銀座俳句道場 道場試合第9回決着!!  

12月の兼題は 「師走」「みかん」「山眠る」 でした。

講評: 

 頌春
めでたく御迎春のこととお喜び申し上げます。
諸事山積の年明けで、選が遅れましたこと
お許しを。         谷子

 「窓に眠れる山」を「磨く」、ピカピカになっていく窓、それにつれて明晰になる
 山の静かな姿。「今日を 生きん」といういささか大げさな物言いが、我が胸中
 の決意として磨き上げられて窓の輝きと共に、よく 伝わります。

  ふいに象が現れて、一寸びっくりしますが、下五に行き着くころには、
 故郷を遠く離れた、やさしくも哀しい象の眼と、ゆっくりとした象の動きが
 見えてきます。「冬の象」の哀しみとでもいいましょうか。

 良く観察が行きとどいています。しばしば目にし、また、自身がこのようなことを
 しているのですが、 なかなか一句にはなりにくいものです。
 よく頑張られました。

 添削〈兵士散るアフガンの山眠る中〉と。
 荒涼としたアフガンの山に厳しい冬の訪れ。テロ、報復…
 戦うということの愚かさと、無くなることのない戦と、「生きる
 こと」の切なさに、言葉を失います。そのようなことを思わせて
 くれる一句でした。

【入 選】

 言いにくき事やみかんの香り立つ   美沙  
  くつくつと煮る手羽大根山眠る    小島弘子 
  稜線は哀しみの青山眠る      高木みどり
 みかん筋とことん取りて人を待つ    美原子 
  誇大妄想のままみかん熟るるか   青木佳之 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 メモ増えて 消せぬ間一日 過ぐ師走      陽湖
 在りし日の 吾娘慰めし窓 山眠る

 エチュードの一節飛ばす笛 師走        美沙
◎言いにくき事やみかんの香り立つ

 田舎にもイルミネーション師走かな       松村竹雄
 開墾のみかん畑も安値かな
○活気生む季節を信じ山眠る


○リストラで 迎える師走の 街眩し       大根の花
 持ってきな 取り立てみかんを 宿の婆ば
  「持ってきな」は「持っていきな」ですね。

 野良の師走 童女が餌を 運び来て        河彦
  「野良」は野良猫、野良犬の略でしょうか。いささか乱暴でした。
○みかん一つ ポケットにあり 酔い覚めに
 屋台酒 言葉のぬくもり また師走

 無造作にみかんを口に運ぶ人           ちあん
 さて次はこの指とまれ師走駅

○「戦」の師走降り階段を登る         小島弘子
 手の甲のしみかぎりなし蜜柑むく
◎くつくつと煮る手羽大根山眠る


○師走道戻りて一円玉拾う           高木みどり
 なぜテロかわれに重なりみかん食む
◎稜線は哀しみの青山眠る

 街に出て師走の風にふかれ居り        芽衣子
○山眠るお針仕事は苦手なり

◎みかん筋とことん取りて人を待つ       美原子
 迂回路で友と出合えり師走の夜
 山眠り破れ障子を繕いぬ


 一服にまた塵見つける師走かな        さと子
 釣り糸や獲物はみかん幼き日
○噴煙をすーと伸ばし山眠る
 ロゼットに地球預けて山眠る
(平たく八方に葉を広げる越冬草)

○道行の参と商の星山眠る           青木佳之
◎誇大妄想のままみかん熟るるか
 シスターは師走の夢の中にをり

○蜜柑むく故人豊かに笑いけり         青木由弥子
 ことさらに仕事探して師走かな
○山眠る少しキルトする産着
 添削〈山眠る産着に少しキルトして〉  

○一山が朝日の浄土みかん山          坂元宏志
 八代海語り部となりしみかん山
 師走波燥いで疾し筑後川

 奥多摩峰 生生世世に 山眠る        古井一歩
 仕事励み こころ足りたる 師走なり
○蜜柑むく 言葉はなきも 灯の夜

○独り居の 目にやさしきは みかんの色    沙羅双樹

 せわしさよりも事件ばかりの師走かな     堀 裕子
 みかん箱にのってきた児と言われつつ
※ この一句、何だか解るような解らぬような。「橋の下で
拾った」なんてよく親がからかっていう、そのような
ことなのでしょうか?。

 登山家の命とともに山眠る


 子を見ずに山に消ゆ友の師走会        牧念人 悠々


<11月の掲載洩れ投句>
○セ・ラ・ヴィと 一人つぶやき 冬来たる    河彦
 なかなかお洒落な一句です。ただし、何度もは使用し難いところです。
 ざくろはじけ 冬の流星 ものかはと
 「ものかわと」はこなれていません。
○枯葉落つ 酒酌み交わす テーブルに
 この句と「セ・ラ・ヴィ」の句と一組に出来ますね。
 手違いで、ご迷惑をお掛けしました。

 

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