道場主今月の一言

(省略)「省略の深きは集中力」 (青雨)

銀座俳句道場 道場試合第26回決着!!  

月の兼題は 「 五月」 「泉」 「新緑」 で した。

 五月台風などで騒いでいるうちに、梅雨の気配になりました。  お大切に。    (谷子)

 

 美しい「恋」の一句です。
 五月は修司の忌。青年の鬱屈と明るさは、五月にふさわしいと言えましょう。
 「さあ、五月」という働く思いが伝わります。
暮らしの中からの作品を沢山生んでください。

【入 選】

新緑や陣屋の跡の虫籠窓        吐詩朗

洋館の五月の窓の少し開き       美原子

五月暑し遠足の列乱れだす       晴子
ミントティ含みて五月始まりぬ     小島弘子
新緑や磨き上げたる家の中       もとこ

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 高原の緑輝き五月晴れ         正己
古の人も汲みにし泉かな
新緑の森に聳える天守閣

 三とせ経ぬ塚の辺に緑したたり     瑠璃
   塚の辺に緑したたり三年(みとせ)経ぬ
新緑に向かひて座せる母の耳
 海光る新緑の木の間隠れに
  新緑の木の間隠れに海光る

新緑や父祖奉納の地蔵古る       吐詩朗
 五月来る漁る故郷の民話本

 しなやかに欅の揺れる五月風      竹雄
 温かき泉あふれる天然湯
新緑の風に吹かれる妊婦かな
   幸せな風景ですね

 草も木も歓声上げて5月来し      洋光
産土の鎮守の森の泉汲む
新緑や温泉卵剥きにけり

新緑にまみれて子らのまわり道     瞳夢
九十九里ただ渺々と風五月
 七百年いきて慈童の泉かな

願掛けの銀貨積もりし泉かな     だりあ
 蝋燭の五月の風のやさしかり

 信濃今五月生まれの色爛漫       陽子
   五月生まれの○○の色――固有のものを入れてみてください。
   爛漫は必要なし。
 静寂の聞こえる泉水鏡
 新緑に入り山裏の高遠へ
   新緑や山に入りたる高速路

 大声で部活の感想五月かな          とみい
 利尻岳名にし負う水甘露泉
 新緑のけやき並木にパン配車    
    「パン配車」パンを運んできた車なのでしょうか?
    こなれの悪い言葉です。
    新緑のけやき並木のカフェテリア


新緑にこもる僧堂豆煮る香        泥臥
 奥まりし路地の見舞いや新緑まぶし
    路地奥を見舞う新緑眩しみて
 泉へと獣ら通う人もあるく
    泉へと獣通える道ありて

上棟幡真横に流れ五月晴            倭文子
 太古の泡泉に出でて皺となる
 新緑をスイツチバツクで押して行く

新緑に清められつつ写経する         花子
 新緑や風は拍手で愛でりけり
    「愛でりけり」はいささかもってまわった表現ですし、
    新緑の風を拍手で愛でにけり

銀座にも新緑ありと樹が騒ぐ

新緑を自転車で追う木場あたり                河彦
 新緑の恵み届きて杯を上げ
 「孫次郎」に逢いたくて五月上京の客 
    風雅なお客様ですね。「客」とまで言う必要はありません。
    「孫次郎」に逢いたしと来て春の雨


去年のこと捨てねば新緑愛でられず      もとこ
   何か心の傷があるのでしょう。さっ ぱりと捨てて、新緑の空気を存分に吸ってください。
 新緑や寺の書院の大玻璃戸 


緑さす大樹は原のど真ん中          晴子
 遠足児腕まくりして五月かな

だぶだふの制服馴染む五月かな        さと子
 山肌の沈黙破り細き泉
 緑さす白磁の球体ピースフル 

九時開店今日のエプロンうす緑       意久子
   よろしいのですが、この「うす緑」は季語にはなりません。
母とむすめの百二十歳の旅五月
 若葉風レアとウェルダン向かいあふ

○五月逝く流行遅れのペット犬         中土手
○緑さす新茶の香りいただきぬ
   この一句はこのままで結構ですが、「緑」も季語であることついでに覚えましょう。    
兵士まつ泉の少女反戦歌  
   結構でした。
   
 億万の砂のマズルカ青泉         章司
新緑や改札口の待ち合はせ
   爽やかでよい句です。
 新緑がオーデコロンの風を生し 

 突風におどろきはねし五月鯉        方江
泉湧くひと葉沈みてひと葉浮く
   泉湧くひと葉沈みてひと葉浮き
新緑の包む参道雨上がる

竹とんぼ五月の空を一巡り         寒明
己が顔幾度も拝み泉端
   己が顔幾度も拝み泉の辺
 新緑の只中うねる列車かな

白き肩見せて街ゆく五月光         二穂
 陽のさして小魚光る泉かな
新緑の街には神田囃子かな
   「新緑」と「神田囃子」は季語が重なります。
   きらきらして新鮮な一句ですから、
   街輝く神田囃子の流れきて


 図らずも 記念日膳の 旅五月    姥懐
    何の記念日なのかが解るように
 大泉 樹海もろとも 掬ひけり
新緑や 窓拭く妻の 腕白し
 白樺の植樹歳経て五月かな          古井一歩
新緑の光まばゆき山の尾根
    「光」と言っているのですから、「まばゆき」まで
    言わないようにしてみましょう。又、「山」「尾根」も重なります。
    〈新緑の尾根 

       
 一枚のめくる空あり五月かな               あきのり
夢を汲む泉とならむエビアンに
     サミットの各国首脳が、この思いを持ってくれれば、と思いました。 
 灯明かりの新緑まとひ夜も寝れず
    〈灯明かりの新樹の夜を眠られず〉

五月晴ハンカチの木の案内板         のぼる
    気持ちのよい一句です。
泉水の寧き響きや分け入りぬ
   静かな泉の佇まいが浮かびます。
   〈泉への道後れゆく安けさよ  波郷〉という句を思い出しました。

 武家屋敷新緑に映ゆ二人旅


 廃村の新緑長江のとどろき          美沙
   長江ダムがテーマでしょう。壮大な計画の中の庶民の暮らし。
   いささか意余って…の感。 

 リクルートの群のまなざし街新緑
 熱沙往く泉の水壷赤きサリー
   〈泉へと赤きサリーの往く熱砂〉
五月生る海の色したガラス皿
   「五月生る」が、少々気になります。
   「聖五月」の方が、と思います。


 新緑に汽笛響かせ消える汽車     美原子
探しものみつかりそうな泉かな

 黒い森の泉変身ドナウ川        坂元ひろし
新緑と風の旅人デュエットす
 廃屋や黒猫の瞳五月闇
   いささか材料が揃い過ぎました。

 五月病みそれいいのよねむる日々    高木みどり
   やさしいメッセージですね。
新緑にこれからという思い湧く
 内苑の泉の音きく光さす
    内苑に泉の音や光さす

 泉掬うスカートの裾びしょ濡れに    小島弘子
新緑やOB記者のデモ行進
   前の上京で、東京駅前での反戦デモ、久しぶりに見ました。
   「デモ行進」より「反戦デモ」とした方が、一句がしっかりしましょう。
   「OB記者」も生きてくると思います。


 五月晴れ絶えて聞こえず子守唄      悠々
 新緑や南無阿弥陀仏君は逝く

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