銀座一丁目新聞

花ある風景(589)

並木徹

サウジアラビアと言う国

月に一度ぐらいは講演会、展覧会、コンサートを組み入れて何とか生きてゆく糧にしたいと願っている。今月は保坂修司さん(日本エネルギー経済研究所中東センター)の「激動する中東」についての講演会を聞く(3月1日・同台経済懇話会主催)。頭の体操にはなった。

サウジアラビア(面積214万9690㎞・人口2937万人)は今年の1月2日、47人のテロリストを処刑した。その中にシーア派の法学者がいたというのでイラン(面積168万8000㎞・人口75600万人)が怒り、サウジのテヘラン大使館、マシュハド領事館などが襲撃を受けた。そこでサウジはイランとの国交を断絶した。驚いたことに処刑した47人のうち45人が自国の人間である。あとの二人はエジプト人とチャド人である。43人がアルカイダ系、4人がシーア派である。アメリカで起きた2001年3・11事件の際にもテロ犯人19人中サウジ人は15人もいた。

地理的に見るとサウジと東に位置するイランとの間には北からイラク、クウェート、バハレーン、カタル、バハレーン、カタル、UAE,オーマンの諸国が介在する。推計3150億バーレルと言う世界一の石油確認埋蔵量を誇るサウジの事とてイランとの断交で困るまい。ただ親しいアメリカが核発開発疑惑でもめていたイランと和解、経済制裁を解除して歩み寄りを見せているのが気がかりであろう。講師は「本妻と妾の関係で気にすることはない」と説明する。

今後ISはどう出るのか。今年に入ってエジプト・ハルガダのホテルで観光客襲撃、トルコ・イスタンプルで自爆テロと後を絶たない。イラクとシリアのISの戦闘員は1万9000人から2万5000人と推定されている。有志連合の軍事作戦などで戦闘員の数は少し減っているらしい。ISのプロパガンダも盛んで英語・トルコ語・フランス語・アラビア語で雑誌を出している。IS対策は「思想的リハビリ」をやることだと講師は強調する。

ISの最高指導者アブ・パクル・アル・バクダィは国家樹立と併せてオスマン帝国崩壊後廃止されたカリフ制の復活を宣言、2020年までにイスラムのカリフ制国家を作り上げることだという。石油の密売や金融機関襲撃で獲得した資金でISを運営。グローバリズムからはじき出された若者を取り込んでいる。密かに資金を提供している中東の国もある。「貧富の格差」は世界的規模で広がりつつある。失業した若者達がテロリズムの予備軍となっている。この状況は今後も続く。ISがそう簡単に消滅するとは思えない。

注目されるのが「湾岸諸国の王位継承問題」。いずれも現在の王様が老齢化したためだ。サウジのサルマーン国王は80歳、クウェートのサパーフ首長は86歳、バハレーンのハマド国王は66歳、UAEのハリーファ大統領(アプダビ首長)が68歳、オーマンのカープース国王が75歳である。サウジではムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子(国防相)が30歳の若さながらムハンマド皇太子(56)をしのぐ勢いを見せているとか。中東情勢は目を離すわけにはいかない。