銀座俳句道場 道場試合第19回決着!! 10月の兼題は 「行く秋」 「秋時雨」 「夜食」 でした。 多急に寒くなりました。ご自愛下さい。
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美しい一句でした。ゴンドリエ=ゴンドラの船頭の美声が、ベニスの運河をゆるやかに流れて、秋行く風情を濃いものにしています。 |
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秋時雨が過ぎる中、捨てられたビニール傘がいっそう冬近い雰囲気を伝えます。 |
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【入 選】
秋時雨ペットボトルの羽根車 章司 |
行く秋の梢の上なる雲一片 ふづき |
順を待つ就職相談秋時雨 もとこ |
【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)
行く秋や 呆けて佇ちぬ九十九里 鳥取祥子
○秋時雨 目鼻顕わる同祖神
道祖神
勉学の背に一声の夜食かな
行く秋や朱色が滲む煉瓦塀 中土手
悪くない一句ですが、「滲む」は、伝達性いささか不足。
行商の姉さん被り秋時雨
夜食とる団欒の影なかりけり
行く秋や嵯峨野めぐりの一人旅 松村竹雄
どうも「一人旅」というのは演歌っぽいですね。
○智恩院の山門仰ぐ秋時雨
○ひとり身のコンビニ弁当夜食かな
現代の夜食風景ですね。
若さゆえ夜食の「や」の字は痩せるの「や」 ちあん
解るような、解らぬような。
○行く秋を観光バスの連なりて
○一日を終えしやっちゃ場秋時雨
○寂しさの音も連れ来る秋時雨 花子
寂しさを「音」で捉えたところ、結構です。
○さよならと告げて悔やみし秋時雨
海隔て共に見上げる秋時雨
○秋時雨いよよ傾く斜塔かな 山本 洋光
結構です。この調子で。
○夜々夜食運びてくれし亡母のこと
夜食の子 さあ勉強が 夢の中 意久子
治療終え 扉開けるや 秋時雨
あまり丁寧に時間経過を書かなくてもよろしいです。
訪ねた折にしてみましょうか。
「秋時雨重き扉の治療院」
○行く秋や 居眠る母の 背(せな)まるく
○秋の夜 居ねむる肩を 揉み呉し
ゆく秋や細雨かすみて村ありき 蒼流
傘の花街に沈んで秋しぐれ
「秋時雨街に沈みし傘の花」
半世紀波乱しみじみ夜食かな
「半世紀の波乱しみじみ夜食かな」
行く秋に 日ざし追いかけ 子ら集い 土橋喜代
「行く秋の日差し追いかけ子等集う」
一日の花房 散りつつ 秋ゆけり
行く秋に友の両手に血管の浮く
「行く秋や友の両手に血管浮く」
行く秋に里の野道も繁りけり 西尾正巳
秋時雨生駒の山も遠くなり
「秋時雨生駒の山の遠くなり」
○老い二人話しも無くて夜食食う
○行く秋や寄添って往く長き影 方江
黙々と子等巣立ちたる夜食かな
これでは「黙々と子等が巣立った」みたいです。
西尾さんの作品と共通の思いかと存じます。
「子等巣立ちたる後の夜食の黙(もだ)深し」
○独り居て古書読む窓辺秋時雨
行く秋や 古里で待つ 彼の地の子 古井一歩
思いはわかるのですが、「古里」「彼の地」がいささか重なり過ぎの感。
秋時雨通り過ぎれば虹の橋
新宿御苑菊花壇に出合う秋の名残
「新宿御苑秋の名残の菊花壇」
○行く秋や畳に足を投げ出して 河彦
○通夜帰り夜食の膳に面影が
秋しぐれ 隠れるものも なきままに
ラガーらのその縞しまの蹴り上げる 清七
○秋の雨リハビリ病院欧米風
リハビリや介護の二食夜食喰う
「リハビリや介護の二食と夜食喰う」
行く秋やわが名知る人なき家並み 美沙
○秋しぐれ心の森の深くなる
○インク匂う地下食堂の蟻の夜食
「蟻のごと並び地下食堂の夜食」
秋深し男は踏み台イチ、ニ、サン 水蓮
