銀座俳句道場 道場試合第14回決着!!  

5月の兼題は 「さつき(5月)」 「南風」 「雷」 でした。

 6月16日のNHK教育「俳壇」ゲストは中間市の小説家  村田喜代子さんです。一寸面白いと思います。

 「はたた神」とは「霹癧神」と書いて、「雷」のことです。
 遠くから近づいてくる雷鳴を「幼き音より」と捉えたのが手柄でしょう。

 雷鳴の中の点滴。動きの取れない状態と心理が伝わります。

 南風に誘われるように髪を切る。その南風に遠い海の香を感じ取っているのは、作者の繊細な感性です。

【入 選】

春ことばことば五月が青くにおう    青木由弥子
海鳥の吐き交うことば白南風        清七
茶畑を抜ける近道大南風          よし子
五月なら白糸草に会えるかも        さと子
南風 漢方薬の匂いけり          芽衣子
ウインドに名刀の反り初夏の雷      小島弘子
もう何もしたくない日々五月かな    高木みどり

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 雷や 大氣震わせ 滝落ちぬ          蒼流
   「雷」「滝」共に季語です。なるべく重なるのを避けて
   推敲してみましょう。そのことも、作句の楽しみです。

 南風(みなみ)吹く 緑破って 塔立てリ
  「南風」「緑」もやはり季語。何故「季重なり」を避けるか
  というと、「季語」には多くの情報が入っていて、「南風」だけで
  緑の情景も想像されるからです。

展覧会 ひしめく上野 月かな

 雷で 家族揃った 蚊帳の中          葉笑
  これまた「雷」「蚊帳」季語です。
 雷で 久方ぶりに 抱きつかれ
  「地震・雷・火事・親父」に強い選者としては見習いたいーー
  と思いました。

越後では 雪の始まり 雷で
  これを別名「雪起こし」と言って、季語になっています。

 酔っぱらって何が悪いんだ五月         ちあん
  そうだ、そうだ、と他人の旦那さんには申します。
  破調が、酔っ払いのクダを思わせてお上手です。

降り立てば日光江戸村南風
  「日光江戸村」の、そしてそこを訪ねた人々の気分が
  巧く伝わります。 

 遠雷や仁王立ちする四番打者

 太棹のはたと止みたり大南風          西村倭文子
古都あればカリヨン響く聖五月

 さつき晴 川辺のゴルフ プレー待ち      三石陽湖
  少し変えてみます。「川野辺のゴルフプレーや五月晴れ」
 佐千夫生家 茅葺き屋根を 南風過ぐ
  いい材料です。「大南風8大南」左千夫正貨の茅葺屋根」

忘れたき一日の果て夜の雷           美沙
江戸切子のような青空五月来る

 なつかしの寮聖五月              清七
  「なつかしの寮歌三番聖五月」
立ち並ぶ屋上クレーン日雷
 
 風やんで 満月の下 さつき酔う        沙羅双樹
  「風やんで五月の月の下で酔う」
人間など 知ったことかと 雷鳴す

風五月ブラスバンドの音合わせ         竹男
 黒南風も吹かず今年は入にけり
  「梅雨」に入ったのでしょうが、いささか省略し過ぎ。
原発の疑心の闇に雷雨かな
  疑心の闇の

遠雷や世辞言ふ人の紅き唇      よし子
病二年風わたりゆく五月かな     
  よし子さんの作品、揃っていました。段々とご回復の
  感触が伝わります。

 五月雨に川生き返る鼓の音      坂元宏志
雷生まる雲の遊園地観覧車
  遊園地の大観覧車雷生まる
 雷神よ雲に彩織る果報者

デートですか南風に漕ぎだす車椅子  さと子
  楽しそうですね。
 激怒する雷に追われて飯を炊く

 雷が追いかけて来る帰り道      芽衣子
用水の流れ豊かに さつきかな

五月雨や切符ながめてるひとり旅   美原子
 水田の鏡くもらす南風
  「水田」「南風」共に季語。「風吹いて水田鏡を雲らせる」。
 雷電や二重の虹を横に切り

 五月なれど 風冷たくて 憂き世また  河彦
美しき 五月よさらに 美しく
   普通は避けたい「美しく」も、ここまで言うと、勝!
 はや蛍 闇しみじみと 我が五月
   「蛍」も「五月」も季語ですが、ここでは
   「我が五月早も蛍の出で飛びて」


 隣家からシチューの匂い五月寒     小島弘子
   「五月寒」とは言いません。
   「五月寒しシチューの匂い隣家から」

 南風や鍔の広さに海の色
   「鍔の広さ」ではなくて、刃の幅にして再考を。

 南風の日は口重く草をとる       高木みどり
雷の下あなたの言葉信じない

 追憶のうちに凍りし南風        青木佳之
いつの間にか語彙の増へたる五月の子
 雷の初体験は窓越しに

 南風や ワールドカップは 歴史こえ   古井一歩
 五月空 花咲き乱れ 姿愛しい
遠雷や 亡き母の声 偲びけり

遠雷や髪の重さを確かめる        青木由弥子
 雷迫る吾子の手熱く闇を裂く 


 五月野に佐久の風受け若返る       悠々
  「ひとり来て五月の佐久の風の中」

 

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