銀座俳句道場 道場試合第15回決着!!  

6月の兼題は 「青葉」 「梅雨」 「鮎」 でした。

 

 計らいのない素直な一句です。静かに降る雨が見えるようです。

 負けは負け、しかし、という思いが伝わります。体内に取り込まれた鮎のしなやかさが、次への意欲を支えるでしょう。

 美沙さんはますますその句境を深くしているようで、楽しみです。
 あの世でも釣りを楽しんでおられるでしょう父上の姿が思われます。

 術後二年、手術をした青葉若葉の季節に会うと、ふいに当時の思いが生々しく湧き上がるでしょう。そして二年目の今は、回復への喜びが加わっていることが「地平線」によって伝わります。

【入 選】

何はさて家族の絆鮎の宿          ちあん
リサイクル市(いち)賑わいて走り梅雨    蒼流
譲られし鮎の紗合わせ 母卆寿        陽湖
梅雨の森に鰓呼吸する魚になる      小島弘子
「満開の森の陰部の鰓呼吸  八木三日女」という前衛俳句作品があります。ご参考に。
梅雨の夜 私がここにいる不思議     沙羅双樹

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

勤め上げ 昼の青葉に 胸を張る     葉笑
  退職す昼の青葉に胸を張り

梅雨寒の岬渋滞路線バス         ちあん
 どこからか地球の叫び青葉風       〃

梅雨兆す逢魔が時の曲がり角       西村倭文子
 鮎を呑み誇り崩さず帰舟する         〃
 青葉風オルガンジャズに身を任す       〃

 青葉ぬけデスクを照らす温暖化      さと子
梅雨空に心模様を重ねつつ         〃
 水しぶきキララと落ちて鮎返り       〃 

 古池や鏡となりて若青葉         蒼流
白神(しらがみ)や 青葉燃えたつ大地踏む 〃

 青葉雨五百羅漢の路険し         清七
海鳥のことば激しく梅雨晴間        〃
 天領に戦時仲間と鮎囲む          〃
  戦友と集う天領鮎の宿

 水底の青葉のしづく飲み干しぬ      星瑠璃子
啼く鳥の声朗らかに青葉かな        〃
 終の床あえぎつつ臥す青葉まぼろし     〃
  終の床に青葉まぼろし顕れよ

青葉して華山自刃の地を尋ね       竹男
  青葉光崋山自刃の地を尋ぬ 
 梅雨の街傘いろいろに雨の色        〃
 冷蔵庫の奥に眠るは目刺し鮎        〃

 青葉闇この先に大学という異界       美沙
  大学ちょう異界この先青葉闇
 遠い国へ心さすらう窓青葉         〃
 滑り台を駈け上がる子ら青葉茂       〃
 梅雨深し野仏の召す赤い洋傘(かさ)    〃

 鮎菓子を ほしがる姉に おくりつつ    水蓮
梅雨晴れに 大声張り上げ うたうタイ   〃
  「タイ」は博多弁でしょうか? 
 目に青葉 一雨ごとに 青さまし      〃

 鳴りそうな 程良い青葉 一葉選り      陽湖
プーさんの 傘元気良く 梅雨の道      〃

 全身を染めるが如き青葉かな         芽衣子
梅雨寒や猫と鳥のけんかあり         〃
  梅雨寒や猫と烏がけんかして
 食卓の花一輪と鮎二匹            〃

青葉風 浜への坂を下るバス        美原子
 梅雨の室 藍の衣の臭いたち         〃 

 青葉風土橋も人も緑なり          小島弘子
 濡縁にまどろみてをり鮎の宿         〃

 サッカーの どよめき聞くや 青葉雨    高木みどり
  サッカーの遠きどよめき青葉雨
孫自慢 鮎の目うつろ クラス会       〃
  聞き飽きた、という心境でしょう。
  鮎の目虚ろ同窓会の孫自慢
 梅雨じめり 心にカビ生え 梅酒飲む     〃

 風の色とらへて青葉濃きかな        よし子
  風の色捉えとらえて青葉濃き
 梅雨晴れ間師と語らひて少女となる     〃

囮鮎眼差し遠きアラブ人(びと)      坂元宏志
 黄実去りて気持も新た梅青葉        〃

 梅雨寒に メディアのいまを 慮(おも)いつつ   河彦
ほろ苦し 稚(ち)さきテンプラ 鮎なりと     〃
  稚さきてんぷら鮎なりというほろ苦し
 鮎の川 ふるさとの川 はるばると         〃

 定宿の形さまざま膳の鮎        悠々
  しなやかな鮎、反り返った鮎、定宿でなく「定型」に変えると、
  不思議な味の一句になるかと。これは、選者の役得の白昼夢です。

 

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