銀座一丁目新聞

追悼録(582)

新生ふるきゃら、ついに解散、さらば…

ミュージカルカンパニー「新生ふるきゃら」(東京・小金井市)が12月26日の岡山市市立文化会ホ-ルの公演『風のそより』で解散する。「新生ふるきゃら」の前身「ふるさときゃらばん」と縁が出来たのは1991年(平成3年)6月から日米合作ミュージカル「レイバー・オブ・ラブ」(愛の労働)を日本とアメリカで公演するようになってからである。つきあいは24年に及ぶ。ところが「ふるさときゃらばん」を1983年(昭和58年)に設立した作家・演出家の石塚克彦さんが今年の10月27日、急逝。大黒柱を失って興行を全国展開してゆくのが難しくなった。残念ながら解散のやむなきに至った次第だという。

「ふるさときゃらばん」はこれまで農村ミュージカル、サラリーマンミュージカル、うつくしま未来博、愛知万博と庶民の目線でミュージカルを展開してきた。多くの人たちに常に激励と勇気とやる気を起こさせたユニークな劇団であった。今でも記憶に残るのは「ムラは3・3・7拍子」、「ユーマイSUN社員」。それに和歌山県花園村(人口620人)で見た「噂のファミリー1億円の花嫁」は忘れがたい。花園村村長・部矢敏三さん(故人)が議員の押し切ってのミュージカル公演であった。村の人口の半分の村民が見に来た。それだけ魅力のあった劇団であった。

その中でも日米合作ミュージカルが燦然と光を放つ興行であった。140年にわたる日米文化交流の歴史の中でも画期的であった。日本で14会場・24回上演、2万5千人余のお客を動員した。アメリカでは8州11会場・16回公演し2万人のお客が見に来た。スポニチは1億円の協賛金を出して公演を推進した。

このミュージカルは日米のコメ農家を取り上げ涙と笑いの交流を描いたもの。「レイバー・オブ・ラブ」とは「認められることもなく報酬もないのに仕事に情熱を懸ける」と言う意味である。舞台では日本語と英語がトンチンカンに飛び交う面白いシーンを繰り広げた。

舞台で歌われた「LABOR OF LOVE」(レイバー・オブ・ラブ)の歌詞がいい。

LABOR OF LOVE
金のためじゃない
やむにやまれず身体がううずく
人間だから心が動く
愛は力さ 愛が力さ
LABOR OF LOVE

LABOR OF LOVE
金のためじゃない
空が光ってまぶしいから
やむにやまれず身体がううずく
人間だから心が動く
愛は力さ 愛が力さ
LABOR OF LOVE

さらば「新生ふるきゃら」よ…

「何も彼も山越えて来るわが村よたとえば鰯雲もあなたも」部矢敏三

(柳 路夫)