早期英語教育の愚を笑う
牧念人 悠々
英語を子供の時からか、高学年から教えるのがよいか常に問題となる。私はまず日本語をよく勉強してからだと信じている。まず小学校時代は「国語」に力を入れることだ。つい最近、畏友・霜田昭治君から次の一文をいただいた(3月14日)。
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『私は黒川伊保子さん(感性リサーチ社長)の講演後(注・三井物産の2月例会)、「90歳に近い私にお奨めの著作」をお尋ねしたところ集英新書「日本語はなぜ美しいのか」2007年初版20112年7版を挙げられ、読後の感想を求められた。相武台会(注・同期生の勉強会)で日本語の歴史を題材にした話をしたこともあり、早速購入した。帯封に“早期英語教育は危険!!”とあった。外国語と縁の深い商社マンの感想を知りたかったのだと思う。
彼女によると、「①三歳までに母親語を肌で学びとり、②四歳から七歳まではそれまでに培った“ことばの卵”を育てて、ことば、所作、意識の連携を学び、又、音楽や踊りスポーツなど新体制を伴う稽古事の開始適齢期で、③八歳で母語の構造が完成する。④九歳から十一歳までの三年間は感性と論理をつなげ、豊かな発想と戦略を生み出す能の完熟期でこの間は脳のゴールデンエイジとも呼ばれ、⑤十二歳でオトナ脳へと変容を遂げる。」としている。そして「母語脳が未完成の内に外国語を習わせることは危険である。母語の機能が定着する十二歳を越えたら何語でも何か国語でも好きなだけ勉強すればいい。」と論じている。
私は基本的に黒川さんと同意見です。
愚息は6歳から9歳位まで私の赴任先カナダの公立小学校で学び孫も豪州で小学校時代を過ごした帰国子女だが、二人とも外向的性格でしたので毎日が英語漬けの風土、環境に順応できたのが幸いでした。併し、大部分の日本の子供たちには英語漬けの環境は全くと云っていいほどありません。 又そのような風土環境を創ること自体容易ではありません。 喜ぶのは教科書会社や英語塾でしょう。親の負担が増えるばかりです。
同時通訳者の草分けの鳥飼玖美子立教大学教授は、臨界期とされる年齢以降に英語を身につけた例をあげて、「英語早期教育よりも母語(国語)の教育が重要で、中学高校での英語教育が重要だ」としています。同感です。
昨年文科省の「英語教育の在り方に関する有識者会議の委員名簿
をみて呆れました。座長に小学校一年から中学一年迄アメリカ、カナダで学んだ帰国子女の吉田研作 上智大学教授を任用したセンスが問われます。委員の中には座長の愛弟子の英語塾講師の名がありました。中学から英語を学んでその道のエキスパートになった人材こそが座長に相応しいと思います』
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このほかつけ加えるようなことはない。早速『日本語はなぜ美しいのか』を読んだ。そこで日本人が私を含めて英語が苦手なのかよくわかった。黒川さんは「拍(日本語は一音声単位を一拍のリズムで発音し且つ認識する)と言う規則正しいリズムに縛られている日本人には拍に縛られないメロディアスな欧米語は難解なのだ」と解説しているからである。いずれにしても「英語を勉強するな」と言ってるわけではない。学習する時期の問題だ。高学年になってから外国語を勉強して一つぐらいしゃべれる方がいいに決まっている。さらに思い出した。方言が身につくのは12才頃だという。12歳までその地方に生活しておればその地方の方言が身につく。その前にその地方を去ればほとんど忘れてしまう。私は大阪生まれだが8歳の時に満州へいっているので関西弁はしゃべれない。しかし、眠たいとき「眠たい」という。関東では「眠い」と言う。関西弁の片りんは残っている。黒川さんの説は納得いく。