銀座俳句道場 道場試合第13回決着!!  

4月の兼題は 「春愁」「すみれ」「遍路」 でした。

 春愁(春うれい)の思いと、ルオーの描く暗く重たい色調のピエロの絵。「ルオーのピエロ」ではなく、その「いる空間」という設定で、暗い絵の空間と共に、その絵が掛けられた空間までも想像させて巧みである。

 「でんしゃ」という平仮名書きで、幼子が思われます。
 すみれ咲く野での母と子の幸せな時間です。

 激しい勢いで紙を裁断するシュレッダー。何の書類だったのでしょう。
もしかしたら、草稿だったのか、又は手紙だったのか。そのシュレッダーの激しさは、一抹の愁いの気配までも消し去る程。というより、何やら思い新たな作者が居ます。

【入 選】

春愁やゆるりと寄せて返す波        さと子
猛々し春の嵐に愁いあり         沙羅双樹
春愁や原稿用紙白きまま         小島弘子
指反らせすみれサラダをすすめられ   渡辺みどり
春愁やビートルズ聴く昼下がり       よし子
春愁のお地蔵さまの影長く        坂元宏志
春愁や 照明淡き レストラン       芽衣子

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 雪の日に 四国遍路の 道想う      葉笑
春霞 いつか行きたや 遍路旅

 野にすみれ 山並み遠く かすみけり   蒼流
春愁や 浅間夕暮れ 空赤く
  「春愁や浅間は蒼く夕暮れて」 
 朝冷えや 野に咲くすみれ 可れんなり

瀬戸内は静かに暮れる遍路宿      ちあん
明日には島去る人よ姫すみれ

春愁や雨降りやまぬ開園日        清七
 街角のウインド飾るすみれ鉢
 朝まだき老人二人遍路宿
  老人が居るのか、発つのか?
  「朝まだき老い二人発つ遍路宿」


 むらさきの想い深めるすみれ色      竹雄
 歳を経てなお春愁の想いあり
なりきれぬ白装束の遍路旅

 花揺れて 白い一隅 春愁す       陽湖
 山荘の すみれ待つ人 今は誰
また幾世 祈りを積むや 遍路道

 黄すみれをそっと差し出す山男      さと子
 つづら折れ行きつ戻りつの遍路かな

生きていく 芯に悲しみ 遍路行く    沙羅双樹

 石垣の萌るる館花すみれ         小島弘子       
ワイン酌む女三人の花遍路

 旧友の 語らい春愁 茶を替える    渡辺みどり
  旧友の話は、苦労話なのでしょうか。黙って茶を替えて、聞いてあげるしかないでしょう。
  「春愁い語らう旧友に茶を替えて」
夢遍路 祖母の形見の 鈴持ちて

反核の 女性同志も 遍路行      河彦
 土より出でて 土に還(かえ)らむ スミレかな
春愁と 言うなかれ友(は) 旅立ちぬ

 友偲ぶ集いの中にすみれ草       よし子
それぞれの物語ある遍路かな

 耳納連峰ほんわか走る春うれひ     坂元宏志
 鉢植えのスミレ競演歌右衛門

 ビル風や小さきすみれを植える人    美沙

門だけの母校の跡やすみれ生る
 春愁やにわかに遠くなる家路
 まなうらに「荒野の星」(コンポステーラ)という巡礼地

画架広げ足元見ればすみれ咲く      美原子
 春愁やほどそばかりの針仕事
 難所のみ母につきあう遍路道

 夢の中 すみれの小道 亡母(はは)と行く  芽衣子

 春愁や通勤電車の茜空          古井一歩
 山路にて誰か待つよなすみれ草
山すみれ濃き紫の姿して

リトグラフ魚が凝視する春愁     青木 由弥子
  この作品も面白かったです。
 苔寺にすみれ一輪風止まる

 他者なしで完結はせず菫咲く     青木佳之
 ゆるやかに世界構築せし春愁
誰かのための風となる遍路道

 春愁や記者なりせば書きとどむ      悠々
  記者なりせば書き止めをり春愁い

 

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