道場主今月の一言

(写生)「生を写す。神を伝えるという意味」 (小林秀雄)

銀座俳句道場 道場試合第23回決着!!  

2月の兼題は 「風光る」 「残雪」 「二月尽」でした。

 春寒、お大切に。    (谷子)

 

 全身を声にしているような、子供達のエネルギーが、「風光る」で、きらきらと輝いて溢れています。

 

 「残る雪」の設定が、見事でした。

 

 河口の早春風景。水の輝きと、風の輝きと。

【入 選】

地球儀の回りすぎたる二月尽    だりあ

車椅子押す看護婦や風光る     とみい

幼子のもの云い初むや風光る     洋光
ジャンボ機の着陸姿勢風光る     清七
石の面笑顔とみえて風光る     吐詩朗

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

残雪や夜半のあかり研究室     瞳夢
      夜半のあかりの 
黒土のマグマ溜めいる二月尽

  
 大鍋に如月の湯気や子供会     清七

残雪や幌平橋のまちぼうけ     だりあ
 雪像のくちばし丸く風光る

 川岸の櫻膨らみ二月尽       正己
 残雪や風も冷たき上高地
  二句とも、実際の景なのですが、季語が重なります。
  殊に二句目は「残雪」「冷たき」と丁寧過ぎました。
遠眺の阿蘇の山々風光る

 出雲路の掌にざらつきし残り雪   吐詩朗
藤戸寺のまだかたき沙羅二月尽

残雪の山見えて来て旅心地        とみい
底見えしハンドクリーム二月尽
  
道拓けて旅立つ孫よ風光る。      泥臥
 残雪をなおも汚してベル鳴らす
   何のベルかが判ると、もっと一句が生き生きしましょう。
 獄の絵の終わりなきまま二月尽

 残雪のおまつの墳に詣でけり     洋光
彩の増えゆく花舗や二月尽

 群れ雀スイングして舞う二月尽    せいじ
 風光る薄ら氷透けて青き水草    
   このままの情景だったのでしょうが、「風光る」「薄氷」「水草」
   と季語が三つ。こうなると、俳句っていささかやっかいですね。
   この中から、どれをセレクトするかを考えましょう。

 残雪のアルプス展望和みおり
   和む、とまで言わずに、その感じが伝わるようにしましょう。
   「一望すこの残雪のアルプスを」


 強風に舞うサァ−フィンや風光る   竹雄
   「強風」「風光る」風が二つもあります。
   「波の間に舞うサーファーや風光る」

残雪の山なみ遠く甲斐の国
 誕生日今年は無くて二月尽
   閏年のお生まれですね。

早春のガラス問屋に光あふれ     中土手
   美しい一句です。「早春やガラス問屋に光生(あ)れ」
裸木の樹齢二百年という歳月     
木々の芽の産毛を撫して風光る

キナ臭き嘘つき合えり二月尽     倭文子
縞をなす残りの雪や茂吉の忌      
   「残雪の縞なしており茂吉の忌」

風光る朝の掃除機かけており      意久子
   素直で、いい句です。これでよろしいのです。
   まず、真直ぐな目で、周囲を見てください。

秘め事の悟られまいか二月尽
   ドキッとさせる一句ですね。
残雪や弟逝きて五十年

 玉三郎七変化舞台二月尽        宏志
由布岳に残り雪仰ぎ退官す
   「残雪の由布岳仰ぎ退官す」
 二月尽季節の気配あわただし

 残る雪載せて棚田は天目指す      よし子
   少し理が勝ち過ぎました。
風光るお下げの少女駆けて来る
   下五は「駆けて来て」と。
 廃船を囲んで広く雪残る

 ようやくに婆杖だしぬ二月尽     花子
うしろから押されしままに二月尽
   結構です。
 ペダルこぐにきびの子等に風光る
   「風光るペダル漕ぎゆく十五歳」

まなじりに生るる痒みや二月逝く     章司
   なかなか面白い感性です。
 日程の二転三転二月尽
 残雪に空のかそけき遠嶺かな
水茎のやさしき封書風光る

生徒らは様々に飛翔して風光る           さと子
   悪くありません。「生徒らの飛翔百態風光る」
 残雪に残雪重ねて歩む路
 まだ甘くジャン・ポール・エバンの二月尽 
   ジャン・ポール・エバンと二月尽と。付かないとも付くとも。「の」が問題でしょうか。

献血に呼び込まれいる二月尽       もとこ
 早仕舞い夫の帰宅や二月尽      
高空の鳥の旋回風光る 

風光る上りホームにあづさ待つ      陽湖
   結構です。下五は「待ち」と。
 鈴蘭の眠る一隅雪残る
二月尽さあ良い運気いただいて 
   こちらまで元気になりそうです。

 走りくる 愛犬の瞳 風光る      ふづき
 残雪に 屈して光の 吾に届き
海ずりの 竿の一瞬 風光る

宿帳の余白残して二月尽               幼月
 残雪のあちこち覗く岩の貌
 畦黒く温もり満ちて風光る

鳩の目の巡るおちこち風光る      姥懐
 風光る土掘る姥(ばば)の頬被り
 残雪の己が記(しる)しの轍(わだち)かな
 残雪の泥着る鼓動含みけり
 二月尽白寿の長老逝きにけり
重き衣(きぬ)吊るせしままや二月尽
         
 誕生の花愛でつつニ月尽         水蓮
 逢瀬の夜喧嘩別れの残り雪
   「諍いしことも逢瀬や残り雪」
 無になれぬ心騒がし二月尽

 臨月の近きむすめや風光る      二穂
   「産み月に入りたる娘や風光る」
残雪の底を流れる渓の音
青空にビル高く伸び二月尽

風光るお地蔵様の赤頭巾             あきのり
 もどかしき夢をまたみて二月尽
 池の面を風やはらかに滑りきし
   「風光る池の面を滑りきて」

 二月尽心の旅をしてる間に        山野いぶき
風光るわたしの心を置き去りに
 風光るはずむ心で早歩き

 雪残り 影黒々と 橋渡る               河彦
風光るつめ紅く染め猫と居る
   いささか材料過多。下五再考

 友語る戦争止めよ風光り                高木みどり
 残雪の山肌に描く種まく人
   「描く」がいささか不分明。
人逝きてこころかじかむ二月尽

風光る迷い鳥のホッピング                小島弘子
 残雪や空昏れゆきぬ東より
いま一度繰る校正紙二月尽

 風光る神田川ゆく曳航船      美原子
二月尽夭折画家の絵に見入り
   出来れば「見入り」を再考。
 二月尽米寿の膳に箸

棟上げの棟梁は女風光る         美沙
   元気が出る一句。「棟上は女棟梁風光る」でも。
 ヴィーナスの生れそうな海風光る
 閉店の貼り紙残雪のあばた
 きじばとの眠たき声や二月尽
二月昏れる反戦行進灯かかげて
   「二月尽く反戦行進灯を掲げ」

 雪残るせせらぎ澄みて魚のかげ    蒼流
スキップの子ら駈け抜けて風光る
 残雪や喜び叫び子らはねる

 戦争か否か問いつつ二月尽        悠々
風光る水の身になり流れたき
   「水となりて流れたき身や風光る(二月尽)」

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