銀座俳句道場 道場試合第3回決着!!  

6月の兼題は 「梅雨」 「虹」 「蛍」  でした。

講評: はじめまして寺井谷子です。
 北から南から三十数名の方々との出会いを楽しみに致しております。

 ※ 小さな(俳句では大きいことですが)添削のみ―てにをは等―で選びます。「あ、ここはでんぐり返して、違う言葉で」というような時は、別途原句に添えて添削したものをお手元に届けたいと思います。

 ○「足裏に故郷の湿り」で、梅雨の夜の湿気と共に、故郷の持つ懐かしさ、いささかの纏わるような鬱陶しさが感じられる見事な一句でした。 
  更に表現に工夫するとすれば「ふるさとの湿り足裏(あうら)に蛍の夜」と

 ○今月の兼題の「蛍」「虹」は、難しかったようです。難しいというのは、従来の捉え方「蛍」=魂、幼い日というような感覚や思いをそのまま直接的に書こうとしているからです。
 この句は、「むかし弾薬庫」とのみ言いながら、戦争、特攻、魂と読者の思いを、作者の思いの場へ連れていきます。

 ○これは直截に切り込みながら、「疎開地」という特殊且つ忘れ難い場と時に設定したことが、「父母恋し」を切実なものにしました。
 

 ○原句は「気がつけば鉱石店に梅雨寒し」でした。折角のいい材料ですから、添削しました。「気がつけば」といわれると、まるで夢遊病のようですね。「宝石店」となると、色彩が入る代わりにいささか甘くなりましょう。
 

  

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削)

ずぶぬれの 悔しさ晴らす 虹の橋      沢畠毅

 「晴れぬ」

特攻隊 ホタルになって 里帰り              

梅雨空の 気嫌をうかがう 遠足の子ら

「機嫌」「遠足」も季語です。

大陸に 分けてあげたい 梅雨の空

 

海峡の第二架橋や二重虹            清七

 これもいい句でした。

駅広場21世紀梅雨の貌

ほうたるの軌条やむかし弾薬庫

仲直り 役目果せず 梅雨の傘         美原子

「仲直りの」

虹の帯 まだ見ぬ町の 道しるべ

蛍火や 道ゆくことを ためらいぬ       

 

蛍追い 迷える子なり その昔         河彦

梅雨晴れに 背広の軽さ 感じつつ

「梅雨晴れや」

水の上(え)に 心をつなぐ 虹の橋      

 

せせらぎの ホタルの乱舞 まぼろしに     蒼流

「せせらぎや」

長雨や 心はずまぬ 読書かな

七色の 淡く悲しき 恋と虹          

 

二十一世紀 エレクトリック 蛍かな      麻鞍女

東山 三十六峰 虹架ける

梅雨空に 親しき友が 旅立ちぬ        

 

誰?吾は 枕の向こうは 梅雨・雨・梅雨    沙羅双樹

 傑作というか、快作というか。「枕の向こうは」を再考。

 

老いし母 いきつもどりつ 梅雨のまま     

 「梅雨のまま」が意味不明。

おそろいで 干ししTシャツ 虹うつす

「おそろいのTシャツを干す虹の橋」

座を沸かす ほたつ拝見 夜の茶事       

 「ほたる」でしょうね。

 

斑尾に 聖者の行進 梅雨の夢         平塚ライター

 よく解らないのですが、「夢」の中ゆえ致し方ないでしょうか。

 

宿題の たまる机や 梅雨に入る        芽衣子

アメリカへ 飛び立つ友よ 虹かかる      

 

おさなごが じっと見つめる 蛍篭       堀裕子

「見つめておりぬ」

天井に しみ出来ぬようにと 梅雨の頃

あっ虹だ 誰もが無心で 仰ぎ見る       

 

梅雨晴れて 何もかも呑んで 生きていこう   高木みどり

 「梅雨晴れ間」

あ、虹 にじ 佇み仰ぐ人の面ピンクに

映画「ホタル」語る友憲法改正絶対反対と    

疎開地のほうほうほたる父母恋し

梅雨晴れ間 空跳び超える 銀の靴       小島弘子

驕りなき 太平洋を 越える虹

 「驕りなき」がよく解りません。

足裏に 故郷の湿り 蛍の夜  

子らの声 ビルの谷間の 小さき虹       陽歩

会う人も なき故郷の虹 美しき

   

虹消えて 夕暮れ青く 学期末         安東美佐子

 「夕暮れ青し」

フルートのバッハしみゆく 梅雨の家

蛍奔流 葬列の行く 山の村          

 

いつまでも 虹追いかける 汽車の旅      埜馳

 

蛍舞う 即身成仏せし 円空の墓        瑠璃子

 「即身成仏せし円空や蛍舞う」

掌(て)のなかの 仄明るみて 蛍かな

掌のなかに 汝が魂(たま)なりしか 蛍舞い  

 「掌のなか」「舞い」は可笑しいですね。舞うにはいささか狭い。

 

恋をする ために生きてる 姫蛍        ちあん

虹消えて 少年の日が 現れる

梅雨寒や 古き床屋の 多い町         

 

涙止め 虹の帯締め 天女舞う         坂元宏志

梅雨田圃 満面の笑み 苗育つ

悲喜劇を 孕んで見せる 梅雨晴間       

 

わが町に 蛍とぶ川あり愉し         よし

梅雨に倦き ウロウロウロと 室歩く

退院の 夫迎うる日に濃き虹         

 「虹立ちぬ退院の夫迎うる日」

 

木の葉から木の葉へ虹の落つる音        青木佳之

ひしめけるバベルの搭や梅雨の星

山の音なく昼に染まりし蛍           

 「昼に染まりし」が強引です。伝達性に欠ける。

 

蛍火は 死者の魂 燈りしか          松崎裕子

蛍の樹 求め行く人に 寂寞の影

 「さびしさにたずねゆくなり蛍の樹」

消えかかり 虹食う鬼の 姿探す        

消えかかり」を消すと、異界が書けるかもしれません。面白い

視点の句でした。

 

梅雨の街 ワイン色した 傘が行く      松村竹雄

大阪と 天国結ぶ 虹の橋

蛍飛ぶ 水田(みずた)の景色 今はなし   

 

石畳 大聖堂に 虹かかる          青木由弥子

蛍籠 筆の解き放ちゆく闇          

梅雨寒し鉱石店に長居して

単線添い 螺鈿のごとき 梅雨の車道(みち)  陽湖

虹さ〜ん エスカレーター ありますか

 楽しい句でした。 

螢火の 窓白みきり 熱下がる         

 

<道場主の句>

特攻の 化身なりせば 男蛍「男(お)の蛍」

イチローの 打撃トップや 梅雨晴れ間

 

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