民主主義国家とはどのような国か
牧念人 悠々
ミャンマー総選挙でアウンサンスーチーさんの率いる野党「NLD」(国民民主連盟)が圧勝した。したり顔して「27年にわたる軍政にあきあきした国民が与党に背を向けた結果であった。だが前途は多難である。当選した候補者は学生であったり女性であったりこれまで政治と無関係な人たちである。たとへ過半数を得たにしろ政治のかじ取りは難しい」とブログで書いた(11月10日)。「上院(民族院)の定数224議席、下院(人民院)の定数440議席のうち4分の1(上院56人・下院110人)が国軍最高司令官の指名する軍事枠が存在する国は民主国家と言えない」とも論じた。「これまで軍政でなければ国を運営していかねばならなかった国内場事情があったにしろいびつであるのは変わらない。改革しなければいけないところは少なくない」と述べた。ミャンマーの憲法を見ると、基本原則第6条4項に「真正かつ紀律正しい複数政党制民主主義の発展」を掲げ、第7条で「国家は真正勝複数政党制民主主義を実践する」とある。現在の大統領が軍人出身、軍人議員が4分の1もいる議会では軍の意向が罷り通り、その意のままになるのは必然であろう。これが「民主主義の発展」、「民主主義を実践」になるのか。少数民族の反乱・対立の激化に軍の力が必要なことがわかるにしても軍が表に出るのは好ましくない。民主主義とは言えまい。
今回の総選挙で国民は「変革」を求め、軍人寄りの政治に「NO」を突き付けた。「生活の安定と向上」を望んだのだ。来年3月からいよいよ「民主政権」が誕生する。
「また早く憲法を改めてアウンサンスーチーさんを大統領にできるようにするのが先決ではないか」とも記した。もっともアウンサンスーチーさんは大統領になる気はないらしいく「大統領の上に立つ」と発言している。その際「ロミオとジュリエット」の中の有名なセリフを引用して「バラはどんな名前で呼んでも香はよい」いったという。考えによってはこの言葉は意味深長である。「バラは・・・」のセリの前にジェリオットは恋しい人が敵の家の息子ロミオと知って「おお、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオ?」(O ROMEO,ROMEO! WHEREFORE ART THOU ROMEO?)と言う切ない言葉があるのだ。大躍進を遂げた「NLD」の代表のスーチーさんが大統領に就任しなくてはこの総選挙は画竜点睛を欠く。今の憲法では第9条に大統領、副大統領の要件が7項目もあって其の6項に「本人、両親、配偶者,子供とその配偶者のいずれかが外国国民であってはならず」とある。イギリス人の東洋学者と結婚し2子を産んだが子供がイギリス人であるためアウンサンスーチーさんは大統領にはなれない。この条項はスーチーさんを大統領にしないために設けられたものと言われる。憲法改正には連邦議会議員総数の20%(332人)の賛成があれば改正法案を議会へ提出できる。ノーベル平和賞受賞のアウンサンスーチーさんの大統領が実現できて初めてミャンマーの民主主義政治が始まったといえると思うのだが…。