最初、踏み台を使っての健康法かと思っていましたが、
どうも二句目を読むと、そうではないようで。笑いました。
一寸かわいそうですねー。元気な句を書き続けてみてください。
秋深し男は踏まれて強くなる。
秋時雨受信メールをのぞきおり 山野 いぶき
「秋時雨時折メール開きおり」
秋時雨ブーツに水が入り込み
冷凍のうどん温め夜食かな
新幹線窓がきりとる秋時雨 城生子
電源を切り忘れをる秋時雨
寮生にやがて夜食と女性論
「夜食かな寮生たちの女性論」
○おもむろに覚め来て猫のいざ夜食 章司
もはや家主のような猫ですね。
行く秋や入日の白きビルの街
○行く秋や音確かめつサキソホン
「行く秋の音確かめつサキソホン」
行く秋の指針を止めたし迷い路 さと子
弾丸に怯える空に秋時雨 (ワシントンに住む娘へ)
「弾丸に怯える空や秋時雨」
○夜食だけが親友と言ふ女子高生
サ−クルの 旅は夜食で まとまりし ふづき
○古いすの朽ちてゆくあり秋時雨
鬼女紅葉としふりし岩屋秋時雨 (せいじ)
○鬼女紅葉むかし語るや秋時雨
「鬼女紅葉」という固有名詞でしょうから、「紅葉」「秋時雨」の季語の重なりは、
気になりません。
行く秋や葉付き銀杏の散り放し
夜食喰う風鈴の音の寒
「夜食」「風鈴」季語が秋と夏と重なります。
○秋行くやいつも帰りをせかされて だりあ
行く秋や大河の水の騒ぎをり
○ゆく秋やポストの角の待ちあわせ
「ゆく秋やポストの角に待ち合わす」
朝の市 訛りもふふむ 秋時雨 姥 懐 (うばふとこ)10月入門
「秋時雨訛りふふめる朝の市」
○つましさも 馴染みてひさし 秋時雨
○諍いの 後は はすかい 夜食かな
大息や 窓を曇らす 秋の果て
○日の暮れやまたも降り出す秋時雨 もとこ
○大法会終えて秋行く本門寺
○行く秋やひとり茶をいれひとり飲む とみい
カップめんポツリ卓上夜食用
行く秋やかねの旗竿紐の音 吐詩朗
「かねの旗竿紐の音」がよく解りません。
○夜食より闘病談義古稀の会
そら耳の蛇の目の唄や秋しぐれ
「蛇の目の唄」は、蛇の目傘に降る雨の音、ということでしょうか?
懐かしい幻聴でしょうか?
行く秋や 炎からめる蜘蛛の糸 泥臥
夕焼けの景なのでしょうか。それとも焚き火でしょうか?
秋時雨 酔うようで酔われぬ 一人酒
「酔うようで酔わぬ酒なり秋時雨」
ひそやかに 忍ばせておきし夜食失せ
○行く秋をウィーンの森に置いてきた 坂元宏志
(帰国したら日本はまだ初秋)
旅吟沢山に、記念にお残し下さい。
秋しぐれウィーンの気ぐらいそぼ濡らす
○行く秋をドナウの波と惜しむかな
○窯守りの独り手酌の夜食かな よし子
○笹叢の一葉一葉に秋時雨
「笹叢の一葉一葉よ秋時雨」
○行く秋にさよならと言い手を振りぬ 高木みどり
○秋時雨鬼女のごとくに濡れ歩く
夜食鍋母の仕草をふと思い
掌に熱さ残れり秋の行く 小島弘子
何の熱さか。多分手を握り合った熱さでしょうが。
○さざ波の湖を漂ひ秋時雨
国境を描かぬ地球儀夜喰む
○行く秋や鏡に写す薄き胸 芽衣子
○いつまでも華の独身秋時雨
フレディの深き睡りや秋暮るる しづ子
葉っぱのフレディでしょうが、解らぬ方も居るでしょう。
○秋時雨建築現場の音止まず
○ナースキャップの働き止まり夜食らし
「ナースキャップの姿が見えず夜食らし」
行く秋の セピア茜に 染まりゆく 陽湖
○帰途の夫どのあたりまで秋時雨(見舞いの夫をベッドで見送る)
○夜食取る父に一日を語る我娘
幸せな風景、とみえますが、多分お母様へ話す分も、ということでしょうか。
○行く秋や栗鼠遊びをる大覚寺 古川孝子
自家園の焼き芋つくる夜食かな
家事忘れピアノ練習秋時雨
「秋時雨ソナチネを弾く主婦の昼」
寡黙こそ拉致は悲しき秋時雨 悠々
行く秋や怒号渦巻く拉致の海
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