道場主今月の一言

(社会性)「俳句は人生をかかへた大きな遊び」 (森澄雄)

銀座俳句道場 道場試合第27回決着!!  

6月の兼題は 「あじさい」 「香水」 「風薫る」で した。

 そろそろ梅雨明けでしょう。お大切に。    (谷子)

 

 今月は力作揃いでしたが、この一句の、
内容、表現共に清々とした一句を推します。
 今月は象とキリンが出現しました。大きさから象の勝、というのではありません。
   よく有名人の手形に自分の手を重ねてみたりしますが、深く広い象の足型と、自分の足をのせた後の空間の広がりに、季語がよく働いています。
 額の花は紫陽花より更に静かで寂しさを感じさせます。
 周りを囲む形が、ふいに死後の骨を拾う景を引き寄せたのでしょう。

【入 選】

四葩咲く朝刊にある湿りかな       晴子

風薫るひっぱって干す夫のシャツ     もとこ
  「薫風 や引っぱって干す夫のシャツ」だともっと元気に

紫陽花に雨脚強き日曜日        とみい
薫風や花嫁舟のすべり行く        瞳夢
香水の使わずに減る小引き出し      方江
キャミソールの香水に追ひ越されけり  章司
香水やデパ地下にある風の道      中土手
風薫るキリンは首をなお高く       二穂
紫陽花や鎌倉の闇せまりくる       弘子
紫陽花や不倫という名の恋ありて    瑠璃

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 鞠よりも額あじさいが好きな人         竹雄
香水のちょっとお洒落な君と会う
下り坂相模の海や風薫る
  下り坂に相模の海や風薫る
   
若き日の姉を偲びぬ濃紫陽花          瞳夢
水はじく若さ香水おののきぬ
   「おののきぬ」を再考

  風かおる薫正の長女花嫁に             意久子
遠き日のパリの香水箪笥奥
   遠き日のパリの香水抽斗に
  あじさいと客を迎えて歯切れよし
   「と」は、あじさいと共になのでしょうが、解かり難いです。

てまり花見え隠れする岬端      清七
  香水や前日の妻もケヤの里
   「前日の」が解りにくいです。「ケヤ」は「ケア」でしょう。
風薫るタクシーの待つ車寄せ

  香水やエレベーターを振り返る                  とみい
  ライスシャワーブーケ舞ひたり風薫る 
     ライスシャワーブーケ舞ひたり薫風裡

アジサイや亡母の植えたは慈愛色          花子
  紫陽花や母の植えたる慈悲の色
  人去りてアジサイやけに花つけし
  アジサイや見えざる色を秘めており

高原の阿蘇の眺望風薫る              正己
  紫陽花や雨の重さに耐えかねて
  香水の匂い渦巻くバスツアー
   香水に攻められているバスツアー

風薫る素足で歩む青畳               方江
  あじさいや色とりどりに傘の列

 あぢさゐやつぶやいてゐる人ばかり    だりあ
月並の恋もよろしきてまりばな

源平の戦の谷に風薫る                    龍子
  傾れ咲く山紫陽花に声しきり
   「隠れ咲く」でしょうか?
  木暗さに姫紫陽花の耀よえり
   「木暗がり(こくらがり)」とは言いますが、こぐらさは「小暗さ」と書きます。
   歴史的仮名遣いでは「耀へり」

  立ち去りて香水匂ふ老婦人
    立ち去りてよりの香水老婦人

  子等の描く紫陽花いつも藍一杯       吐詩朗
  「一杯」を再考。
香水のこの香いつかのハンカチに 

大江山生野の道の風薫る          中土手
  色街をあじさいで折れ花林糖
   「あじさいで折れ」がどういうことなのか?

  明月院姫あじさゐの濃さ増せる                のぼる
   あぢさゐの濃き色増せる明月院
香水の香とすれ違ふ丸の内
  沙羅の木の五弁の白や風薫る
   「沙羅の木の五弁の白や風通る」沙羅の花のことですから、風薫るは避けましょう。

  砂あらし鎮まる水辺風かおる          泥臥
  紅(べに)淡き人発つ夕べミツコかな
  紅淡き人の残り香ミツコかな
  残り香にあじさい染まる時惜しみ

はじらひの色から咲きぬ七変化          もとこ
  紫陽花や花持たぬ葉は闊達に

  風薫る乙女も今は母となり           さと子 
  あじさいを見に行こうかとかすかな日
   「かすかな日」を再考
行きずりの若さ弾けてオーデコロン

風薫る父の退院真近かな            晴子
  欲張ってどっと疲れて香水瓶
   何に欲張ったのかを先ず伝えましょう。

  風薫る安曇野にプチ美術館           洋光
あじさいの藍深めけり昨夜の雨
香水の香を残しけり通夜の客

  GIと香水の女の終戦後            二穂
  紫陽花や藍の階調だんだんと
紫陽花やうかぶおんなの立ち姿

かたまりてくらやみ守る四葩かな        あきのり
  傘重し あぢさいの花かかるごと
  薫風や 髪は寝ぐせをつけしまま
     薫風や寝癖のままの髪で出て
  中老年 香水重し尻重し
     ついつい笑いました。

  手櫛せし少年の眼 風薫る       姥懐
  壜ごとのごくごくごくと額の花
   瓶のまま牛乳を飲む額の花
  風生(あ)れて香水の達(とう)る美(は)しき人

咲き初めしあじさい真白友癒える         美沙
薫風と少年吊り橋を揺らす
  挑む瞳の少女香水というよろい
   「挑む・瞳」「香水という・よろい」いささか書き過ぎ

  むくつけき男足を止め額の花           美原子
   むくつけき男が過る額の花
スケッチを坊やにほめられ風薫る
  香水の残り香よぎり下駄の音

  よろこびの花まりあじさい誕生日         みどり
ノンというカルバンクラインナンバーワン
洗髪かわきやすきよ薫る風
   洗い髪かわきやすきよ風薫る  尚、「洗い髪」でけだと、夏の季語

  見詰め居るをんなドームの香水壜        弘子
風薫る砲台跡に親子連れ 

紫陽花や開演五分前のベル            章司
  風薫る太極拳の蒼い影
  香水や蛇の目の傘を閉ぢしひと

  紫陽花やリストラの悩み語りけり        古井一歩
  リストラの悩み語りて濃紫陽花
  しぶきあげ流れる川面風薫る
  紫陽花や雨粒そのまま咲き満てり

  塀越しのあじさい覗いている目いくつ    寒明
香水や色即是空と言ってみる
  下駄の音薫風にのり湯屋通り

  四葩かなふるさとの駅なくなりぬ     よし子
    おたくさや故郷の駅なくなりぬ

事件簿のページに残る七変化        坂元ひろし
    押し花なのか、イメージとしての紫陽花なのか。
    被害者は女性、それもいささか水商売系の…などと広がります。

  雨に打たる男の胸の七変化
  あじさい花廃屋の塀の独り占め

  風薫る鬼平を読む女一人    河彦
  香水に男五十の身をやつし
     中年の恋?でしょうか。それとも早とちりには女装趣味?なんて思われそうです。
     「香水や」、または、季語を業平になぞらえて「かきつばた」とするか、
      50男の哀歓を込めて「鮎の宿」などと。

  風薫るジョキングの足颯爽と

  香水の残り香の中エレベーター    倭文子
  船頭の「ごんしゃんの唄」薫る風         
   船頭の「ごんしゃんの唄」風薫る

 がくあじさい宙(そら)に浮かびて咲きにけり   瑠璃
紫陽花や海鳴りを聴く夜の駅

  あじさいの忍び泣くごと雨の音          悠々

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