銀座一丁目新聞

茶説

ノーベル賞受賞に感あり

 牧念人 悠々

ノーベル賞医学生理学賞、物理賞と相次ぐ日本人の受賞に日本中が沸いた。私もテレビにくぎ付けになった。ブログ「銀座展望台」(10月6日)に次のように書く。『ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智さん(80)は実によい顔をしている。謙虚さがにじみ出ている。祖母は「人のため、世のために役立つことをしなさい」が口癖であったという。特許料(250億円)を大学の施設づくりに、美術館新設に寄付するなど社会貢献に尽くす。大学出てからの社会人スタートが夜間高校の先生だという。そこで働きながら学ぶ高校生の姿に励まされさらに大学院で学び研究者の道に進む。亡くなった奥さんに感謝し微生物に感謝するその人の姿に”神”を感じる。開発した薬剤『イベルメクチン』はアフリカで感染症治療に大きな効果を上げた。「アフリカを救った」とまで激賞された。友人の一人が「ノーベル平和賞ではないですか」と聞き返したのも無理のない話である』

大村さんは困ったり悩んだりした時には「どちらが人間に役に立つか。どちらが世の中のためになるか」を考えて判断を下したという。これと同じように「判断に迷ったら徳義を採れ」と言った武人がいた。また「判断に迷ったら損する方を採れ」と説いた経営者もいる。

友人霜田昭治君は次のような感想を抱く(10月6日メール)。

『銀座一丁目新聞ブログ「ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智さん(80)」拝見。
大村さんは40歳前後の研究が今回評価されたと伺っています。彼に限らず理科系のノーベル賞は若い頃の業績が対象になっているようです。
 厚生労働省の『21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21」』によると、人生を「幼年期(育つ)」「少年期(学ぶ)」「青年期(巣立つ)」「壮年期(働く)」「中年期(熟す)」
「高年期(稔る)」の6段階に分けています。壮年期は25歳~45歳、広辞苑では年齢に触れていませんが「血気盛んで働き盛りの年ごろ」とあります。
私も顧みると壮年期、特に後半ごろに、時に上司に食って掛かりながら長期的なビジョンの下にいい仕事が出来ました。実現には勿論理解してくれる上司に恵まれることが必要不可欠です。良い上司とは自分は最早壮年期のバイタリティーはないことを自覚し己の志と心を一にした壮年期の部下によい環境を与える資質が求められます。
 田中角栄の日本列島改造論は壮年期の小長 啓一さんが裏方でした。
明治維新、士族の反乱、2.26事件など昭和維新、石原莞爾の満州、岸信介の満州経営なども壮年期の人達が中心でした。昭和維新や岸さんが満州経営の手本にしたという北一輝の著作も37歳ごろに書かれました。
 一つ問題は上司の中高年期の人達がしっかりしていないと下剋上を惹き起します。 最近陸士30~34期の戦後の回想記を読むと「壮年期」を過ぎて統率力の資質を問われる「中高年期」の人材に問題があったことを痛感しました。
ダボス会議後の安倍首相新聞記者会見での失言問題から私は安倍さんの脇がいささか甘いのではないかと心配しています。彼の志を支える壮年期の人材に注目する所以です』

私は別に賞をいただなくても人のため、世の中なため尽くせばよいと思う。その人がこれまでしてきたことが顔に現れるのは不思議なことだ。大村さんの顔は”世のために尽くした”と言う温和な表情だ。40歳過ぎたら自分の顔に責任を持てと言われる所以なのかもしれない。