銀座俳句道場 道場試合第6回決着!!  

9月の兼題は 「秋」 「月」 「渡り鳥」  でした。

講評: 名月をご覧になりましたか。見逃した方は、居待ち、
   寝待ち…そして後の月(十三夜)まで追っかけをして
   みて下さい。
   今回の天は、矢樹つぐみさん。いわゆる自由律作品と
   云ってよいでしょう。月夜が見せた異界を描いてセンスを
   感じさせます。
   地の清七さんの作品は、揃っていました。死者の人柄と、
   作者にとっての存在感がよく伝わります。
   人の美沙さんの作品は、メトロノームの正確無比の音が、
   戦争の足音の近づきを感じさせて、緊迫感があります。

 

 

【入 選】

 アフガンにも 欠けたる月の 昇るらむ   河 彦  
  鳥渡る 送金すませ 風を吸う      高木みどり
送金済ませし風の中
  校正の 最後の頁 鳥渡る        小島 弘子
 鳥渡るディズニーシーという異国      ちあん  
  三日月の 舟守りはわたし 秋夜明    坂元 宏志

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削)

 森の中 さえずり競う 渡り鳥      沢畠 毅
仲良しね 子らが指差す 渡り鳥
 曼珠沙華 真っ赤に燃えて 秋染めぬ
 秋迎え 真っ先枯葉の プラタナス
月照らす 瓦礫の山に 怒りまた
 労働の 疲れを癒す お月様
  沢畠さんの作品、季節の言葉(季語)をもう少し確認して
  みて下さい。そうすると、もっと内容豊富になるでしょう。



黒を着て故郷に向う秋の虹        清七
 喪服着て
月落ちて大往生の棺の顔
 車止め双眼鏡の渡り鳥


 秋歌舞伎 総理も担ぐ 米百俵      水蓮
渡り鳥 くの字 への字と 勧進帳
  水蓮さんは、九月歌舞伎座に行かれたのでしょう。私は
  新橋演舞場の昼夜を観ました。


月仰ぎ 昼には見せぬ 顔を見せ     美原子
 月仰ぐ
 公道を 掃く日課の人 秋の朝
舫い船 わずかに位置かえ 渡り鳥
     
 見返りの 月に面影 橋渡る       河彦
ダチュラなるか 田中一村 月に白
  田中一村画きしダチュラか月の白
    評伝が出版されましたね。


秋空や 浅間の煙 すきとおり      蒼流
 秋あかね 浅間の空に 乱高下
 渡り鳥 夕焼け空に まっしぐら


 加茂川の 川面に浮かぶ 渡り鳥     麻鞍女
どんぐりが 袴をつけて 秋招く
 可愛い句でした。下五は「転がり来」と
 嵯峨の月 池をめぐりて 龍頭船 


 試験終え 外に出づれば 秋の暮     芽衣子(添削希望)
月の夜 心に秘めし 思いあり
   月代や
 後もどり かなわぬ道や 渡り鳥


 月に立つ 宇宙飛行士は みな詩人    堀 裕子(添削希望)
空でなく 渡りの姿は 襖絵に
   襖絵の渡り鳥の姿に目を止められたのは、結構でした。
   ○○画きし雁の渡りの襖絵に

 出来ぬ句に 悩みと食欲 増す秋か
   誠に、まことに。俳句はダイエット効果があるでしょうか。

秋深し フジコ・ヘミングの『ため息』(リスト)よ   高木みどり
無月にてかなしからずや報復機

 能管の 鋭い響き 鎌の月        小島弘子
キヨスクの新聞完売秋暑し

 空腹の 秋ぞ悲しき ダイエット     埜馳
 酔い深く 空の彼方に おぼろ月
     おぼろ月は春の季語。ここは「小望月」と。

秋だから静止画になるフラミンゴ     ちあん
 三日月に腰かけて人魚姫の夢


 先駆けの 渡鳥一羽 川面広く      坂元 宏志
 飛行機雲 迷走する横 鳥渡る


鳥わたる 大観覧車 下にして      よし子
耳納山に 一ひらの雲 今日は秋
 ノクターンの 残響にあり 窓に月


 玩具の包丁千切りにされし秋       青木佳之
   面白い発想ですが
  秋を千切りにして玩具の包丁
  玩具の包丁が千切りにしてしまう秋

渡り鳥午後の予定は空白に
 一行のボオドレエルや月の影


高速を走って甲斐へ窓の月        松村竹雄
 高層の生活のぞく満の月
 パスポート持たず飛び立つ渡り鳥


 木婚式月占いに立ち止まる        青木由弥子
寝返りを打つ子や秋の夜のきしむ
           夜の軋み
 鳥渡る友の名日毎増えにけり


秋満ちて2001年を仕込むワイン蔵     陽湖
  2001年を仕込む爽秋のワイン蔵
 ただそっと 夫に添いつゝ 湖面の月
渡り鳥 天空一人旅の娘 お願いね


 花さげて 訪れし友 相模の路      峰子
 仏前に におい仄か 小菊かな
蔵書つみ 灯して宵に 菊かおる
  菊香る宵に灯ともし文庫蔵

 初秋に 丹波の奥山 栗とどく      古井一歩
羽村堰の 小鳥が川原に 来ておりぬ
   「の」を削る
 秋天の 声援響く たすきリレー
 帰り道 月さえざえと 影映す


 一むかしの不思議や藍や秋の月      矢樹つぐみ
 立ち上る月夜いちまいをほしいままに

鳥渡る 教員われの重き鞄        美沙
眠る町にラグビーボールのような月

 

〈道場主の作品〉

影ぼうし ビルの廃墟の 夜半の月                       悠々

 

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