマンと一緒に仕事をしていたので「写真には人間を写せ」を強調する。「絵葉書のような写真を撮るな」が口癖である。私は取材記者で常に批評家である。口舌の徒であるにすぎない。