銀座一丁目新聞

 

花ある風景(565)

並木徹

小山峰子さんの絵本「いのりの石」を伝えていこう

今年「広島原爆忌」(8月6日)、「長崎原爆忌」(8月9日)は70年を迎える。今年1月1日号で本紙は「戦後70年に感あり」と核軍縮に触れた。 くどいようだが書き出しだけを紹介する。『「歴史のもっとも大事なことは、共感ということだ」と言ったのは評論家の福田和也さんである。「自分につながる、今、ここで生きている自分にとって他人ごとではない事柄として、過去を振り返り、その実感のなかで、前の世代との絆を確認すること」と敷衍する。私が共感するのはローマ法王の昨年11月30日の発言である。フランシスコ・ローマ法王は来年が第二次世界大戦の終結から70年を迎えることに関連し、世界に多数の核兵器が残っている現状について「人類はヒロシマ、ナガサキ(の被爆)から何も学んでいない」と述べた。法王は「原子力エネルギーは多くのことに役立つが、人間は森羅万象と人類を破壊するために使った」と核兵器の開発・使用を批判。広島、長崎への原爆投下後、「人類は核問題について基本的な事柄も定められないでいる」と語り、国際社会の核軍縮への取り組みの遅れを憂慮した』。
日本は今後とも辛抱強く核廃絶を世界に発信して共感の輪を広げねばならない。このほど詩人のこやま峰子さんが出版した絵本「いのりの石」―ヒロシマ・平和の祈り―(絵・塚本やすし・フレーベル館)はその役割を担うひとつである。「いのりの石」は爆心地から200m離れていた相生橋付近で使われていた市内電車の敷石である。その敷石200個にみんなが観音様を彫り、その下に「FROM HIROSIMA」と刻んだ。こやま峰子さんは綴る。「数年後、わたしたち しき石200こは、 平和の いのりを うけとめ、母親のような やさしい ひょうじょうに うまれかわりました。やさしい ひょうじょうの おくに『もう 決して 戦争はしない』という、強い ちからを ひめています」
「いのりの石」はペルー、エクアドル、メキシコ、ニカラグア、キューバ、コロンビア、コスタリカ、ジャマイカなどに贈られた。受け入れてくれる国にはどこにもゆく。フィリピン、タイ、ニュージランド、タイ、オーストラリア、アラブ首長国連邦、コートジポワール、ケニアなどにもいった。「いのりの石」が贈られたアイスランドでは毎年、広島、長崎の原爆で亡くなった人々のために灯篭流しをして平和を祈り続けている。この絵本の結び「国をこえ、時代をこえ、平和は うけつがれていくでしょう。 いつまでも いつまでも。これからも ずっと、平和が うけつがれていくことがわたしたち 広島の いのりの石の ねがいです」
(I see peace in Their mind,and I cannot stop praying that the peace I am enjoying now be passed on generation after generation. It is our ultimate wish that peace will continue Always, Forever )