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民主主義と結論のつけ方
牧念人 悠々
大阪都構想を掲げ住民投票で結論を得ようとした橋下徹大阪市長(45)が敗れた。大阪府知事、大阪市長を歴任した橋下さんは府、市の二重行政の無駄使いと効率の悪さに気が付き「都構想」を提唱した。昨年の10月府と市の議会でその構想が否決された。橋下さんの政治生命をかけた政策目標であったので、ならば住民の意志を聞こうと「住民投票」に出た。その差1万741票であった。橋下市長も潔く負けを認め、民主主義の良さを絶賛した。「都構想」はいいアイデアである。政治の世界ではたとへ良案であっても多数決で否決される場合が少なくない。はたして政治の世界ではこれでもよいのであろうかと疑問に思う。
実はアイデアの3原則と言うのがある。
1. アイデアはわかる人にしかわからない。
2. いいアイデアは会議にかけるな。
3. みんなが賛成するアイデアはつまらないアイデアである。
昭和38年11月9日、国鉄鶴見事故が起きた時のことである。週刊誌『サンデー毎日』は死者160人の「全調査」を掲載して話題を呼んだ。以後「全調査」が流行語となった。この時、担当デスク、編集部員の多くが反対した。だが編集長は「編集長のおれがやりたいんだからやれ」と指示して企画が実現した。
企業の世界ではこれが通用するかも知れないが政治の世界で会議にかけないわけにはいかないであろう。だから多数派工作が必要となる。昔は裏工作がうまい人がいた。苦労人もいた。あとは機が熟すのを待つほかない。その意味では橋下さんはせっかちな人なのかもしれない。
戦争の際の指揮官の決断と作戦会議はやや趣が違うように思う。「作戦要務令」には「なさざると遅疑するとは指揮官の最も戒むべきところとす。これ両者の軍隊を危殆に陥らしむることその方法を誤るよりもはなはだしきものあればなり」(第10)とある。これは将たる者の不決断を戒めたものだがリーダーたる者目的と方針を決めたらあとは実現の方法だけであるから決断するに躊躇することはない。
イギリスの提督ネルソンがこんなことを言っている。「作戦会議では必ず弱いものが議論に勝つ。いかなる場合でも慎重論者が勝ちを占めるものだ」
ここで問われるのはリーダーの人格、識見、勇気、経歴、経験である。国が危殆に瀕しているほどそのことが問われる。日本の宰相にその時が絶無と言うわけではない。多数決もよいが民主主義にも少数意見の尊重と言う妙薬をまぶしているのを忘れないことだ。橋下徹市長の敗戦の記者会見をテレビで見ながらあれやこれやいろいろなことを感じた。
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