銀座一丁目新聞

茶説

子供の声が”騒音”保育園開園ならず

 牧念人 悠々

”子供の声が騒音”とは悲しい。驚きもした。悲しんだり驚いたりする方がおかしいのか…

昔は広場に子供の声がこだました。路地にも子供の遊ぶ声がした。それがいつの間にか消えた。わずかに幼稚園・保育園・小学校で聞かれる。私は「子供の声を騒音と、捉える人間が憐れ」と思う。最近、人口48万人の市川市で起きた話である。此処だけではなく他の町でも起きているという。

新聞報道によれば4月に開園予定(定員108名・0歳~5歳)であった私立保育園が「子供の声でうるさくなる」などの近隣住民の反対を受けて開園を断念したという。市川市の待機児童は373人。全国市町村で9番目に多い。市川市役所には全国から断念に異を唱える多くの電話があったという。予定地は市中心部に近い閑静な住宅地。反対住民のために開かれた複数回の説明会で「子供の声が騒音になる」「保育園が面する道路は狭いので危険だ」「事前になんらの説明もなかった」などの意見が強かったといわれる(毎日新聞)。新聞、テレビを見ていると市に待機児童解消の熱意が感じられない。少子化対策、女性の積極的な社会参加には保育園、幼稚園等の増設が急務であるのは論を待たないはずだ。

因みに「待機児童」のベストテンを記す。1位東京・世田谷区1182人、2位船橋市625人,3位那覇市539人、4位大分市484人、5位仙台市419人、6位熊本市407人、8位東京・板橋区328人、9位市川市373人、10位府中市352人。

脳の発達の過程から子供の声を考察する。黒川伊佐保著「日本語はなぜ美しいのか」(集英社新書)によれば、3歳の誕生日を迎えたころから子供の語彙は格段に増え始める。4歳から7歳までは、ことば、所作、意識の連携を学ぶ時であるという。その声には好奇心が溢れ生きんとする心が現れている。

私はブログにその感想を記した(4月12日)。
「子供の声は天使の声 明日の国を支える その声に大人が励まされる まほろばの国は子供をいつくしんできた その声がその国を美しくする 子供は国の宝 その声が騒音とは… この国はいつから醜くなった だが子供の声は天使の声 いつまでもそういいたい」

パソコンを見ると、「都市部の土地はすでにほぼ開発されつくしており、新しく保育園を作れば民家と隣接せざるを得ない。この状況で多数の保育園を作れば騒音トラブルが発生するのは当然だ。隣人同士の騒音問題である。今後も騒音トラブルは今まで以上に増える」と、見解が紹介されていた。

子供の声を不快に思う人は厚生労働省の調査によれば35%にのぼる(2015年・厚生労働省白書)という。子供の声は生きんとする喜びの声だ。この喜びの声を騒音とはこの国はおかしくなったと思わざるを得ない。