花ある風景(582)
並木 徹
『夢を追いかけた男たち―毎日新聞再建闘争から四十年』の集い
『夢を追いかけた男たち―毎日新聞再建闘争から四十年(昨年9月15日刊)を語る集いが開かれた(昨年12月24日、パレスサイドビルB1毎日ホール)。出席者は、ざっと60人。広島原爆の生き残り関千枝子さん、日本新聞インキ社長・高尾義彦さん、演劇評論家・高橋豊さんらも姿を見せた。刊行委員会の田場武勝さんが司会。はじめに刊行委員会代表の福島清さんが出版の経緯を報告。『本を「押し売り」したカンパが100万円近く集まって、黒字になった。最終的に残ったお金は毎日労組に寄付する』。
第70期毎日労組委員長・佐々木宏之さん(昨年9月までの委員長・1996年入社)の話。『毎日新聞百年史によると、毎日新聞東京従業員組合の結成大会は昭和20年11月22日に開かれている。現高山祐執行部で71期。新旧分離(77年)は遠い過去の話だが、会社の合理化政策で組合員は2千人を切った。編集綱領に読者国民の信頼・協力・参加が新聞の生きる道と書かれている。この教えに応えたい」と決意を語る。
ついで私が挨拶。『この本は新聞社に働く労働者の「教科書」であると同時に新聞記者の在り方を問うている書だと思う。本の主役は当時組合の委員長の大住君。再建時、相手が平岡さんだからよかった。平岡さんは面と向かって喧嘩を吹っ掛ける男を憎まない。相手に利があれば納得する。毎日新聞が危機に陥った時、平岡さんと大住君と言うユニークな人材がいたのは天の配剤と言うべきです。新聞はいまデジタルに押され多くの読者を失っている。だが新聞が「開かれた新聞」の原点を忘れなければ大丈夫だと思う。「再建は紙面から」と当時言われたが新聞の生きる道は紙面だ。その答えは編集綱領に書かれている』。大住広人さんの挨拶は簡単だった。朝日新聞出身の太田梶太さんの「現代新聞批判」の復刻版について説明する。この本は1933年から1943年にかけて10年刊行したマスコミ批判の半月刊紙である。「今でも読みごたえがする」という。藤田修二さんの話。「編集綱領が破られたのは、これまでに1件。1981年、三和銀行の女性行員が1億円を横領した事件を大阪社会部が特ダネ紙面化したが、大阪編集局長が経営トップの意向を受けてストップをかけた。3日後に掲載したときは他紙と同着だった」と「編集綱領」の価値を強調する。
小川一さん(取締役・総合メディア戦略、デジタル担当・1981年入社。第53期委員長。社会部長、編集編成局長)が語る。「牧内さんの本を読んで毎日新聞を志望した。現在、新聞を読まない、新聞嫌いが増え、時代はもっと大変。250世帯の高級マンションが出来て、新聞を契約したのは60世帯。半数は日経で、残りを朝日、読売、産経など各社で奪い合い。新聞を守る闘いになっています」。テレビキャスターの岸井成格さんが遅れて登場。みんなで励ます。産経新聞が昨年11月14日付朝刊、読売新聞が昨年同月15日付朝刊にそれぞれ、安倍政権を支持する作家や評論家らの「放送法遵守を求める視聴者の会」が、毎日新聞特別編集委員・岸井成格氏のテレビ番組での発言に抗議する意見広告を掲載した。岸井がキャスターを務める報道番組「NEWS23」(TBS系)が昨年9月16日放送で、安保法案について「メディアとして、廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」という発言に対する抗議の意見広告である。
挨拶に立った岸井は「降板の話は一切聞いていない。連日取材に追いまくられて大変です。写真週刊誌にも追われて」という。私は安保法制制定には賛成だが反対意見の言論も尊重する。「言論の自由・報道の自由」は民主主義の根幹だ。最後に現71期執行部の紹介があり、高山委員長は「1989年に新旧が合体して一本化したが、経営は先細り。社員は1800人。組合の決算も6年連続赤字です。組合専従11人を3人減らして8人体制にして頑張ります」と挨拶した。